最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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6章「傲慢の報いを」

エルフの街

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―――――――――
ギルド戦終了から、数日後。
エルフの街の中、【蒼穹】と同行者の男性陣とは少し離れた場所に女性陣の姿があった。
男性陣はエルフの議会長の家に行き、女性陣は観光を楽しんでいた。

――――――――――
エルフ評議会長の家は、エルフ族の家の例に漏れないツリーハウスかつその規模も役職に相応しいものだった。
玄関前には二人の門番がいたが、傭兵ギルドからきた依頼書を見せるとすんなり通してくれた。
狼人の双子には外で待ってもらい、3人で中に入る。
中は派手過ぎない程度に飾られていて、中央の立派な書斎机の奥にエルフの評議会長がいた。見た目の年齢は壮年ぐらいだが、エルフは特に見た目と実年齢のギャップが凄まじい種族なので実年齢が何歳かは分からない。

「来てくれたか」
「依頼の件は了承しました!それで、何日後かを教えてください」
「彼らが来るのは明日だ。思想が激しすぎる故に彼らは何をしでかすか分からんからな」
「それを見張っていればいいのですね」
「その通りだ」
「…を貰えませんか?」

いつの間にか冷たい目になったヒビキが言う。彼もヒビキの問いの意図を察したのか、いささか据わった目になって返した。

「構わん。既に聖樹様からも許しは頂いている」
「そうですか。なら後は俺たちに任せてください」
「住民の皆様に被害を及ぼさせたりなんかしませんよ」
「……頼むぞ?」

話すべきことはなくなったので、さっさと退出する。元々あまり長居していいものでもない。

「なに話してたのー?」

興味津々にヴィントが訊いてくるので、ルキが詳しく話した。

「俺たちも協力した方がいい?」
「ああ」
「わかった」

ハイエルフが通る大通りルートは既に教えてもらってメモ済みので、後は明日を待つだけだ。

「どれどれ…街の大門からさっきの評議会長の家を通って議会所まで…って結構長ぇな」
「分散しといた方がいいかもね」
「……そうだな」

明日の集合時にそれを全員に話すとして、ヒビキは空気を切り替えるべくぱんと手を打った。

「さて、後の時間は観光しようぜ。せっかく来たんだし」
「賛成です!」
「ふん」
「いいねー」

全体的に乗り気なので早速大通りへ足を向ける。

―およそ数十分後。

「カイ、鉱石そんなに買って大丈夫なのか?それにレイヴン、お前も精霊石結構買ってるな?」
「大丈夫ですよー」
「この位は何ともない」
「…そうか。ならいいが」

精霊や妖精などと密接な関係にあるエルフの店で扱っている精霊石は非常に質が良く、またこのあたりでしか取れない特殊な鉱石も売られていた。カイは明らかにほくほく顔である。
そんな様子で5人連れだって大通りの端を歩いていると、スコールが突然足を止めた。

『……そこの路地裏、誰かいるぞ。こちらを見てきている』
「ほぉ?」
「動いたか。ヴィント、A529170」
「だねぇ。どうする?明らかに俺たち狙いだよね。人攫いか何かかな?」
「……お前ら呑気だな…まあいいけど。何人だ?」
「未熟6人、そこそこ熟練3人、あれ?スタン魔法準備してら」
「はいはい。俺がそこそこ熟練を処置すっから、未熟なやつを頼んだぞ」
「おっけー」

すらりと音も無く腰の双刀を抜き放つと、一瞬で掻き消えた。次の瞬間に物陰に隠れて気配を消していた3人の人攫いは黒ガラスとなって消え失せた。
それと同時にヴィントが投げたスタングレネードもどきの小型爆弾が放った光が、6人を気絶させる。トドメとばかりにスコールの生成した血晶の茨が彼らの手足を拘束した。

「できたよー」
「後は待つか。依頼ついでに街に蔓延るこういうのを少々一掃したらぁ」

6人の賊が昏倒から目覚めるまで待つ。
――――――――暫く経った。
6人のうちの一人が呻いて目を覚ます。そして現状を見て混乱をきたすが、ヒビキが刀の切っ先を鼻先に突き付けてやると大人しくなった。

「さて。幾つか訊きたいんだが…まず、お前らの目的は?」
「…………」

男は沈黙を守ったままだ。耳が尖っているので間違いなくエルフである。

「……そこのアルビノの狼人の双子を攫ってこいと命を受けた」
「何故?」
「…それは知らない。ただの下っ端の俺にはそこまで知る権利はない」
「じゃあ、質問を変えるか。…………知っていること全部話せ」
「………………どうせ任務をしくじった俺はここで生き延びても殺される。話すからこの拘束を解いてくれ」

ヒビキがスコールの方をちらりと見る。意図を察したか男を拘束していた茨が砕けて散った。

「………と言っても大したことは知らない。上の方からそういう指令が下りてきたから動いただけなんだが、うちを出入りしていた客の中に妙なやつがいた」
「妙な?」
「目が血よりも紅くて歯が鋭い、青白い肌をした妙なやつ。黒いローブで姿を隠していたから見えたのはそれぐらいだ」
「…間違いねぇ、吸血鬼だな」
「?」
「いや、こっちの話だ」
「………………こんな立場でするものではないと分かっているんだが、一つ、聞いてくれないか」
「何だ?」

一瞬の躊躇いの後、再び開口した。

「俺たちの裏ギルドの主を殺してほしい」
「…………何故だ?」
「俺も含めて、後ろにいる5人も全員エルフだ。で、主は過激な思想を持つハイエルフなんだが、…もう耐えきれない」
「扱いが酷いのか?」
「その通りだ」

そこで、いつの間にやら目を覚ましていた後ろの5人のうちの1人が口を開く。

「主が、明日には自分の友人たちが街を支配する、と楽し気に独り言を言っていたのを偶然聞いた」
「…支配する、だと?」
「よくは知らないが、客の吸血鬼が持つ何かを利用するらしい。それを利用するのに数人の命が必要だとか」
「(【洗脳ブレインウォッシュ】や【魅了チャーム】の類か。吸血鬼の得意技だったな)」

吸血鬼は身体能力も常人より高いが、彼らの本領は精神操作だ。

「で、あんたらの本拠地はどこにあんの?」

いきなりヴィントが割り込んできた。

「あ、ああ。その時は案内する」
「それならいいや。ヒビキ、俺たちは彼らと一緒に行っていい?」
「…構わないが、大丈夫なのか?」
「大丈夫だって」
「…なら、カイ。一応ついて行ってくれねぇか」
「いいですよ。万が一ということもありますからね」
「……………申し訳ない」
「別に」
「これからこの街でろくでもない企みをされちゃたまりませんもんね」
「いつ行けばいい?」
「…明日の朝この時間に、この路地で」

彼らが指定してきた時間は、丁度ハイエルフらがこの街の門に到着する時間だった。

「了解」
「…俺たちはこれから時間まで身を隠す」
「まあいいさ。あ、隠れるっていうんならこれ持っとけ。返す必要はねぇ」

そういってヒビキが渡したのは、【陽炎の虚影飾り】というピンブローチ型の魔道具アーティファクトだ。装備者の【隠蔽】のスキルレベルを装備者自身のDEX値分引き上げるレアアイテムである。

「……誠にありがたい。では」

それぞれ【陽炎の虚影飾り】を受け取ると、彼らは姿を消した。

「…で、明日やる事を要約すると、

・大通りを通るハイエルフ集団の監視()
・ある裏ギルドのマスターの殺害

かね。後でユリィたちにも話しておくか」

あと、吸血鬼討伐依頼も現在続行中。

「今更ですけど、僕たちってこんな便利屋でしたっけ?」
「まあ暇よりいいだろ。こんな厄介ごとが舞い込んでこなけりゃ俺らはアステリスクの迷宮区画でモンスター相手に特訓に明け暮れてるだろうし」
「ま、いいですね。こんなのも」

後は5人でまた観光を続行した。
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