最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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9章「開かれた外交、狂気の戦場」

戦場・三日目 圧倒からの決着と、銀羽天翼人の登場

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―――三日目は、灰色ドラゴンは10匹に多数の機械兵、空には15体の灰色精霊と弓兵がいる。

戦闘開始直後に蝶を連れた闇霊たちがまたやる気満々でダッシュしていくのを見送り、ヒビキは【風華シルフィステア】を抜く。気負いのない様子でだらりと下げた銀の刀身には、烈風が渦を巻いている。

ちょうどこちらに駆けてくる黒馬に乗ったカースミストの騎兵がすぐ横を通り抜けるその瞬間、チャージしていた左手の刀で突きを放つ。突きは正確に相手の心臓部分を撃ち抜き、絶命させた。

次の瞬間、追いついてきたスコールと一緒に走り出す。

敵の真っただ中に飛び込み、風を手繰って宙へ飛びあがる。地上ではスコールが血晶の自動剣と双魔剣でどんどん兵を殲滅するのを後目に、そのまま滞空したままで魔法を撃ち大雑把に数を減らしていく。
ちらりと横下の方に視線を向けると、遠くの灰色ドラゴンを真っ向から蹂躙するカイの姿が見えた。カイは鍛冶師なので、素材狙いなのだろう。

「…………ん?」

ヒビキと丁度同じくらいの高度に、灰色精霊や飛行型機械兵とは違う人影を見つけた。



その人影は銀の羽が3対6枚あり、白い服を纏い金髪に碧眼の甘い美貌を持っていた。空の浮遊島に住む天翼族の亜種か?と当たりをつけると【解析アナリシス】が答えを出してくれた。当たりだったようだ。
そんな存在が最初に放った言葉はというと。

「あーあ、今回の賭けは失敗だよ。まさか異邦人の中に魔導機人が混じっているなんて、困ったなあ。僕の仕掛けかと疑られちゃうじゃあないか」

と。数秒してヒビキは察する。

「まさかお前ら、この戦争を意図的に起こしやがったのか?」
「そうそう。やっぱり察しがいいね。あんな狂信者どもの国、ちょっと唆せばこうなるんだから動かしやすいったらありゃしないよ。……むしろ君たちは僕らの退屈を潰すための玩具として神に近い僕たちに目をつけてもらえたんだから、感謝しなよ?」
「誰がするかよ。反吐が出る」
「そう?神宿りしていない魔導機人なんて、所詮死体を動かしただけの傀儡に過ぎないんだから君たちでも僕たちには勝てないよ?」

鋭い赤い目に殺気の光を強く輝かせ、ヒビキは臨戦態勢を取る。

「その傲慢発言に相応しいだけの力を備えているかどうか、見てやろうじゃねぇか」

―――刀術系戦技スキル【惑い裂く花】。

予備動作一切無しの惑うような無作為軌道からの縦横無尽な斬り。しかし大体半分以上は相手の近くに展開された見えない何かに防がれた。残り何割かは確実に切り傷を負わせており、幾筋かの血が流れているのが見える。

「……これは甘く見ていたかもしれないね。じゃ、僕もちょっと本気を出そうかな?」

そう言って持ち出してきたのは輝かしい銀の刃と金の装飾の施された剣。カーサスの地下墓で見覚えのある聖剣ものだった。

(ウォルニールの聖剣か。”神の怒り”に注意だな)

カーサスの地下墓の最奥、やや傾斜のついたフィールドの真ん中の台座に置かれた頭蓋聖杯に触れると黒い霧が湧き出、坂の奥の昏い深淵から馬鹿でかい骸骨王こと覇王ウォルニールが現れる。ウォルニールの聖剣とはその覇王がHP半減時から召喚してくる剣(の元の姿)だ。
…それは置いておいて、死体を動かしただけの傀儡、という表現には地味にカチンときたヒビキも少し手札を出すことにする。
【蒼穹】の中で神宿りに成功しているのはヒビキだけだ。ほぼ十中八九鍛冶神ヘパイストスであろう老鍛冶師と会ったカイも恐らく近々何かあるだろうが、今は出てきてもらうわけにもいくまい。

≪――お困りのようっスね。手を貸してあげましょうかっス?≫

刃を打ち合わせていると、不意にそんな声が頭に響いた。ちょっと口調が独特な、少女の声である。

(誰だ?)
≪――それは後でっス。とりあえずやつの背後を突くような形で風の弾を撃ち込んでみてほしいっス≫
(…応?)

とりあえず言われた通り手前にも集中しながら、右手で風を手繰って相手の背後から風弾を撃つ。すると。
ビリビリィイ!!と凄まじいスパーク音を散らし、見えない防御すら突き抜けてを伴って銀羽天翼人に炸裂した。

そんなものが命中したらどうなるか。「かはっ……!?」と驚愕交じりの喘鳴を残して、黒焦げ状態の5枚羽(1枚は完全に雷で焼け焦げ、落ちていった)と服と、闇に一部侵された体で墜落していった…かと思うと魔法陣がその下に開き、消えた。

≪――やったっスね!≫
(さっきの雷は?あとあなたが誰なのか教えてくれないか?)
≪――ああ、そうっスね。うちは風の大精霊っス。シルフって呼ばれてると言えば分かるっスよね?で、さっきの雷はうちがあんたの風を操る力を強化して”風を手繰った攻撃に雷を伴うように”したんっス。雷が黒かったのは恐らくあんたの性質っスね。銀羽のやつらに大事なうちの眷属たちを殺された上、うちの支配領域にまで土足で踏み込まれたんっス。奴らを滅するためならいくらでもうちは手を貸すっスよ≫
(それはありがたいな。さっきちょっと話しただけでも反吐が出る発言のオンパレードだった。痛めつけてやったから恐らく次は恨みを持ってくるだろうし、次の相手は銀羽のあいつらになるっぽいな)
≪――そうっスね。もう神々の中じゃあの銀羽のやつらに眷属を嬲り殺されたってことで、凄まじい憎悪を抱く神様方が結構いるっスよ。うちらの中じゃ他には炎、大地、氷、光、雷、闇の大精霊がやつらと因縁あるっスね≫
「そうか、結構やらかしてんだな」
≪――無論、争いを嫌い、友好的に接するやつもいるっスけど、極少数っスね。主流のやつらに弾圧されてしまったはずっスよ。…………もうあんたは目を付けられちゃったはずっスから、ちょっとうちから助言してやるっス。………ドラゴン族と古代人族の領域を訪れて、彼らの力も得てほしいっス。彼らにこれを見せれば、事情は察してくれるはずっス≫

空からキラキラと光を振りまきながら、何かが落ちてきた。下ではほとんど決着がつきかけていたが、落としたら大変なので慌てて受け止める。


精霊石・天風

世界で幅広く使われている風の精霊石の中でも、幻ともいわれる最高級のもの。地上の精霊鉱脈では絶対に見つからず、風の大精霊シルフより与えられないと手に入らないため、彼女と関わりがあるという何よりの証拠となる。無論素材としても超一級品で、風属性に関するあらゆる力を跳ね上げる。


手の中に納まったのは、つるりとした深い緑色の精霊石だった。石の中に風の紋章が明滅している。

「わかった」
≪――ではまたっス≫

それで声は途切れた。はっと我に返って地上へ降りる。



地上へ降り、目についた敵をばったばったと斬り倒しているうちにスコールが寄ってきた。

『ついさっき敵の奥が大騒ぎになっていたぞ。お前の友人が見事に決めたようだな』

エヴァンがどうやら敵の首魁をピンポイントで撃ち抜くのに成功したらしい。彼もヒビキたちと同じく風属性魔法と大弓・狩弓技、生産に鞭に蹴術・盗賊技能と実に多彩な技能を収めている。彼の場慣れした振る舞いは上位プレイヤーの中でもかなり上の方に位置する。

「ああじゃあ、あとは仕上げか」

もう相手も出すもの出し尽くしたようなので、残っていたドラゴンを掃討しにかかる。残るドラゴンは5体。空はほとんど連合軍側が掌握しきったようだ。

『―――giyaaaaaaaaaaaaa!!』

正気を失った咆哮が轟く。

『うるさいことだ』

スコールの血晶自動剣がひとりでに灰色ドラゴンに向かって飛んでいく。ドラゴンの体躯に飛び乗った本人は両手の双魔剣のうち、火の粉を散らす左手の剣をドラゴンの鱗の隙間に思いっきり突き立てた。
血晶自動剣もそれぞれ逆鱗の隙間など鱗の隙間に突き立っている。

―――炎属性魔法スキル【リミテッド・オーバーフレア】

剣の隙間から凄まじい炎が吹き上がる。ダメージリミットの存在しない魔法スキルシリーズのひとつであり、体内を超高温の魔炎で焼かれた灰色ドラゴンはひとたまりもなく砕け散った。
一方、ヒビキも別のドラゴンの方へ向かう。

『Gya!?』

気合を入れた速度で走っているため、ドラゴンはヒビキを視認できていない。赤い模様の入った黒いロングトレンチコートの裾を翻し、ドラゴンの顔面付近まで飛び上がり竜眼に刀をぶっすり突き立て、次の瞬間に引き抜いた。

『ggyaaaaaaaa!!』

潰された目から血を噴き流し、敵愾心を向けてくる灰色ドラゴンをヒビキは冷めた目で見返す。次の瞬間、刀で空に描き出された魔力紋章から凄まじい黒い雷が吐き出された。
ビリビリィイイ!!とスパーク音を散らし、灰色ドラゴンを容赦なく焼き尽くす。その隙にヒビキがトドメの一撃を繰り出した。

―――刀術系風属性複合スキル【居合・風斬】

キィン!と納刀状態から風で鋭さを増した一閃。大胆にもドラゴンの頸部をその一閃で刈り取った。
頸部と胴体が永久の別れを告げた次の瞬間、灰色ドラゴンが砕け散る。

その後は暫く切り結んでいると、灰色ドラゴンや灰色精霊に機械兵がすべて連合軍の手で倒されたことが知らされた。灰色ドラゴンも完全な無抵抗だったわけではなく序盤より魔力を込めた魔法弾などを撃ってきていたが、それらは悉くルキと精霊族の長の防御壁によって弾かれ、不発に終わった。
機械兵のビームは一番こちらに被害を与えていたものの、短い間隔で降ってくる水の神獣からの援護射撃でショートを起こし自壊に追い込まれていた。
やがて。

「退却、退却ー!」「だめだ、こいつらには敵わねぇ!」
「逃がすなー!」「ここで逃がしたらまた何をするかわからんぞ!!」

灰色ドラゴンと精霊、機械兵がすべて砕け散り、敵が逃げ腰になり始めた。それを連合軍が追っていく。厄介な存在さえいなくなれば、連合軍側が負ける道理はない。
もう何とかなるかと思い、仲間と合流することにした。



「で、後はもう何とかなるよな」
『だな』
「ふぅ、疲れた……」
「オレもちょっと疲れた…」
「うふふ、お二人ともお疲れ様」

アリスとルキは疲労感あらわに座り込んでいる。そんな二人の傍にはユリィがいた。そして遅れてカイが到着する。

「すみません、ちょっと遅れました」
「いや別にいいぞ」
「で、ヒビキ、後はもうなるがままになるだろうし、どうするの?」
「んー…褒賞があるなら貰ってから帰ろうか、あとは…」

ヒビキの言葉の途中で、メッセージウィンドウが開いた。


≪ダイレクトメッセージ≫
宛先:ヒビキ  送り元:ランシス
タイトル:【内密の話です】

ヒビキ殿、少々内密の話をしたいので、本部天幕の方まで来ていただけませんか?同行の血晶精霊の方も連れてきて下さい。


「すまねぇ、ちょっと呼ばれちまったから行ってくるわ。スコールも来てくれってよ」
『?』
「いってらっしゃーい」

アリスの返答とほぼ同時にヒビキは本部天幕の方へ向かう。
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