【完結】ベニアミーナ・チェーヴァの悲劇

第四話：暗闇の檻

ベニアミーナがチェーヴァ家に戻ってからの時間は、まるで凍りついた世界にいるようだった。サン・チェコ僧院で過ごした日々は夢のように遠く、現実は重苦しい悪夢に包まれていた。フィデンツィオ・チェーヴァは彼女にとって父親ではなく、ただ圧倒的な暴力の象徴となっていた。


彼女は日々、父の言葉による攻撃や身体的な暴行に耐え続けた。痛み、屈辱、恐怖。ベニアミーナはそれら全てを静かに受け入れるしかなかった。彼女は自分を守るために心を閉ざし、現実を見ないようにしていた。朝、彼女は無感情なまま起き上がり、父に命じられるままに動いた。その目には、もうかつての輝きはない。ベニアミーナの身体は、魂のない抜け殻のようだった。


ベニアミーナが日常的に耐えなければならなかったものの一つは、フィデンツィオによる下品で卑劣な日課だった。

夜になると、彼女と後妻のルイージャは暖炉の前に座らされ、フィデンツィオの足元にじっと座ることを強制された。フィデンツィオは彼女たちを前にし、まるで家畜に対するような態度で、下劣な行為を繰り返してゆく。

フィデンツィオは大声で彼女たちを罵り、下品な言葉を投げつけた。ベニアミーナとルイージャは何も言えず、ただ黙ってそれに耐えていた。


「ほら、見ろ。これが男だ！」


フィデンツィオはそう叫びながら、彼女たちの目の前で下半身を露わにし排尿する。その後、排泄物を見せつけ、二人にその後始末を命じた。


「やれ。お前たちがコレをきれいにするんだ。ここで役に立てるのはそれくらいだろう！」


フィデンツィオの行動は彼女たちの自尊心を傷つけ、その言葉は、心をえぐるようにベニアミーナに突き刺さる。
震えながらも命令に従い父の尻を拭く。


「ああ、いいな。少しのカスも残すんじゃないぞ？」


逆らうことなど、彼女にはできなかった。耐え続けるしかなかった。心の中では何度も逃げ出したいという衝動が湧き上がったが、その度に現実の重みが彼女を引き戻した。ベニアミーナの体は疲れ果て、心はさらに深い闇へと閉じ込められていった。



日々の暴行や屈辱に耐える中、ベニアミーナは次第に自分の殻に閉じこもるようになった。彼女は部屋に籠り、外の世界から逃れるために自分を孤立させた。窓の外に広がる風景さえ、もう彼女にとっては何の意味もなかった。彼女はただ、呆然としたまま、時の流れに身を委ねていた。

食事をとることさえ、フィデンツィオの指示がなければ思い出さなかった。彼女の部屋には、僧院で過ごしていたときのような華やかさや温かさはなく、冷たく無機質な空間が広がっていた。彼女は無力感に支配され、何をしても意味がないと感じていた。


ルイージャもまた、同じように疲弊していた。彼女はベニアミーナに優しく接するものの、自分もフィデンツィオから逃れられないという事実が心に重くのしかかっていた。二人は同じ苦しみを共有していたが、助け合うこともできず、それぞれの孤独に沈んでいった。



時間が経つにつれ、ベニアミーナはすべてに対して無関心になっていった。彼女はただ、フィデンツィオに命じられるままに動き、彼の暴力を受け入れるしかなかった。ベニアミーナは、自分の心が壊れていくのを静かに受け入れる。それはもう二度と元には戻らないように感じていた。


夜になると、再び暖炉の前に座らされ、フィデンツィオの卑劣な行為を目の当たりにする。ベニアミーナの心の中には、もう何も残っていなかった。彼女はフィデンツィオにされるがまま、まるで魂を失った人形のように、無感情に日々を過ごしていた。