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第二章 外国漫遊記
第五十六話 何度目かの帰宅(物語の回想込み)
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帰宅しました。
今回の旅は、44日間でした。一か月半…旅行ではありません。冒険者エリシャの、およそ40話に渡る冒険譚です。お楽しみいただけたでしょうか?
思えば第二章、旅の始まりでボルティ国に渡り、マゴールパティシエの限定スイーツを食べるために国内の砂糖税をなんとかしようとして、セトゥーバルの聖女がいるモーニシュ家へ赴き妹でも義妹でもない少しだけタイトルに掠った問題を解決したことでボルティとは終戦が成りました。
マゴールパティシエのボルティ国の店、"甘い愛〟が閉店してしまい、目的は果たせませんでしたが。
ですが、聖女ポワリアさんと間もなく即位なさるホジェリオ様の結婚式は、きっと幸せなものになるでしょう。私も今から楽しみですわ。
そしていったん家に戻り、ボルティ国ホジェリオ王子から受け取った終戦を確約する書状を、グイスト様がレオカディオ陛下に提出する間を幕間とし、再び冒険者として旅立ちました。
目指すはモッローラで開催されるカーレースの開会式で振舞われるマゴールパティシエのスイーツです。
幕間で元学友ミサトから情報を得て、今度こそと意気込んで出発しました。
カーレースの開会式に参加できるのはVIPチケットを持っているものだけだということで、『推薦制』のチケット入手のためモッラーロの大公宮殿で関係者に札束をばら撒いていたところ、モッラーロの王子妃でありフィレンセの王女でもあるアントワネット様とお友達になりました。
そうしてVIP入場できることになり、スイーツも堪能できて、祖国のカーチームとスポンサー契約を結ぶことを約束し、モッラーロ公爵家の義理ではない本当の姉妹問題も解決し、フィレンセの王子王女に恩を売れたことから大国との戦争をまたひとつ終わらせることができる算段がつきました。
ついでに、魔の森やダンジョンで経験を積んで、冒険者ランクも着々と上がっています。
カーレースの結果を見届けて、冒険者としてやりがいのありそうなイーパ国のザル島魔物討伐に参加するため移動した先では、私の元護衛騎士リノのお兄さんビト・カートナーとパーティを組むことになり、冒険は続きます。
ザル島にいると噂される鉄仮面さんの正体がフィレンセの現王プロスペールの父親違いの兄弟だと知って衝撃を受けたり、その鉄仮面ヴァランタンさんの世話役だったトゥーサンさんが亡くなったことをご家族にお伝えするため島からの脱出を手助けし、その後ヴァランタンさんのご実家の様子を見るためフィレンセ入りし国境で捕まったり、転職したリノに再会したりフィレンセの王子に救出されたり国王に謁見して終戦になったりしましたね。
姉妹でも義姉妹でもない、父親違いの兄弟問題は未解決のままですが、明るみに出ないほうがいいということもありますからこのまま口をつぐんでいることにしましょう。ヴァランタンさんとプロスペール王の事情を知るのは、私とグイスト様とリノとビトさんだけですから。
フィレンセ国内では過ごしづらそうなヴァランタンさんには、キノコ学者として我が家で働いてもらうことになりました。邸に着いて早速キノコ培養室にご案内したら夢中になってしまったので、すでに働いている先輩研究員に任せてそのまま置いてきました。
長いようで短い一か月半でした。
「エリシャ、明日の登城用のドレスだが」
「それはそれで重要な問題ですが、エレン兄様が私のドレスを選んでいるというのもおかしな話ではありませんか?」
「そうだぞエレン。私が選んだこの深緑がいいだろう」
「同じことですわ、エドガー兄様」
「そんな濃いボトルグリーンよりも、薄いグリーンのほうがさわやかさが引き立つでしょう」
「そんなとはなんだ」
「兄上の目の色のドレスを着せてどうするのです」
「私の目の色だとわかった上で言ったのだな?」
兄様たちの過剰な家族愛にも困ったものです。
明日、ベジックさんと共に謁見することになっているので、エストルム邸の侍女たちと登城用のドレスを選んでいました。そこへ私の帰宅を知った兄様たちが押し寄せて、なぜか今、ドレスを選んでいます。
私はどちらかというと濃い色が好きなのですが、ここで深緑のドレスを選ぶとまるでエドガー兄様の目の色のドレスを選んだような雰囲気になってしまうので、エレン兄様の持っているアイスグリーンのドレスを手に取りました。
「エリシャ……!」(←エレン)
「妹にそんな目を向けないでくださいませ」
「エリシャ……」(←エドガー)
「深緑は好きですけれど、明日のドレスはこちらにしますわ」
「エリシャ……!!」(←エドガー)
名前だけで感情表現をしないでいただきたいですわ。『エリシャっていうゲーム』ではありませんのよ。
そうして久しぶりに三兄弟でくつろぎのひと時を過ごしていたら、突然けたたましい足音が聞こえてきて乱暴に扉が開けられました。
「エリシャ! 今帰ったぞ!」
「まあお父様、私も今帰ったところです」
「そうか! 奇遇だな!」
現れたのは、真っ黒く日焼けして砂まみれのお父様でした。
まずはお風呂へ直行してください。
今回の旅は、44日間でした。一か月半…旅行ではありません。冒険者エリシャの、およそ40話に渡る冒険譚です。お楽しみいただけたでしょうか?
思えば第二章、旅の始まりでボルティ国に渡り、マゴールパティシエの限定スイーツを食べるために国内の砂糖税をなんとかしようとして、セトゥーバルの聖女がいるモーニシュ家へ赴き妹でも義妹でもない少しだけタイトルに掠った問題を解決したことでボルティとは終戦が成りました。
マゴールパティシエのボルティ国の店、"甘い愛〟が閉店してしまい、目的は果たせませんでしたが。
ですが、聖女ポワリアさんと間もなく即位なさるホジェリオ様の結婚式は、きっと幸せなものになるでしょう。私も今から楽しみですわ。
そしていったん家に戻り、ボルティ国ホジェリオ王子から受け取った終戦を確約する書状を、グイスト様がレオカディオ陛下に提出する間を幕間とし、再び冒険者として旅立ちました。
目指すはモッローラで開催されるカーレースの開会式で振舞われるマゴールパティシエのスイーツです。
幕間で元学友ミサトから情報を得て、今度こそと意気込んで出発しました。
カーレースの開会式に参加できるのはVIPチケットを持っているものだけだということで、『推薦制』のチケット入手のためモッラーロの大公宮殿で関係者に札束をばら撒いていたところ、モッラーロの王子妃でありフィレンセの王女でもあるアントワネット様とお友達になりました。
そうしてVIP入場できることになり、スイーツも堪能できて、祖国のカーチームとスポンサー契約を結ぶことを約束し、モッラーロ公爵家の義理ではない本当の姉妹問題も解決し、フィレンセの王子王女に恩を売れたことから大国との戦争をまたひとつ終わらせることができる算段がつきました。
ついでに、魔の森やダンジョンで経験を積んで、冒険者ランクも着々と上がっています。
カーレースの結果を見届けて、冒険者としてやりがいのありそうなイーパ国のザル島魔物討伐に参加するため移動した先では、私の元護衛騎士リノのお兄さんビト・カートナーとパーティを組むことになり、冒険は続きます。
ザル島にいると噂される鉄仮面さんの正体がフィレンセの現王プロスペールの父親違いの兄弟だと知って衝撃を受けたり、その鉄仮面ヴァランタンさんの世話役だったトゥーサンさんが亡くなったことをご家族にお伝えするため島からの脱出を手助けし、その後ヴァランタンさんのご実家の様子を見るためフィレンセ入りし国境で捕まったり、転職したリノに再会したりフィレンセの王子に救出されたり国王に謁見して終戦になったりしましたね。
姉妹でも義姉妹でもない、父親違いの兄弟問題は未解決のままですが、明るみに出ないほうがいいということもありますからこのまま口をつぐんでいることにしましょう。ヴァランタンさんとプロスペール王の事情を知るのは、私とグイスト様とリノとビトさんだけですから。
フィレンセ国内では過ごしづらそうなヴァランタンさんには、キノコ学者として我が家で働いてもらうことになりました。邸に着いて早速キノコ培養室にご案内したら夢中になってしまったので、すでに働いている先輩研究員に任せてそのまま置いてきました。
長いようで短い一か月半でした。
「エリシャ、明日の登城用のドレスだが」
「それはそれで重要な問題ですが、エレン兄様が私のドレスを選んでいるというのもおかしな話ではありませんか?」
「そうだぞエレン。私が選んだこの深緑がいいだろう」
「同じことですわ、エドガー兄様」
「そんな濃いボトルグリーンよりも、薄いグリーンのほうがさわやかさが引き立つでしょう」
「そんなとはなんだ」
「兄上の目の色のドレスを着せてどうするのです」
「私の目の色だとわかった上で言ったのだな?」
兄様たちの過剰な家族愛にも困ったものです。
明日、ベジックさんと共に謁見することになっているので、エストルム邸の侍女たちと登城用のドレスを選んでいました。そこへ私の帰宅を知った兄様たちが押し寄せて、なぜか今、ドレスを選んでいます。
私はどちらかというと濃い色が好きなのですが、ここで深緑のドレスを選ぶとまるでエドガー兄様の目の色のドレスを選んだような雰囲気になってしまうので、エレン兄様の持っているアイスグリーンのドレスを手に取りました。
「エリシャ……!」(←エレン)
「妹にそんな目を向けないでくださいませ」
「エリシャ……」(←エドガー)
「深緑は好きですけれど、明日のドレスはこちらにしますわ」
「エリシャ……!!」(←エドガー)
名前だけで感情表現をしないでいただきたいですわ。『エリシャっていうゲーム』ではありませんのよ。
そうして久しぶりに三兄弟でくつろぎのひと時を過ごしていたら、突然けたたましい足音が聞こえてきて乱暴に扉が開けられました。
「エリシャ! 今帰ったぞ!」
「まあお父様、私も今帰ったところです」
「そうか! 奇遇だな!」
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まずはお風呂へ直行してください。
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