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6章「傲慢の報いを」
「匣」の在り処に
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―無事に任務を終えたカイとレイヴン、ヴィントと合流し、【蒼穹】が揃った。
「お、終わったのか?」
「うん、終わったよー」
「またヒビキは派手にやりやがってなぁ…」
「別にいいだろ。あれが抑止力になったんだし」
「あ、エルフ長からだわ」
パーティ宛てにメッセージが届いた。内容は働きに対する謝礼の言葉と、報酬の許可証が添付されていた。
「で、この後はどうするよ?」
「どうすっかなー。そこの双子に協力する約束してっけど、そんなに人数いらねぇしな」
「吸血鬼狩りしなきゃですね」
「いっそ、冒険者ギルドに依頼出すか?その方が効率がいい」
吸血鬼は扱いとしてはモンスターだが、高位になるにつれ知能が高くなる。最高位の大公と呼ばれる存在は下手なプレイヤーより強い上、非常に賢い。また、吸血鬼は吸血によって他のモンスターを配下に置くことができる。
さらに厄介なことに、プレイヤーも教会の洗礼によって得られる特殊系称号「神の加護」を効果の大小はあるにしろ大抵が持っている。しかし階級が高くなるほど、倒した見返りたるドロップアイテムの豪華さも上がる。
「わかった。私は主街区のギルドに行って吸血鬼狩りの依頼を出してくるわ。報酬はどれくらいがいいかしら?」
「カイ製の武具かユリィ製のアイテム、あとはルーぐらいしか思いつかねぇけど」
「それで十分なんじゃない?選択制にしたらどうよ」
「わかったわ」
そういってユリィは転移していった。
「あ、あたしもメッセージ来てる。あの島の人たちからだ」
イヴを預けたあの浮遊島の人々から、お礼をしたいので来てくれないかというメッセージが来たらしい。
「ちょっとあたしも行ってくるね」
「おう」
アリスも転移していった後、残された男性陣は顔を見合わせる。
「さて、とにかく俺のとこにこねぇか?」
ヒビキの提案で、一同はファルトレイに転移した。
―二式雨撃基地ファルトレイ内の居間。
「じゃ、空に行きますか」
ドローンもどきに命令を下す。すると数秒の振動の後、重々しい音と共に一瞬の浮遊感が彼らを襲ったがそれはすぐ止んだ。
「うぉ、飛んでる」
「……凄いな」
『……陸空両用か?』
「ギルド戦がある時とその前後だけ地面に降りてんだけどな。大体は空飛んでる」
外を見ると、180度青空と雲しか見えない。下部は山をひっくり返したような逆三角錐形をしており、周りには防御設備たる浮遊砲台の群が飛びまわっている。その下部自体にも備えが色々としてあり、それらはもれなく星夜金属でコーティングされていた。
平たく言えば、だ。反重力エネルギーの青い石で飛ぶ某天空の城みたいな状態だ。
「これでどこでも行けるぜ」
飛行状態の雨撃基地は、まさに要塞と言って相応しい威容を誇っている。実際にプレイヤーたちからは天空要塞の名を頂戴している。因みに防御システムコアの”雨魔法”はこの状態でも問題なく行使可能だ。
テーブルに置かれた水晶のペンダントは、一筋の儚い光をただある方向に向けて伸ばしている。基地は今ゆっくりとその方向に向かって進んでいる最中だ。
「感じからして、数日は絶対かかるな。ま、色々あるし、ゆっくりしてくれ」
空には空で、飛行タイプのモンスターやプレイヤーの飛行戦艦型ギルドハウス、果てはどこぞの空賊まで出る。娯楽に飢えることは恐らくないだろう。
「おう。じゃオレは早速罠研究してくるわ」
ルキは地下部にある彼専用の研究部屋に向かっていった。
「僕も鍛冶してきますね」
カイも同じく、地下部の鍛冶場に行くらしい。
残されたヒビキは一冊の古い本をテーブルの上に開けていた。本には色々な紋章が説明付きで書かれている。カヴンで買ったものだ。
『それは紋章術の本か?』
「ああ」
『そういえば俺も幾つか昔それらしいものを見た覚えがあるぞ』
「マジか」
『【罪の都】の各神殿に、紋章があった』
「それ間違いなく神を表すモンだよな」
『まあそうだろうな。例えばこれは、創造神ミューズの紋章』
スコールは、説明が無い紋章の内の一つを指差しながらいった。そのページには効果の分からない古代の紋章が並べられている。効果が分からないので説明書きも無かった。
「…ん?」
その紋章の中の幾つかが、ヒビキ自身や他の4人の額にある紋章と全く同じ模様をしていることに気づく。
細い三日月に一振りの直剣が重なった紋章、金槌と炎・とある武具の重なった紋章、太陽を模した紋章、妖しくデザインされた樹木や花々を模した紋章、大地と山々、それに芽吹く植物を模した紋章。
「これは……………………」
『それか?確か【暗月神】の紋章、【鍛冶神】の紋章、【太陽女神】の紋章、【錬金女神】の紋章、【大地母神】だったような…』
「ほぉ…」
【魔導機人族】の種族説明を見てみれば、想像するのはそんなに難しい事でもない。
…暫くその本を読んでいた。
―レイヴンとヴィントは外にいた。
「わぁ本当に飛んでるねぇ」
「……ふむ」
レイヴンの狼耳はまたピンと立っている。その耳が、ある音を捉えた。
「ヴィント、B182539」
「ほーい。人形さんに頼めばいいのかなー?」
ヴィントが呑気に返事を返した数瞬程後、全く予想してない方位から知らない声がした。
「敵の反応か?」
ギルド戦中、偵察を務めていたあの、明るい黄緑色の鋭い双眸と頬に目と同色の竜の爪痕をもつ、黒い軍服姿の精悍な青年の声だった。
「誰?」
「紹介が後れ、申し訳ない。我はクロハと言う者だ。ヒビキ殿に伝言か?」
「ああ。方向は特定できているだろうから言わないが、相当数の多い吸血鬼の群れが近くに来ていると伝えてくれ」
「承知した」
そういうとクロハと名乗る彼は基地内に入っていった。
2人は呆気にとられた顔でそれを見送った。
「お、終わったのか?」
「うん、終わったよー」
「またヒビキは派手にやりやがってなぁ…」
「別にいいだろ。あれが抑止力になったんだし」
「あ、エルフ長からだわ」
パーティ宛てにメッセージが届いた。内容は働きに対する謝礼の言葉と、報酬の許可証が添付されていた。
「で、この後はどうするよ?」
「どうすっかなー。そこの双子に協力する約束してっけど、そんなに人数いらねぇしな」
「吸血鬼狩りしなきゃですね」
「いっそ、冒険者ギルドに依頼出すか?その方が効率がいい」
吸血鬼は扱いとしてはモンスターだが、高位になるにつれ知能が高くなる。最高位の大公と呼ばれる存在は下手なプレイヤーより強い上、非常に賢い。また、吸血鬼は吸血によって他のモンスターを配下に置くことができる。
さらに厄介なことに、プレイヤーも教会の洗礼によって得られる特殊系称号「神の加護」を効果の大小はあるにしろ大抵が持っている。しかし階級が高くなるほど、倒した見返りたるドロップアイテムの豪華さも上がる。
「わかった。私は主街区のギルドに行って吸血鬼狩りの依頼を出してくるわ。報酬はどれくらいがいいかしら?」
「カイ製の武具かユリィ製のアイテム、あとはルーぐらいしか思いつかねぇけど」
「それで十分なんじゃない?選択制にしたらどうよ」
「わかったわ」
そういってユリィは転移していった。
「あ、あたしもメッセージ来てる。あの島の人たちからだ」
イヴを預けたあの浮遊島の人々から、お礼をしたいので来てくれないかというメッセージが来たらしい。
「ちょっとあたしも行ってくるね」
「おう」
アリスも転移していった後、残された男性陣は顔を見合わせる。
「さて、とにかく俺のとこにこねぇか?」
ヒビキの提案で、一同はファルトレイに転移した。
―二式雨撃基地ファルトレイ内の居間。
「じゃ、空に行きますか」
ドローンもどきに命令を下す。すると数秒の振動の後、重々しい音と共に一瞬の浮遊感が彼らを襲ったがそれはすぐ止んだ。
「うぉ、飛んでる」
「……凄いな」
『……陸空両用か?』
「ギルド戦がある時とその前後だけ地面に降りてんだけどな。大体は空飛んでる」
外を見ると、180度青空と雲しか見えない。下部は山をひっくり返したような逆三角錐形をしており、周りには防御設備たる浮遊砲台の群が飛びまわっている。その下部自体にも備えが色々としてあり、それらはもれなく星夜金属でコーティングされていた。
平たく言えば、だ。反重力エネルギーの青い石で飛ぶ某天空の城みたいな状態だ。
「これでどこでも行けるぜ」
飛行状態の雨撃基地は、まさに要塞と言って相応しい威容を誇っている。実際にプレイヤーたちからは天空要塞の名を頂戴している。因みに防御システムコアの”雨魔法”はこの状態でも問題なく行使可能だ。
テーブルに置かれた水晶のペンダントは、一筋の儚い光をただある方向に向けて伸ばしている。基地は今ゆっくりとその方向に向かって進んでいる最中だ。
「感じからして、数日は絶対かかるな。ま、色々あるし、ゆっくりしてくれ」
空には空で、飛行タイプのモンスターやプレイヤーの飛行戦艦型ギルドハウス、果てはどこぞの空賊まで出る。娯楽に飢えることは恐らくないだろう。
「おう。じゃオレは早速罠研究してくるわ」
ルキは地下部にある彼専用の研究部屋に向かっていった。
「僕も鍛冶してきますね」
カイも同じく、地下部の鍛冶場に行くらしい。
残されたヒビキは一冊の古い本をテーブルの上に開けていた。本には色々な紋章が説明付きで書かれている。カヴンで買ったものだ。
『それは紋章術の本か?』
「ああ」
『そういえば俺も幾つか昔それらしいものを見た覚えがあるぞ』
「マジか」
『【罪の都】の各神殿に、紋章があった』
「それ間違いなく神を表すモンだよな」
『まあそうだろうな。例えばこれは、創造神ミューズの紋章』
スコールは、説明が無い紋章の内の一つを指差しながらいった。そのページには効果の分からない古代の紋章が並べられている。効果が分からないので説明書きも無かった。
「…ん?」
その紋章の中の幾つかが、ヒビキ自身や他の4人の額にある紋章と全く同じ模様をしていることに気づく。
細い三日月に一振りの直剣が重なった紋章、金槌と炎・とある武具の重なった紋章、太陽を模した紋章、妖しくデザインされた樹木や花々を模した紋章、大地と山々、それに芽吹く植物を模した紋章。
「これは……………………」
『それか?確か【暗月神】の紋章、【鍛冶神】の紋章、【太陽女神】の紋章、【錬金女神】の紋章、【大地母神】だったような…』
「ほぉ…」
【魔導機人族】の種族説明を見てみれば、想像するのはそんなに難しい事でもない。
…暫くその本を読んでいた。
―レイヴンとヴィントは外にいた。
「わぁ本当に飛んでるねぇ」
「……ふむ」
レイヴンの狼耳はまたピンと立っている。その耳が、ある音を捉えた。
「ヴィント、B182539」
「ほーい。人形さんに頼めばいいのかなー?」
ヴィントが呑気に返事を返した数瞬程後、全く予想してない方位から知らない声がした。
「敵の反応か?」
ギルド戦中、偵察を務めていたあの、明るい黄緑色の鋭い双眸と頬に目と同色の竜の爪痕をもつ、黒い軍服姿の精悍な青年の声だった。
「誰?」
「紹介が後れ、申し訳ない。我はクロハと言う者だ。ヒビキ殿に伝言か?」
「ああ。方向は特定できているだろうから言わないが、相当数の多い吸血鬼の群れが近くに来ていると伝えてくれ」
「承知した」
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