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第九章 降って湧いた婚約者
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しばらくしてみさをが落ち着きを取り戻すと、キキは急に改まった態度になり、「みさをさん、おめでとう」と言った。みさをが今まで見たことのない、何か吹っ切れたような表情をしている。
「そしたら、俺はもうこの家を出て行かないとね」
「待って、なんでそうなるの?」
「だって、本当に結婚するなら、俺たちがきょうだいだなんて嘘をつき続けられないだろ? 今ならまだなんとか誤魔化せるよ。一人で店に行くのが不安だったから、知り合いの子に弟のふりしてもらったとか言えば……」
思わぬ展開になり、みさをは激しく動揺した。
婚活がうまくいったら、キキがうちにいられなくなるなんて考えてもみなかった。
だってそうだろう。三十一年間も彼氏が出来なかったのに、婚活を始めたからって、すぐに相手がみつかるわけがない。どんなに頑張っても一、二年はかかると思っていたのだ。
今キキを追い出すなんて本末転倒だ。どうにかしなくては。
「大丈夫。平森さんにはちゃんと話して分かってもらうから。キキは何も心配しないで」
ほほをひきつらせながらとりあえずそう言ったが、正直うまく説得できる自信はなかった。
果たして他の男と同居する婚約者を、許す男がいるだろうか。
以前、優希にキキと一緒に暮らしながら婚活するのは無理と言われていたのを思い出した。
やっぱりプロポーズを断るしかないのかな。
そうなると今度は平森に対して申し訳ない気持ちになる。
平森は人柄が良く、経済力もあり、見た目だって悪くない。みさをにはもったいないくらいの人だ。そんな平森に不誠実な態度を取らなければいけないのは心苦しかった。
仕事ならどんなに複雑な課題でも、瞬時に的確な答えを出せるのに、恋愛や結婚のこととなると、なんでこんなに愚鈍で間違いばかり犯してしまうのか。みさをは自分の恋愛能力の無さを恨んだ。
「そしたら、俺はもうこの家を出て行かないとね」
「待って、なんでそうなるの?」
「だって、本当に結婚するなら、俺たちがきょうだいだなんて嘘をつき続けられないだろ? 今ならまだなんとか誤魔化せるよ。一人で店に行くのが不安だったから、知り合いの子に弟のふりしてもらったとか言えば……」
思わぬ展開になり、みさをは激しく動揺した。
婚活がうまくいったら、キキがうちにいられなくなるなんて考えてもみなかった。
だってそうだろう。三十一年間も彼氏が出来なかったのに、婚活を始めたからって、すぐに相手がみつかるわけがない。どんなに頑張っても一、二年はかかると思っていたのだ。
今キキを追い出すなんて本末転倒だ。どうにかしなくては。
「大丈夫。平森さんにはちゃんと話して分かってもらうから。キキは何も心配しないで」
ほほをひきつらせながらとりあえずそう言ったが、正直うまく説得できる自信はなかった。
果たして他の男と同居する婚約者を、許す男がいるだろうか。
以前、優希にキキと一緒に暮らしながら婚活するのは無理と言われていたのを思い出した。
やっぱりプロポーズを断るしかないのかな。
そうなると今度は平森に対して申し訳ない気持ちになる。
平森は人柄が良く、経済力もあり、見た目だって悪くない。みさをにはもったいないくらいの人だ。そんな平森に不誠実な態度を取らなければいけないのは心苦しかった。
仕事ならどんなに複雑な課題でも、瞬時に的確な答えを出せるのに、恋愛や結婚のこととなると、なんでこんなに愚鈍で間違いばかり犯してしまうのか。みさをは自分の恋愛能力の無さを恨んだ。
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