最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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6章「傲慢の報いを」

気ままな攻勢(生ける不落要塞&撃滅の覇者)

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―ギルド戦2日目。
どうやら今暇を持て余しすぎているらしいルキは、神殿ギルドハウスの玄関口の階段に座り込んで何か考え事をしていた。額の紋章を隠すように巻かれた帯の長い端が時折ふく風に揺れる。

「オレのとこには何故かこないしなー、いっそこっちから行ってやるか」

ルキの夜樹神殿を攻撃するギルドが滅多にいない理由は至極単純、5つあるギルドハウスの中でずば抜けて防御が固いからだ。勿論他も固いっちゃあ固いのだが、隙をつけば侵入できなくもない。ただ感知され次第コンマ数秒後に殺られるが。

だがルキの夜樹神殿は侵入するより前に超高確率で塵にされてしまう。それだけ強烈な防御力を誇る。
しかしこの暇なままギルド戦期間を過ごすというのは納得できない。となると行きつくのはやはり「こちらから攻めに行く」という思考だ。

「…………といっても何処に行くかだが」

軽く周辺に【走査スキャン】をかけて地図マップを取得する。

「お?あったあった」

【走査】の箇所が幾つかと、更にギルドハウスを示す反応が幾つか。それらの内の最寄りの箇所へとメインウェポンを引っ提げてルキは疾走する。


……森の木々に隠れるようにして建てられている基地型ギルドハウスの付近の木陰にルキの姿があった。
彼の【索敵】にはそれなりの数のプレイヤーとテイムモンスターの反応が引っ掛かっている。視線の先には閉じられた大きな門があった。
…ギルド戦中、ギルドハウスの施設や設備がもし壊されても次の日には完全に全て自動修復される。
そして勿論テイムモンスターは完全消滅することは原則ない。ギルド戦最終日でもこのルールは適用される。故に遠慮する必要はない。

「さて、行くか」

小さく呟き、気配を絶った上で【隠蔽】を自分にかけて木陰からそっと走り出す。

誰もいない大きな門の前。門にはギルドハウスのグレードに応じ耐久値が設定されており、【盗賊】系の鍵開け技術を使った開錠以外では力づくで突破するしかない。ので門をどうにかしてぶっ壊さないといけない。…しかし縛りのつかない単純破壊なら、【蒼穹】の得意分野だ。
氷天の護国剣メインウェポンの大盾を構え、スキルを重複発動する。

―付与術系スキル【強度強化/武具】。
―盾術系戦技スキル【シールドバッシュ】。

盾の強度を上げてからの、槍を構えて助走をつけたタックル。単純に言い表せばそうなる。
が、盾が門に衝突する度に破城槌を打ち込んだかのような轟音が鳴り響き、門の耐久値はがりがりと削られていく。
最初の衝突時に警報音が響き渡り、何事かとプレイヤーたちが集まってくる。それにも構わずルキのタックルは続き、とうとう門を打ち破ったところで【隠蔽】を解いた。

「…………一人!?」
「いや待てあの恰好…」

ルキの姿を見た一部のプレイヤーたちが一瞬だけ固まるが、すぐに各々の武器を振り上げ向かってくる。
が、ルキが構えている氷の大盾にほとんどが弾かれた。幾つかはルキの体に届いたが、防御と頑強さに長けているが故に【蒼穹】イチ高い彼のHPゲージ量からすれば雀の涙程度のダメージしかない。

「さて、テイムモンスターは何処だ?」

槍を振るい、大地を呼応させて攻撃しながら呟く。地面から響く足音を基に大体の位置を割り出すと、そちらへ向けて駆けていく。【蒼穹】随一のスピード狂であるヒビキと比べるとその速度は遅いが、決して遅すぎる訳ではない。
やがて牧場エリアらしき場所にいるモンスターを視界の奥に捉えると、戦意滾る表情で槍を振るう。
邪魔者は全て弾き飛ばしながらただまっしぐらに突き進んでいき、テイムモンスターの群の至近にまで辿り着く。
そして近くにいるはずの調教師テイマーが指示を出す前に、スキルをかけた。

―槍術系氷・大地属性複合スキル【血餓の氷華】。

特定の軌道を描く槍の軌跡から冷気が発生し、地面から伸びあがる吸血の妖花と融合して触れたものを凍てつかせて血を吸う氷華となる。標的はテイムモンスター全部だ。
氷華による拘束が終わった瞬間にそれらに興味を失ったかの様にルキは身を翻し、次の標的を狩りに行く。
といっても相手もいつの間に逃げたのか殺られたのか、もう残り少ない。

「じゃあな。またいつか」

それを見て取ったルキが一つ嗤った直後、地面が震え、鳴動しはじめる。

―大地属性魔法スキル【大地女神ガイアの怒り】。

それと同時に地面から蛇のような土の鎌首が伸びあがり、プレイヤーを残らずその餌食とした。
気が抜けそうなサウンドとともに開かれたギルド戦ポイント清算のウィンドウは消し、次の拠点を攻めに疾走する。



――その頃、銃の試作づくりは一段落したのか工房の敷地内にカイの姿があった。
こちらもやっぱり暇を持て余し気味なようで、色違いの視線はウィンドウの上に向けられている。ウィンドウの内容は【魔力探知波マジックソナー】で走査した付近の地図。

「僕もこっちから行ってみますかね」

そして行き着く思考の先もやはりルキと同じ。地図に表示された内でも最寄りの反応へとメインウェポンを引っ提げ疾走する。
やがて神殿型ギルドハウスの傍にまで辿り着いた。だが、そこからの行動はルキとは違っていた。

「まずは宣戦布告代わりに一発かましますか」

隠れることもせず、迂回することもせず。伸ばされた手に連動して動く宙に浮く魔剣に魔力が収束しはじめる。魔力が収束しきった剣が勢いよく地面に突き立てられ、そしてただただ純粋な破壊がを襲った。

―魔剣カテゴリ固有戦技スキル【破壊の神槍トリシューラ】。

インド神話の破壊神の持つ槍の名を冠したこのスキルは、武器カテゴリが魔剣でさえあれば誰でも使える武器固有戦技スキルの一つで、空から降る光の槍はとてつもない攻撃力を秘める。今回の標的は牧場エリアにいたテイムモンスター全てだ。

【蒼穹】随一の火力狂であるカイの攻撃は、並大抵の障壁は無いも同然に貫くことができる。今回もギルドハウスを覆うように張られていた魔法障壁を軽々と突き破り、光の槍の群はテイムモンスターをずたずたに刺し貫いた。
【蒼穹】が得意とする「縛りのつかない単純破壊」に最も長けているのがカイだが、また手加減を始めとした小手先の技術を最も苦手とするのもカイだ。

情け容赦なくカイは次のスキルをぶっ放す。

「ご覚悟を、お願いいたします」

―剣術系魔属性複合スキル【血塗れの大槍舞】。

スコールの使う【血塗れた惨禍の大軍勢ツェルベディア】よりも威力的には低いものの使い手が使い手。
地面から連続して紅い槍が茨の処刑園ローゼンメイデンの様に突き出し、効果範囲にいた敵を躊躇いなく巻き込んで突き刺していく。

戦いとなればどんなに力の差が開いていようと相手に手加減も容赦もしない。それが【蒼穹】に共通する流儀だ。
戦いで手加減をする=相手を舐めて相対しているという考えを持つので、誰がなんと言おうが変えるつもりはない。
故に手加減なんて基本、するつもりはない。全く。

…その後も幾つかスキルを連発し、あらかた邪魔者を片付けてからトドメとして大技を放った。

―炎・魔属性複合魔法スキル【ムスペルスヘイム】。

ヒビキが以前使った【ニブルヘイム】の炎属性版だ。このスキルシリーズはまず殲滅力が図抜けて高いので有名で、MPコストの割に攻撃力が高い。
一分近く続いた灼熱世界が消えた後に残ったのは、半壊状態の建物群のみであった。
ギルド戦ポイント清算結果やドロップアイテムの群にはさした興味もなくウィンドウを消し、カイは飄々とした態度を崩さずに、次の標的目がけてまた疾走していく。


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