31 / 48
茂木編 カタツムリの恋
9 ★
しおりを挟む
俺の腕の中に捕らわれた奈央さんが、却下の嵐に途方に暮れている。夜食にサンドイッチを作ってきたから食べましょう、先日の喧嘩について話しませんか、じゃあせめてシャワーを浴びさせて。全ての要望を却下しているのは、はい俺です。
「あやめさんがにやにやしてたから、家でお風呂に入りづらかったんです。仕事の後なのでそこは譲歩して下さい」
「俺も仕事帰りです。同じですね」
「そんなお揃いいりません!」
じたばたしている奈央さんが面白い。
「じゃあ一緒に浴びましょう」
「却下!」
びっくり仰天した顔がおかしくて、俺は堪えきれずに吹き出した。
「揶揄ったんですね」
普段あまり取り乱さない人が、地団駄踏んで悔しがっている。その姿に暴走しかけた自分が少しだけ冷静になった。
「いえ本音ですけど」
でもやはり勢いのまま奈央さんを抱くわけにはいかない。ちゃんと彼女の気持ちが解れてから、ゆっくり体も解してあげたい。
「ここに来てくれただけで充分なので、とりあえず奈央さんの希望を優先しますね。して欲しいことを教えて下さい」
「して…?」
目を剝く奈央さん。ちょっと意地悪し過ぎたかな?
「すみません、今のは度が過ぎました」
苦笑しながら腕の力を緩めると、奈央さんはきっと俺を睨みあげた。
「いいでしょう、受けて立ちますよ」
がしっと俺の手首を掴む。待って下さい。一体何の闘いですか。
「シャワーでも何でも一緒に浴びてやろうじゃないですか」
「ちょ、奈央さん?」
「お風呂…あぁ、こっちですね」
そのまま呆気に取られる俺を引きずって、力強い足取りで浴室に向かってゆく。もしかして俺、変なスイッチを入れてしまったんだろうか。
「で、どうして真っ暗なんでしょう、奈央さん」
シャワーの水音が響く浴室で、隣にいるのに月明かりのおかげで辛うじて輪郭がつかめる程度の奈央さんに問う。
「だって、運動不足であちこちたるんでるんです。明るい所で見られたくない」
おそらく口を尖らせているのだろう。浴室に来たまではいいものの、結局恥ずかしかったらしい奈央さんは、一切の灯りをつけず、尚且つ服を脱ぐときも俺に回れ右をさせて、そそくさと脱衣場から逃げた。
視覚効果がないせいか、衣擦れの音がやけにはっきり聞こえ、俺としては妄想が膨らんで困っていたのだが、いざ浴室に入っても奈央さんは俺の気配から逃れるように、壁に張り付いてしまったので、お預け感が半端ない。
「ごめんなさい、奈央さん」
最初にマッハで湯に打たれていた奈央さんを、もう一度腕の中に収める。服越しではない奈央さんは、柔らかくてすべすべしていて心地よい。全くどこがたるんでるんだか。
「あの、茂木さん、下に…」
さっきから自己主張しっ放しの分身に、奈央さんが戸惑いを見せた。
「許して下さいね。さすがに隠すのは無理なので」
鼓動は早いけれど、嫌悪していない様子にひとまず安堵して、俺は奈央さんの体を洗い始めた。
「じ、自分でできますから!」
「逃げられると逆に刺激されて辛いんですが」
その一言で察したらしい。奈央さんの動きがぴたっと止まった。狭いので動くと却って密着度が上がるのだ。偶然の産物ではあるが、どさくさ紛れに事を進められる分怖さが半減して、奈央さんのためにはこの方が良かったのかもしれない。
「そうそう。じっとしていて下さいね」
「うー」
唸る奈央さんは小動物みたいだ。そして発見。実は結構敏感かも。首筋から滑り降りてゆく俺の手に、体がびくんびくんと跳ねている。嬉しいような、片岡の影が見えて面白くないような。ちょっとその辺りの記憶は塗り替えたい。
「!」
しかもさりげなく胸の尖りや、足の間の瑞々しい芽を掠めると、悩ましい吐息を漏らすのに、頑なに声は出さない。体だけではなく、奈央さんが俺を求めている証が欲しいのに。
「あやめさんがにやにやしてたから、家でお風呂に入りづらかったんです。仕事の後なのでそこは譲歩して下さい」
「俺も仕事帰りです。同じですね」
「そんなお揃いいりません!」
じたばたしている奈央さんが面白い。
「じゃあ一緒に浴びましょう」
「却下!」
びっくり仰天した顔がおかしくて、俺は堪えきれずに吹き出した。
「揶揄ったんですね」
普段あまり取り乱さない人が、地団駄踏んで悔しがっている。その姿に暴走しかけた自分が少しだけ冷静になった。
「いえ本音ですけど」
でもやはり勢いのまま奈央さんを抱くわけにはいかない。ちゃんと彼女の気持ちが解れてから、ゆっくり体も解してあげたい。
「ここに来てくれただけで充分なので、とりあえず奈央さんの希望を優先しますね。して欲しいことを教えて下さい」
「して…?」
目を剝く奈央さん。ちょっと意地悪し過ぎたかな?
「すみません、今のは度が過ぎました」
苦笑しながら腕の力を緩めると、奈央さんはきっと俺を睨みあげた。
「いいでしょう、受けて立ちますよ」
がしっと俺の手首を掴む。待って下さい。一体何の闘いですか。
「シャワーでも何でも一緒に浴びてやろうじゃないですか」
「ちょ、奈央さん?」
「お風呂…あぁ、こっちですね」
そのまま呆気に取られる俺を引きずって、力強い足取りで浴室に向かってゆく。もしかして俺、変なスイッチを入れてしまったんだろうか。
「で、どうして真っ暗なんでしょう、奈央さん」
シャワーの水音が響く浴室で、隣にいるのに月明かりのおかげで辛うじて輪郭がつかめる程度の奈央さんに問う。
「だって、運動不足であちこちたるんでるんです。明るい所で見られたくない」
おそらく口を尖らせているのだろう。浴室に来たまではいいものの、結局恥ずかしかったらしい奈央さんは、一切の灯りをつけず、尚且つ服を脱ぐときも俺に回れ右をさせて、そそくさと脱衣場から逃げた。
視覚効果がないせいか、衣擦れの音がやけにはっきり聞こえ、俺としては妄想が膨らんで困っていたのだが、いざ浴室に入っても奈央さんは俺の気配から逃れるように、壁に張り付いてしまったので、お預け感が半端ない。
「ごめんなさい、奈央さん」
最初にマッハで湯に打たれていた奈央さんを、もう一度腕の中に収める。服越しではない奈央さんは、柔らかくてすべすべしていて心地よい。全くどこがたるんでるんだか。
「あの、茂木さん、下に…」
さっきから自己主張しっ放しの分身に、奈央さんが戸惑いを見せた。
「許して下さいね。さすがに隠すのは無理なので」
鼓動は早いけれど、嫌悪していない様子にひとまず安堵して、俺は奈央さんの体を洗い始めた。
「じ、自分でできますから!」
「逃げられると逆に刺激されて辛いんですが」
その一言で察したらしい。奈央さんの動きがぴたっと止まった。狭いので動くと却って密着度が上がるのだ。偶然の産物ではあるが、どさくさ紛れに事を進められる分怖さが半減して、奈央さんのためにはこの方が良かったのかもしれない。
「そうそう。じっとしていて下さいね」
「うー」
唸る奈央さんは小動物みたいだ。そして発見。実は結構敏感かも。首筋から滑り降りてゆく俺の手に、体がびくんびくんと跳ねている。嬉しいような、片岡の影が見えて面白くないような。ちょっとその辺りの記憶は塗り替えたい。
「!」
しかもさりげなく胸の尖りや、足の間の瑞々しい芽を掠めると、悩ましい吐息を漏らすのに、頑なに声は出さない。体だけではなく、奈央さんが俺を求めている証が欲しいのに。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました
小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」
二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。
第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。
それから二十年。
第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。
なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。
不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。
これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。
※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付
唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる