推しと俺はゲームの世界で幸せに暮らしたい!

花輝夜(はなかぐや)

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4章

麻耶の体

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服は着替えさせられ小綺麗になっているが、回復を受けて万全になっているはずのその様子はおかしい。

「まぁや…」

「レイ!レイ……………!無事だった…!目が覚め……ッ」

「ぴぃ!」

レイが立ち上がって廊下の方まで来ると、その姿を見た麻耶の目に涙が浮かぶ。レイの存在をその手で確かめようと足を踏み出して、麻耶はその場で派手に転んだ。
たくあんが咄嗟に身体を滑り込ませたおかげで怪我はないようだが、その麻耶の転倒には違和感があった。
今までの熱に浮かれて千鳥になった足ではない。

「目覚めて、よかった……俺ァ、二度とお前が……」

「…まぁや、目を、見せて」

「え?あァ……」

レイは麻耶の転倒の違和感をすぐに察知し、感動もそっちのけで廊下に膝をついて麻耶を支えて座らせると輪郭を両手で包んで瞳がよく見えるように固定する。
レイは真剣な表情でを食い入るように見ていたが、麻耶はじわじわと頬を染めた。

「れ……レイ、あの……近」

「……やっぱり。眷属化の、影響か……劣属性が、消えてる」

「え!?」

片喰も麻耶の瞳をのぞき込む。麻耶のくっきりした緑色だった左目は、色こそ薄いものの黄色になっていた。
鮮やかに違う色だったオッドアイは見当たらず、左右差は山吹色と淡黄色の濃淡だけだ。
この世界では属性の色と瞳の色は対応している。左目も黄色であれば今麻耶が有している属性は光だけの可能性が高い。

「属性が変わるなんてこと……あり得るのか?」

システム的に、途中での属性変更は出来なかったはずだ。
片喰の問いにレイは首を振った。

「いや…俺は、見たことが、ない。そもそも、眷属化は母数が、少ない……から……。確かに、力は…吸う。エクリプサーの場合は、劣属性から、吸うことも…あるだろうが…器用に、どちらかで…止められるものでは……」

「麻耶、その…左目は見えてるのか?」

片喰の心配そうな問いかけに麻耶は左手でゆっくりと自分の瞼を撫でる。何度か瞬きをして、上目遣いで少しだけ微笑んだ。

「まァ、霞んで見えにくいかもしれねェが……見えねェこたアねェよ。体も力は入りにくいが、劣属性がなくなったせいか熱っぽさがなくて少しは楽に……」

その微笑みを見てレイの顔が引き撃る。
片喰も違和感に気が付いた。
麻耶の淡黄色になった瞳の周辺から口元にかけて、あまりにぎこちない笑顔が浮かんでいた。

「まぁや……それ、顔の……感覚、が…」

麻耶は左手で頬を描くとばつが悪そうにさらにぎこちない笑顔を浮かべ、視線を片喰とレイから外した。

「あァ……左目の周りと、何故か右手足は感覚がねェよ。どこかがダメになっちまったのかもしれねェ……でも、いい」

麻耶の右手はだらりと下がったまま少しも動いておらず、右足は全く力が入らないで投げ出されている。
バタバタと音を立て、転倒して当然だ。
その場ですぐに移し身を始めようとしたレイを麻耶が左手で制する。
ぎこちないが、今までで一番幸せそうな笑顔だった。

「移し身は、もういいから……エクリプサーの検診してくれよ、お医者様」

自分の体のことだ、麻耶には確信があるのだろう。
嬉しそうに涙で震える声を聞いて、レイは麻耶を抱きしめた。
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