最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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6章「傲慢の報いを」

ギルドハウスの主たち

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―――――――――――
数日過ぎ、ギルド戦初日。
とにかく他の拠点を攻めるのが至上命題だが、下手に全メンバーを攻撃に振り分けるとがら空きの拠点を易々と攻め落とされる危険が生じる。
そういうわけで、血気盛んなギルドは攻撃に重点を、慎重なギルドは守備に重点を置いている。そんな中【蒼穹】はというと、「いつもどおり」である。

そもそも彼らの持つギルドハウスに備えられた防御設備群は最低限、フレイやエヴァンレベルの攻撃力がないと壊すことはできない。ただ、「数の力」を侮ることも決してできないため、気質で言えば血気盛んなものの各々のギルドハウスにとどまっていた。
ただ、暇を持て余しているのか各々の行動は随分と個性に溢れているが。


――――
「一式魔聖工房ラルズエデン」。
サーディの近くにあるカイ所有の鍛冶工房。工房の他、倉庫や生産設備などそれなりに敷地をとるため広さは十分ある。倉庫は複数あるが中にはダンジョンなどで見つけた呪いの装備なんていうものも混じっており、何故そんなものを仕舞ってあるのかというと呪い付き装備は炉で溶かして再利用することができないからだ。

…余談はこのぐらいにしておいて、当のここの主は呑気なことに工房で鍛冶作業の真っ最中だった。
カン、カンという高い槌音が誰もいない工房内にこだまする。聞こえている音と言えばその槌音と炉の蒼い炎の燃える音、あとは風の音ぐらいか。

金床の上にはが熱された状態で置かれており、一定間隔で振るわれる槌が金属を軽く震わせる。いつになくカイの表情は真剣だった。

何を作っているのかは「筒」「金属」で察せる人もいると思うが、「銃」だ。まだ試作段階ではあるが。
…この世界では作ろうと思えば余程突飛すぎるものでない限りは何でも作ることができる。まあそれそのものを作るのは素材上難しいことがほとんどなので、似せて作る事しかできないことが多いのだが…。

あくまでカイは鍛冶師であり、弾丸を発射するための魔法回路を刻むのは専門家である大概ヒビキの担当になる。ただそのあたりで取れる最低ランク帯の金属ではあまりにも魔力に対する耐性が弱すぎるので、ヒビキが魔力調整をしょっちゅうミスって見事に鉄屑に変えてしまう。故に今使っているのはある程度魔力に強い金属だ。


―――――
ヒビキが銃の試作に没頭しているのと丁度同じぐらいの時に、
カヴン付近にある「二式雨撃基地ファルトレイ」にいるヒビキとスコールは2人で各々の得物の手入れをしていた。
生産設備や倉庫、防御設備などでここもそれなりに広い。

『銃、というものはそこまで凄いものなのか?』
「そうだぞ」
『大昔に滅んだ機械の国にそういうものがあったということは知っているのだが、正直凄いものとは思っていなかったからな』
「俺が協力できるのは内部機構ぐらいしかねぇし」
『それも十分凄いことだと思うが…』
ヒビキは前にやっていたゲームで銃使いガンナーをしていたのだが、本人の戦闘狂な気質とは逆に最も得意としていたのは狙撃手スナイパーである。意外な事に。
「でさ、昔はお菓子の国とかそういう国が沢山あったんだろ?色々その話聞かせてくれねぇか」
『………………ああ』

興味津々、という感情を全身で表しているヒビキのを受けてか、スコールの口元によく見ないと気づけない程仄かな笑みが一瞬だけ浮かんだ。

ヒビキは双刀の刃の砥ぎ直しを終え、暇を持て余しだしたか魔力紋章を描いて属性持ちの矢を生成し始めているし、スコールは赤い血晶を生成して色々な武器を作って遊んでいる。

矢はアイテムボックスにしまう予定だ。
血晶の硬質な深紅の煌きが辺りに反射し、ある種の美しさすら醸し出している。建物の中には他に人は誰もいないが時折付近を宙を自走するドローンじみた機械が通り過ぎて行ったり、ガシャガシャと音を立てながら作業用「人形ドール」が歩いているので完全に静まり返っている訳でもない。しかしある意味ホラーだが。
それらをよそ目に二人はぽつぽつと話しを交わしながら各々の武器づくりに没頭するのだった。


――――――――
「三式夜樹神殿アステリスク」。
カルディアの近くにあるルキ所有の研究施設兼神殿。
ただルキがやる研究と言えば専ら防御設備や罠についての研究だ。錬金術なんかはユリィの専門分野である。
一人になった時ルキはほとんど自分が作った防御設備群のメンテナンスをして回る。たまに新しいものを作ることもあるが、大体は新しく作っても使い道がないので倉庫行きとなっている。

そして今は何処にいるのかと言えば、生産設備のチェックをしているところだった。建築素材や魔力物質化の生産設備の前に彼の姿がある。

「…………よし、問題ないな」
暫くじっと佇んでいたが、やがて顔を上げひとつ頷いた。
その場を離れ、彼がやってきたのはアステリスクのコアがある部屋。

正方形のシンプルな部屋の中央に浮かんでいるのは、一辺50セメル程の黒い立方体。立方体の表面には幾何学模様が余すところなく刻まれ、その溝に沿って蒼い光が時折走っている。
ルキが近づくとアステリスク管理メニューのウィンドウが何枚か宙に表示された。因みにこれは他の【蒼穹】メンバーが近づいても同じである。

「もののついでだし、スコールの分の登録もやっておくかな」
アステリスク管理メニューを操作できる権限をスコールの分も登録しておく。ものの数分程度でその作業を終え、次に対外防御設備の設定を確認する。

一番厳しい設定にするとカルディアに被害が及びかねないのでにしてある。そのレベルでもLv400程度のプレイヤーまでなら簡単に粉砕できるが。主である本人が防御特化の能力構成ビルドかつそれに合った気質な所為か研究施設どころかある種の要塞と化している。

ちなみにここにも作業用の人形ドールが数体、通路を歩き回ってメンテナンス兼巡回をしている。
そんな調子でルキはいつもの巡回を再開した。


―――――――――――
「四式強襲戦艦ルミナリス」。
海・空両用戦艦であり普段は空を飛んでいる魔導戦艦。今はギルド戦中のため飛行は禁じられている故、セフィスの近くの海岸に停泊している。

ここの主はアリスだが、彼女も彼女で装身具アクセサリーたる彫刻品を作るのに没頭していた。戦艦の中には魔力物質化や木材・金属の生産施設が完備されている。ここでいう魔力物質化の生産施設とは、ユリィやルキのギルドハウスにあるのと同じ周囲に漂う魔力を収集して凝縮し、魔石を作り出す施設である。

他には製作品を仕舞うための倉庫などもある。当のアリスは数ある部屋の一室、周りに彫刻が飾られたアトリエらしき場所で椅子に座って手元の小さな角材を削ることに夢中になっていた。
彼女の前の机の上には仕上げに付ける飾りなのか、赤い炎属性の魔石やビーズ並みに小さい無数の金色の珠が転がされている。

アリスは集中すると相当の事がない限り周りからの呼びかけに反応しなくなるので、仲間たちもこうなったアリスには話しかけない。ただただ無言でひたすら小さな角材を削っている光景は何とも言えないものがある。
流石に襲撃警報が鳴れば作業を放り出して迎撃に向かうが…。
瞬く間に角材は綺麗に一つの彫刻として削り出され、彼女は飾り付けに取り掛かる。


――――――――――
「五式惑燐園ファランシア」。
セフィスとワースの丁度中間地点付近にある植物園である。中は奇怪な妖花や魔草に溢れ、そういう不気味で不思議な雰囲気の所為か、奥にあるコアが設置された洋館風の建物が魔女の家に見えてくるそうな。

というか実質そうなのだが。

ここの主はユリィで、今彼女は建物内の一室、錬金素材などが保管された部屋にいる。どうやら錬金をしようと素材を取りに来たところらしい。

隣には魔力物質化‐魔石を作り出す施設がある。錬金や合成、調合において魔石はかなり重要な触媒になるのだ。
そうこうしているうちに彼女は向かいの部屋‐錬金を行うための部屋‐に移動し、早速始めていた。

作っているのは「万能薬エリクサー」と「万癒薬アンブロシア」である。【錬金】のスキルレベル要求値と魔力を注ぐ量の調整の難しさで、上級プレイヤーの中でも作れる【錬金術師】は少ない。

そんな代物を「第十級回復薬コモンポーション」でも作るかのようなノリでポンポンと【錬金】していくユリィ。「万能薬エリクサー」は体力回復と状態異常回復、魔力回復の3つ全ての効果を持つ最高級の回復薬ポーションであり、「万癒薬アンブロシア」は病気や呪詛系状態異常のほとんどに効く。

消耗品だからか、作る量に歯止めをかける様子はない。結局倉庫から持ってきた材料が尽きるまでそれらの錬金作業は続いた。

…それから暫くして、たまにポーンといった破裂音が響くようになった。これは錬金失敗の証である。
彼女はいったい何を作ろうとしているのかというと、蝕気を自動で浄化するアイテムと燃え尽きることのない明かりである。

「あぁ…また失敗しちゃったわ。やっぱりこれはカイ君の領域かしら」

ユリィの胸に下がっている壊天の宝石のペンダントはカイ作である。というより元々、装備品やアイテムに特殊効果をつけるのは錬金の得意分野でもあるが、ものによる。
彼女の錬金作業はまだ続きそうだ。

…余談だが、ファランシアには防御設備群はほぼ存在しない。というより奇怪な妖花や魔草の群れが天然の防御設備や罠になっている。洋館裏にある牧場には彼女が調教テイムしたモンスターがのびのびと生活している。
あとは前、燻りの湖でヒビキたちが狩ったブラッディサンドワームの肉は、モンスターたちに結構好評だったとだけ言っておこうか。
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