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それはちょっとした賭けだった。
もしも杏菜が兄のことを本気で好きだった場合、杏菜は兄に新汰からされたことを話すだろう。
そうなれば新汰はたちまち悪者になり兄から嫌われることになる。
いくら兄弟とはいえ、恋人を奪うなんて最低の行為だ。
しかし、新汰は見事に賭けに勝った。
杏菜は怒るどころか新汰のキスをあっさりと受け入れ、数日後には奏汰と別れたのだ。
まさかこんなにうまくいくとはと、自分でも驚いた。
だが、尻軽で頭の弱い杏菜ならきっとそうするだろうという確信もどこかにあった。
もちろん、彼女とは付き合っていない。
何度か肉体関係も持ったが、それは杏菜を兄から遠ざけるため仕方なくやったこと。
そこに気持ちなんて微塵もない。
「あの時はちょっとどうかしてたのかも。でもね、杏菜は今新汰くん一筋だよ」
思いっきり瞳を潤ませて杏奈が新汰を見つめてくる。
どうかしてた?
まるで兄と付き合ったことを後悔しているとでもいうような口ぶりに腹の底から怒りがこみ上げてくる。
後悔しているのはお前じゃなくて兄の方だ。
頭の悪い尻軽のお前みたいな女がひと時でも兄と付き合えたことを光栄に思うべき。
それに新汰一筋なんてどの口がほざいてるんだ。
昨日中庭のベンチで一つ上の学生に擦り寄っているのを新汰はしっかりと目撃している。
ぶちまけてやりたい言葉を飲み込んで新汰はにこりと作り笑いを浮かべた。
「ありがとう。でも、やっぱり今の俺にはもったいないよ。杏菜ちゃん良い子すぎるからさ」
「え~~、そんなことないよ~」
新汰の口からでまかせを真に受けて、杏菜は照れ臭そうに体をモジモジとさせる。
やはり頭の悪い女だ。
新汰はスッと眼を細めると口元にだけ笑みを残して続けた。
「だからさ、俺がもっと杏菜ちゃんにふさわしい男に成長したら改めて告白させてもらってもいいかな?」
新汰の言葉に杏菜は感極まったような表情になる。
「うん、うん!杏菜ずっと待ってるから」
「ありがとう杏菜ちゃん」
「じゃあ杏菜そろそろ行くね」
杏菜はそう言うと、新汰に手を振りながら去って行った。
哀れな女だ。
新汰の本心も知らないで浮かれてる。
しかし、杏菜のあの呆れるほどの馬鹿さ加減が逆に助かっているのも否めない。
もしも杏菜が…これまで付き合ってきた兄の恋人たちが全員賢かったら、新汰はとっくの昔におわってる。
そう、新汰は杏菜をはじめこれまで兄が付き合ってきた女たち全員にこのやり方を仕掛け、ことごとく兄と別れさせているのだ。
もしも杏菜が兄のことを本気で好きだった場合、杏菜は兄に新汰からされたことを話すだろう。
そうなれば新汰はたちまち悪者になり兄から嫌われることになる。
いくら兄弟とはいえ、恋人を奪うなんて最低の行為だ。
しかし、新汰は見事に賭けに勝った。
杏菜は怒るどころか新汰のキスをあっさりと受け入れ、数日後には奏汰と別れたのだ。
まさかこんなにうまくいくとはと、自分でも驚いた。
だが、尻軽で頭の弱い杏菜ならきっとそうするだろうという確信もどこかにあった。
もちろん、彼女とは付き合っていない。
何度か肉体関係も持ったが、それは杏菜を兄から遠ざけるため仕方なくやったこと。
そこに気持ちなんて微塵もない。
「あの時はちょっとどうかしてたのかも。でもね、杏菜は今新汰くん一筋だよ」
思いっきり瞳を潤ませて杏奈が新汰を見つめてくる。
どうかしてた?
まるで兄と付き合ったことを後悔しているとでもいうような口ぶりに腹の底から怒りがこみ上げてくる。
後悔しているのはお前じゃなくて兄の方だ。
頭の悪い尻軽のお前みたいな女がひと時でも兄と付き合えたことを光栄に思うべき。
それに新汰一筋なんてどの口がほざいてるんだ。
昨日中庭のベンチで一つ上の学生に擦り寄っているのを新汰はしっかりと目撃している。
ぶちまけてやりたい言葉を飲み込んで新汰はにこりと作り笑いを浮かべた。
「ありがとう。でも、やっぱり今の俺にはもったいないよ。杏菜ちゃん良い子すぎるからさ」
「え~~、そんなことないよ~」
新汰の口からでまかせを真に受けて、杏菜は照れ臭そうに体をモジモジとさせる。
やはり頭の悪い女だ。
新汰はスッと眼を細めると口元にだけ笑みを残して続けた。
「だからさ、俺がもっと杏菜ちゃんにふさわしい男に成長したら改めて告白させてもらってもいいかな?」
新汰の言葉に杏菜は感極まったような表情になる。
「うん、うん!杏菜ずっと待ってるから」
「ありがとう杏菜ちゃん」
「じゃあ杏菜そろそろ行くね」
杏菜はそう言うと、新汰に手を振りながら去って行った。
哀れな女だ。
新汰の本心も知らないで浮かれてる。
しかし、杏菜のあの呆れるほどの馬鹿さ加減が逆に助かっているのも否めない。
もしも杏菜が…これまで付き合ってきた兄の恋人たちが全員賢かったら、新汰はとっくの昔におわってる。
そう、新汰は杏菜をはじめこれまで兄が付き合ってきた女たち全員にこのやり方を仕掛け、ことごとく兄と別れさせているのだ。
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