最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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6章「傲慢の報いを」

戦闘発生!(最速の戦闘狂)

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―カヴンの近くにある「二式雨撃基地ファルトレイ」。
アリスの「四式強襲戦艦ルミナリス」やルキの「三式夜樹神殿アステリスク」と同じく生産より攻撃に重きを置いた造りとなっているため、鋭角的なシルエットが見る者に与える威圧感は半端ではない。

そこからしばし離れた森にひしめくプレイヤーの一団。数はざっと数百程度…どうやらギルド全員で出張ってきたか、複数の小ギルドが連合してきたかのどちらかだ。

「……行けるのか?」
「あそこには今誰もいないはずだ」
「…――――何としてでもやってやるぜ」

そんな言葉がざわめきに混じって聞こえてくる。
…ギルド戦では相手のギルドマスターを倒した者に最大の戦績がつく。このゲーム世界にいるプレイヤーは大規模メンテナンス後非常に増え、【蒼穹】の持つ超激レアアイテムの山に釣られ実力を知らずに襲撃を行うプレイヤーもまだ多い。

それ故にギルド戦では必ず2回以上は攻められる。
機を窺っているらしきその一団の視線は、基地の唯一の出入り口となる門に向いている。なかなか動き出そうとしないその一団を、樹の上から見下ろす人影があった。
人影は暫くそこにいたと思うと、一つ頷いて姿を眩ませた。

―ファルトレイ内。
防衛時に備えて銀の待ち針でがりがり魔法紋章で罠を作っているヒビキの傍に、先ほど外の森の樹の上にいた人影が転移してきた。

樹の上にいた時は木々の葉が影になってよく見えなかったその人影の出で立ちが露わになる。

ヒビキのものと似た軍服を纏った黒髪に明るい翡翠色の、瞳孔が縦に裂けた双眸に右頬に二条の竜の爪傷をもつ外見年齢18歳ぐらいの、精悍な顔立ちの青年がきっちりと軍隊式敬礼をしながら外の一団の事を報告する。それを聴き終わったヒビキもなかなかに様になった軍隊式敬礼で返す。

青年の宿す身体的特徴やいくつかの技は竜っぽいが、竜燐族ドラグニアではないそうだ。

青年の姿が消えた後、傍らで見ていたスコールが首を傾げて訊いてくる。

『今のは誰だ?』
「ん?ちょっとな」

曖昧な笑みではぐらかすと、すぐに表情を変えた。

「それより、この外の森に敵がいるんだと。どうする?」
『それは動く様子がないのか?』
「今のところないようだな。とれる方法は、攻めてくるのを待って撃退するか、防御兵器群を起動して倒してもらうか、それとも俺らが不意打ちをかけに行って撃滅するか」
『基地内に誰もいないと相手がそう思っているのは何故だ?』
「…………あーそりゃまあ今この中にいるの俺とお前の2人だけだし、基地の魔法機械群が結構な音たててるからな。聞こえてないんだろ」

それは事実である。基地内を徘徊する浮遊型射撃魔法道具ファンネルもどきやら「人形ドール」やらその他の魔法機械たちもかなりの機械音をたてている。

『…‥……………………2番目と3番目の策を併合して使ったらどうだ?不意打ちで基地の方へ追い込み、挟み撃ちにすれば労力も減るだろう』
「それもそうだ」

スコールの提案に頷き、確認を取る。

「じゃ、今から行けるか?」
『ああ』

実に軽い調子で頷き合った後、2人の姿は掻き消えた。それとほぼ同時に、基地に備わる防御設備群が起動される。


――基地近くの森。未だに動けていないプレイヤーの一団の上側、樹の枝の上に2人は器用に立っていた。
2人とも【隠蔽】を最大限に発動したまま、ヒビキは音声チャットに切り替えて話を交わす。

『さて、気づかれてないみたいだな……』
『このままここにいてもどうしようもないから、行くか?』
『まあな。号砲代わりの一撃は俺に任せてもらっていいか?』
『ああ』

ヒビキが抑えきれていないわくわくした表情でスコールに最初の一撃をやっていいかと訊くと、ほぼ即答で返事が返ってきた。

『よっしゃ。じゃ、盛大に殺るぜ?』

……になっていたのは別に誤字ではない。
戦闘狂バトルジャンキー独特の歪んだ笑みが口元に浮かんだ直後、一陣の強い突風が森のこずえを揺らす。一見ただの風かと思いきや、それが起爆剤だった。

いきなりプレイヤーの一団の中央の地面に深紅と蒼の炎が燃え上がる。深紅の炎は国宝級トレジャークラス程度の武具なら飴の様に溶かし、蒼い炎はプレイヤーを武具ごと凍てつかせる。

―炎・氷属性複合魔法スキル【双炎地獄インフェルノ】。

十分な大混乱に陥ったところに、背後から深紅の血晶群を纏ったスコールと共に乱入し攻め立てる。木々を足場に上下左右から立体的に飛び回りながらも精確に狙いを定めて双刀を振りかざすヒビキと、乱舞する大量の血晶の刃を平行操作しながら自らも双剣を振るうスコール。

AGIが相当高いか【動体視】スキルが高くないと残像すら捉えられないヒビキの超高速立体的機動と、血晶の群に護られたスコールの戦う姿は、さぞやられる相手の目には悪夢と映るだろう。
生き残りのプレイヤーは大部分が彼ら2人とは逆方向―つまり基地の方向へと逃げていく。その顔からは戦意なんて失せているように見える。

「どうやらお前ら、攻める拠点を間違えたみたいだなァ!!」

凄惨な笑みを浮かべたヒビキが叫ぶ。


…確かに【蒼穹】の5人のメンバーは誰もが「舐めてかかっては痛い目を見る」のは確実の強大な実力を誇っているが、ビルドと性格の違いかギルド戦で攻撃された時の対応には随分と差がある。

ルキとユリィはギルドハウスの防御設備群に迎撃を任せることがほとんどで、ヒビキとカイは設備はおまけ程度で自ら迎撃しに行く傾向が大きい。アリスの場合ギルドハウスが空も飛べる戦艦であるため元々位置を特定するのが並大抵のことではないし、よしんば発見できたとしても戦艦に備えられた魔砲とアリスの魔法に焼かれるだけだ。

特定できたところで手も届かぬ沖か空から強烈な砲撃を浴びせられて成すすべなく全滅するだけだが。
そして性格的に最も攻撃的なヒビキのギルドハウスが攻撃されることが多い。何故か。
複雑怪奇な魔力紋章を手繰りながら、ヒビキが次のスキルを放つ。

―刀術系風・大地属性複合スキル【雛罌粟ひなげし】。

風を纏い加速した刃が地面すれすれから叩き上げられるように跳ね上がり、大地がそれに反応して近くの妖花の蔦を伸ばす。

基地外の方へ逃げようとしていた者たちに蔦が絡みつき、拘束する。その間基地の方からガラスの砕けるような音が連続して響く。恐らく防御兵器群の餌食となったのだろう。

拘束された者は蔦に生命力を吸われ、限界点に達した者から黒いガラスと変じて砕けていく。
数分後、辺りにはドロップアイテム以外何もなかった。
ウィンドウが自動で開き、今回のギルド戦ポイントの清算結果や入手したドロップアイテムのリストなどがそれに表示される。特に興味も抱くことなくそれを閉じ、向き直った。

「さて、帰るか」

何事も無かったかのように、2人は雨撃基地へと帰っていく。

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