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第15話・その視線が、引き金に
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打ち合わせが終わった後。
「せっかくですし、このあと皆さんで軽くランチでもどうですか?」
早瀬が笑顔で誘ってきた。
「えっ……」
澪は戸惑った。
社外の食事、それも目上の相手からの誘いは、簡単に断れるものじゃない。
「是非、お願いします。……結城さん?」
水野が横から軽く肘で促してくる。
「……はい、ありがとうございます」
そう答えるしかなかった。
(……なんで、こんなに緊張してるんだろう)
胸の奥が、妙にざわざわと騒ぐ。
仕事の話だ。
全部、仕事の話のはずだ。
でも、早瀬の視線は、澪の胸の奥に小さな針を刺すように突き刺さり、
そのまま抜けずに残り続けていた。
「結城さん、ぜひこちらへ」
ランチの席で、早瀬は当然のように自分の隣に澪を指定してきた。
「え、あ……はい」
戸惑いながらも笑顔を作り、澪は席に着く。
(……仕事の席だもん。別に深い意味はない)
そう自分に言い聞かせた。
食事は和やかに進んだ。
水野が場を盛り上げ、仕事の話や営業の裏話で笑いが生まれる。
けれど、ふとしたタイミングで、早瀬は澪にだけ話題を振ってくる。
「結城さん、休日は何をされてるんですか?
やっぱりお休みの日も勉強とかされてるのかな?」
「え、いえ……そんな、立派なことはしてないです……」
「そうなんですか?
いや、結城さんって本当に仕事ができるから、普段からいろいろ意識されてるのかなと思って」
(……そ、そんなこと……)
思わず視線が泳ぐ。
「お好きな食べ物とかは?
普段のランチのとき、あまり外食とかされないのかな?」
「……いえ、そんなことは……」
(……なんで私ばっかり?)
横では水野が談笑している。
崇雅も、表情を崩さないまま食事を進めている。
だけど早瀬の視線は、ずっと澪の方に向いていた。
(これは、ただの仕事の食事……だよね……?)
胸の奥が落ち着かない。
おかしなことを言われたわけじゃない。
でも、なぜか頬が熱くなる。
(……これ以上、どう返せばいいんだろう)
笑顔を保ちつつ、澪はなんとか話題を流そうと必死だった。
——————
進捗報告の打ち合わせ。
崇雅は澪、水野と共に資料を整え、順調に議論を進めていた。
(……予定通り、順調だ)
彼女の準備は完璧だった。
要点の説明も的確で、社内でも誇れる仕事ぶりだと、崇雅は密かに評価していた。
だが――
それは、C社・早瀬の前では裏目に出る。
「いやぁ、結城さん、やはり素晴らしいですね」
「細部まで気配りが行き届いている」
「結城さんと直接意見交換ができると嬉しいですね」
(……直接意見交換?)
胸の奥が、じりっと熱を持った。
水野が笑い混じりに会話を繋げるが、早瀬の視線はほとんど澪にしか向いていない。
崇雅は口を挟まず、資料に視線を落とすふりをし続けていた。
(ただの取引先の社交辞令だ。……そうだろう)
そう言い聞かせても、胸の奥がざわざわと熱を持つ。
打ち合わせ後のランチ。
「結城さん、ぜひこちらへ」
当然のように自分の隣に澪を指定する早瀬。
澪は少し戸惑いながらも、笑顔を作って座った。
食事が進む中、澪は終始控えめに話を合わせている。
けれど早瀬は、ことあるごとに澪に個人的な質問を織り交ぜてきた。
「結城さん、休日は何をされてるんですか?」
「お好きな食べ物とかは?」
(……仕事の話、じゃない)
崇雅は無言でナプキンを畳み、視線を落とした。
拳が、わずかにテーブルの下で震えていた。
(なぜ、こんなに苛立つ)
彼女は部下だ。
仕事のパートナーだ。
それ以上の関係じゃない。
けれど――
あの小さな部下が、他の男の視線を受け、頬を少し赤くしている。
無意識に視線を泳がせている。
その光景が、胸の奥で何かをぐっと引き絞った。
(……もう限界だ)
これまで、全て同席してきた。
全ての連絡を把握してきた。
それで十分だったはずだ。
けれど、もうそれでは足りない。
(これ以上、彼女を“前に立たせたくない”)
矢面に立つのは、俺だ。
話すのも、交渉するのも、全て、俺が引き受ける。
そう決めた瞬間、胸の奥にきゅっと苦しい熱が広がった。
(――なぜ、こんなにも焦っている?)
自分でも、その理由がうまく整理できなかった。
それでも、彼女を、これ以上、余計な視線に晒すわけにはいかない。
――そう、決めた。
「せっかくですし、このあと皆さんで軽くランチでもどうですか?」
早瀬が笑顔で誘ってきた。
「えっ……」
澪は戸惑った。
社外の食事、それも目上の相手からの誘いは、簡単に断れるものじゃない。
「是非、お願いします。……結城さん?」
水野が横から軽く肘で促してくる。
「……はい、ありがとうございます」
そう答えるしかなかった。
(……なんで、こんなに緊張してるんだろう)
胸の奥が、妙にざわざわと騒ぐ。
仕事の話だ。
全部、仕事の話のはずだ。
でも、早瀬の視線は、澪の胸の奥に小さな針を刺すように突き刺さり、
そのまま抜けずに残り続けていた。
「結城さん、ぜひこちらへ」
ランチの席で、早瀬は当然のように自分の隣に澪を指定してきた。
「え、あ……はい」
戸惑いながらも笑顔を作り、澪は席に着く。
(……仕事の席だもん。別に深い意味はない)
そう自分に言い聞かせた。
食事は和やかに進んだ。
水野が場を盛り上げ、仕事の話や営業の裏話で笑いが生まれる。
けれど、ふとしたタイミングで、早瀬は澪にだけ話題を振ってくる。
「結城さん、休日は何をされてるんですか?
やっぱりお休みの日も勉強とかされてるのかな?」
「え、いえ……そんな、立派なことはしてないです……」
「そうなんですか?
いや、結城さんって本当に仕事ができるから、普段からいろいろ意識されてるのかなと思って」
(……そ、そんなこと……)
思わず視線が泳ぐ。
「お好きな食べ物とかは?
普段のランチのとき、あまり外食とかされないのかな?」
「……いえ、そんなことは……」
(……なんで私ばっかり?)
横では水野が談笑している。
崇雅も、表情を崩さないまま食事を進めている。
だけど早瀬の視線は、ずっと澪の方に向いていた。
(これは、ただの仕事の食事……だよね……?)
胸の奥が落ち着かない。
おかしなことを言われたわけじゃない。
でも、なぜか頬が熱くなる。
(……これ以上、どう返せばいいんだろう)
笑顔を保ちつつ、澪はなんとか話題を流そうと必死だった。
——————
進捗報告の打ち合わせ。
崇雅は澪、水野と共に資料を整え、順調に議論を進めていた。
(……予定通り、順調だ)
彼女の準備は完璧だった。
要点の説明も的確で、社内でも誇れる仕事ぶりだと、崇雅は密かに評価していた。
だが――
それは、C社・早瀬の前では裏目に出る。
「いやぁ、結城さん、やはり素晴らしいですね」
「細部まで気配りが行き届いている」
「結城さんと直接意見交換ができると嬉しいですね」
(……直接意見交換?)
胸の奥が、じりっと熱を持った。
水野が笑い混じりに会話を繋げるが、早瀬の視線はほとんど澪にしか向いていない。
崇雅は口を挟まず、資料に視線を落とすふりをし続けていた。
(ただの取引先の社交辞令だ。……そうだろう)
そう言い聞かせても、胸の奥がざわざわと熱を持つ。
打ち合わせ後のランチ。
「結城さん、ぜひこちらへ」
当然のように自分の隣に澪を指定する早瀬。
澪は少し戸惑いながらも、笑顔を作って座った。
食事が進む中、澪は終始控えめに話を合わせている。
けれど早瀬は、ことあるごとに澪に個人的な質問を織り交ぜてきた。
「結城さん、休日は何をされてるんですか?」
「お好きな食べ物とかは?」
(……仕事の話、じゃない)
崇雅は無言でナプキンを畳み、視線を落とした。
拳が、わずかにテーブルの下で震えていた。
(なぜ、こんなに苛立つ)
彼女は部下だ。
仕事のパートナーだ。
それ以上の関係じゃない。
けれど――
あの小さな部下が、他の男の視線を受け、頬を少し赤くしている。
無意識に視線を泳がせている。
その光景が、胸の奥で何かをぐっと引き絞った。
(……もう限界だ)
これまで、全て同席してきた。
全ての連絡を把握してきた。
それで十分だったはずだ。
けれど、もうそれでは足りない。
(これ以上、彼女を“前に立たせたくない”)
矢面に立つのは、俺だ。
話すのも、交渉するのも、全て、俺が引き受ける。
そう決めた瞬間、胸の奥にきゅっと苦しい熱が広がった。
(――なぜ、こんなにも焦っている?)
自分でも、その理由がうまく整理できなかった。
それでも、彼女を、これ以上、余計な視線に晒すわけにはいかない。
――そう、決めた。
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