借りてきたカレ

第五章 マシュマロの破壊力

（6）

「おなかすいたでしょ？　何か作るね。大したものないけど」

　みさをは重苦しい空気を少しでも軽くしようと明るく言って、エプロンを身につけた。

「私も手伝います」

　由愛も台所に入ってきた。

　だが手伝いなんてとんでもない。数分後、料理の主導権は完全に由愛に移っていた。由愛は冷蔵庫にあった使いかけの野菜を手際よく切ると、フライパン一つであっという間にスープスパゲッティを完成させた。いつの間にか付け合わせのサラダも出来ており、みさをの出る幕はなかった。

「すっごく美味しい。由愛ちゃんお料理上手なんだね」

　テーブルに並べられた料理は店で出してもおかしくないほど綺麗に盛り付けられている。パスタは塩気がちょうど良く、しっかりコクもあって、味付けも完璧だ。

　勝手なイメージだが、由愛は料理なんて一切しなさそうで、なんなら食事の代わりに菓子でも食べていそうだと思っていたのに。人は見かけじゃ分からないものだ。

「良かった。簡単なもので恥ずかしいんですけど」と由愛は謙遜した。

「キキも美味しいでしょ？　ね？」

「んー、まー」

　みさをが話を振ると、キキは素直に褒めたくないようだったが、その顔は間違いなく美味しいと言っていた。

　これでキキも少しは由愛のことを見直しただろう。みさをは良かったねという意味を込めて、由愛に目配せした。