何するでもなく終わっていく1日をただ僕等は愛しいと思った

退院

「ん～……！」


病院の外は青く澄んでいた
院内の白い壁ばっかり見て来たから、こんなにたくさん色があるのは久しぶり
退院は嬉しいことのはずなのに、気分はあまり晴れない

大きく伸びをして、僕を担当してくれた医者と看護婦に振り返る


「今までずっとありがとうございました」


中学に入ってから今の今まで、僕はこの人達のお世話になっていた。
身体の悪いところを良くしようとしてくれたり、吐いた時だって背中をさすってくれた優しい人たち。

医者はそっと頷いた
看護婦は涙をハンカチで拭いながら言った


「透過くん……こちらこそ、あまり役になれなかったけど……あなたの担当になれて私、嬉しかったわ……」


「僕もです……、本当にありがとうございました」


涙があふれ出さないうちに早くここを去ろう
そんな姿、最後に見せるべきじゃない

母親の待つ方へと再び足を向け、歩き出した

その背中に、看護婦の声が響いた


「透過くん！諦めないで！！」


諦めないで……


……



「……はい！」



大丈夫、僕は諦めたりなんかしない

この人生は絶対に捨てない。