【第二章完結!】妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~

井上 佳

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第二章 外国漫遊記

第五十九話 真面目に

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「久しいな」

「ご無沙汰しております陛下」


厳正なる謁見の間で、玉座におられるレオカディオ陛下にご挨拶申し上げます。

手前に、グイスト様とベジックさん、そして宰相であるおじい様と宰相補佐を務めるエレン兄様。個々にお会いすれば気安い間柄ですが、ここは格式高い謁見の間です。態度を崩すことなく、きれいにお辞儀して見せました。


「楽にしてくれ」

「ありがとうございます」


楽に、とは気楽に接してくれというわけではありませんわよ?
お辞儀を終わらせていいという、ってそんなこと説明しなくてもいいですわね。柄にもなく緊張して、思考がおかしな方向にいっておりますエリシャです。


「エストルム侯爵令嬢、すでにフィレンセからの書状は受け取っている。大変な手柄だった」

「恐縮至極に存じます」

「そなたらのおかげで、大国フィレンセとの長年に渡る争いに、終止符を打つ時が来た。ベジック王子からも、今後は友好国として共に未来を見ていこうと、ありがたい言葉をもらっている」

「はい。ありがたくも、私もそう聞いております」

「さて……終戦についての書状のほかに、フィレンセ王より公的な提案書を受け取っているのだが」

「はい」

「『双方に利があるため、我が国の第二王子ベジックと、貴国のシュトルポジウム侯爵ご令嬢エリシャ殿との婚約を結ぶことを提案する』と」





大変驚いております。


広間中で、ざわつきが起こっております。


ベジックさんも知らなかったようで、どす黒いオーラを展開しているグイスト様を見て慌てています。もちろん、お兄様もおじい様も口を開いて固まっています。周りの衛兵たちも、ぎょっとしているのが見えました。


これは止めねば、血を見ることになりそうな予感がしたので、私は一瞬の思考停止ののちすぐに行動を起こしました。


「陛下! ありがたいお話なれど、その提案はお受けすることができません。私にはもう、心に決めた御人がおります。先の婚約破棄の件もございますので、どうぞ寛大なご対応を賜りたくお願い申し上げます」

「ほう」


玉座の前に走り出て膝をつき許しを請いました。

なりふり構っている暇はありません。一手遅れれば、グイスト様が隣国王子の殺人犯として処刑されてしまいます。ええ、それくらい切羽詰まっている状況なんです。私の肌にまで、ピリピリと殺気を感じていますから。

反応から見て、ベジックさんが言ったわけではなくお父上からの打診のようですが、そんなことまで考え至らないくらい、グイスト様からはただ怒りの感情が放たれています。


「ですから、ええと、私はグイスト様と結婚すると決めておりますので! どうか、ええと、ごめんなさいベジックさんからの提案でないことは重々承知ですけれど、ごめんなさい!」

「あっ、ああ、いえ、……告げてもいないのにふられるというのも、ダメージが大きいが、いや、いいんだエリシャさん。父が、すまない。レオカディオ陛下、その提案は破棄してください。プロスペール王の、というか父の、ただの出過ぎたおせっかいですので!」

「そうか、ではその通りに………ははっ…いや、すまない」

「グイスト様? 聞いた通りですわ! 私は今後、グイスト様としか結婚する気はありませんから、落ち着いてくださいま…………落ち着いていますわね、すでに」

「っ………!」


ベジックさんに断りを入れ、ベジックさんが陛下に進言したので、これで解決!とグイスト様を見れば、すでにどす黒いオーラはなく、顔を真っ赤にして口元を手で覆っていました。

こんな空気にした張本人は、玉座でうつむいて肩を揺らしています。

わかっていてやりましたわね? レオカディオ陛下……。





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