借りてきたカレ

第十一章 魔性の女とレンタル彼氏

（15）

　二人のことを一人で決められるわけがない。相手と向き合わなければ何も始まらないのだ。いい年してそんなことも分かっていなかったなんて情けない。

「ごめん、キキ。私が間違ってた」

　みさをは涙を拭って立ち上がった。
　好きな男にここまで言わせておいて、まだ自分の気持ちに嘘をつくようなら、小学校からやり直した方がいいだろう。
　頑張ってなんとか笑顔を作り、出会ってから初めてキキに甘えてみようと決めた。

「私、ここに引っ越してきてもいいかな？」

「ホントに？」

　キキは信じられないというように、目をしばしばさせた。
　みさをが深く頷くと、キキの顔は陽が射したように明るくなり、
「もちろんいいよ。この部屋は二人で住むつもりで借りたんだから」と力強く言ってくれた。

　ああ、また二人で一緒に暮らせるなんて夢のようだ。しかも今度は期限付きではないのだ。嬉しさで胸が一杯になった。

「えっと」

「ふふ」

　結論は出た。しかし、あまりの急展開に二人共どうしたらよいか分からず、妙な間が生まれてしまった。

　ぎくしゃくとした動きで、一歩一歩互いに距離を縮めていく。

　ようやく手が届く距離まで来ると、キキはみさをを引き寄せ、少し照れくさそうな顔でついばむように軽くキスをした。

「おかえり」

　キキにそう言われたら、本当に長い旅から戻ってきたような気持ちになった。

「ただいま」

　みさをからも同じようにキスをして、二人で微笑み合い、
　それから、空白の時間を埋めるようにしっかりと抱き合った。