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第二話:光の中で
しおりを挟むサン・チェコ僧院の寄宿学校は、ロマホフの中心街から離れた静かな丘の上に立っていた。古い石造りの建物は緑豊かな庭に囲まれ、風が通り抜けるたびに木々が静かに囁くようだった。15歳のベニアミーナ・チェーヴァにとって、この場所はまさに「家」と呼べるものであり、彼女の心を包む安らぎだった。
彼女は僧院の中庭を駆け抜け、小鳥のさえずりに耳を傾けながら、花壇に咲く鮮やかな花々に触れるのが好きだった。修道女たちは彼女を優しく見守り、ベニアミーナの明るい笑顔と、澄んだ声で歌う聖歌に心を和ませていた。
「ベニアミーナ、今日は何を歌ってくれるの?」
修道女の一人、シスターカレンが微笑みながら声をかけた。
「今日は……そうですね、『アヴェ・マリア』を歌いたいです」
ベニアミーナは、シスターの問いに嬉しそうに応えた。彼女の瞳は純粋な喜びで輝いていた。
中庭に集まった少女たちは、ベニアミーナの歌声に耳を傾けるために静かに座り始めた。ベニアミーナは彼女たちを見て、心の中にある平穏を感じながら歌い始めた。その歌声は清らかで、空気に溶け込みながら僧院全体を包み込んだ。
「ほんとうに、ベニアミーナは天使のようね」
ある少女がぽつりとつぶやいた。
「本当に。彼女と一緒にいると、まるで私たち全員が守られている気がするわ」
別の少女も同意した。
修道女たちの教えは、ベニアミーナにとって何よりも大切だった。毎朝、修道女たちと共に祈りを捧げ、日中は他国語や聖書の教えを学んだ。彼女は学ぶことに喜びを感じ、与えられた知識を全て心に刻んでいった。
特に、修道女長のシスタークラァラは、ベニアミーナに深い信頼を寄せていた。ある日の午後、ベニアミーナはシスタークラァラと共に修道院の図書室で静かに本を読んでいた。太陽の光が窓から差し込み、古い木製の机に温かな光を投げかけていた。
「ベニアミーナ、あなたは本当に賢い子。きっと将来、神のもとで素晴らしい役割を果たすに違いないでしょう」
シスタークラァラは穏やかに言った。
「まだまだ、学ぶことはたくさんあります」
ベニアミーナは少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「でも、神様に仕えることができるのなら、それが一番の幸せだと思います」
その言葉には、何の偽りもなかった。彼女の純粋な心は、いつも他者を思いやり、信仰に満ちていた。
夜になると、修道院の鐘が静かに響き渡り、ベニアミーナは他の少女たちと一緒に夜の祈りを捧げるために礼拝堂へ向かった。礼拝堂の中は、ろうそくの光が静かに揺れ、ベニアミーナの心にさらなる安らぎをもたらしていた。祈りの中で、彼女は家族のことを想った。だが、この僧院での日々が、どれほど彼女を幸福にしているかを感じると、外の世界のことは一時忘れることができた。
「神様、どうか私たち全員をお守りください。そして、私の家族にも平和をお与えください」
無垢で清らかな祈りが彼女の唇から静かに漏れた。
ベニアミーナにとって、サン・チェコ僧院は安全で温かい場所だった。そこには愛があり、信頼があり、彼女自身が何者であるかを再確認できる場所だった。彼女の心は、この清らかな日々の中で、輝きを増していた。
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