最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

文字の大きさ
81 / 120
9章「開かれた外交、狂気の戦場」

内密の話と、古代人族の集落へ

しおりを挟む
―――戦いが終わったということでポツンと残された本部天幕の中には、古代人族の長ランシスとドラゴン族の長がいた。

「いきなり呼び出してすみません。ちょっと話したいことがありまして……ヒビキ殿と交戦していたあの銀羽天翼人のことなのですが」
「あいつが?」
「部下の報告を受けて私自ら確認していましたが、確信がとれたのでドラゴン族の長とも連絡を取ってこちらにいていただいています」
「……話が早くないか?」
「それだけあの銀羽似非天使どもに煮え湯を飲まされてきたということですよ」
「そうか」
「………とりあえず銀羽似非天使どもについては後にして、先に話すべきことがありました。……ある火山地帯で発見された、”炎の神獣”ヴァ・ルーデニアのことです。濃密な蝕気に侵されており、ヒビキ殿の力を借りられたらと思っています。
もう一つ重要なのが、血晶を鍵とするらしいある異界への扉が発見されたということです。この世界と隣接するいくつかの異界があることは私たち古代人族は確信していますし、証拠も幾分かは取れています。しかし、実際見るのは初めてで……調査へ行きたいのです。
優先度としては異界の扉の方が上ですね。

もし承諾してくださるなら私たちの集落へ来ていただけないでしょうか?無論私が案内します」
「俺は力を貸すけどよ、スコールはどうだ?」
『………………』

スコールはやや躊躇い気味だ。暗い深海の様な青い瞳の奥に揺らめくのは……怯え、か?

『……………………………………』
「まさか、一回行ったことあるのか?」

スコールの瞳に浮かぶ怯えの色と、問いに対する肯定の頷きを擦り合わせて考えると躊躇う理由は容易に導き出すことができた。

「ああ、お前を排除するような輩がいたら俺がしっかりお仕置きしてやっから、心配すんなよ?」
『…………!』

頼もしさを感じさせる笑みを浮かべ、ヒビキが言い放つ。次にランシスが言った。

「私は受け入れるよう厳命したのですが、不埒な輩があなたを追放したようで……誠に申し訳ありません。ヒビキ殿も、スコール殿も、もしまたそんな輩がいれば死なない限り何をしても構いません。私の権限で許可します」
「そりゃあありがてぇ」

けらけらと愉快そうに笑うヒビキ。次にドラゴン族の長が口を開いた。

「こちらもだが、我らドラゴンのうち、エルダーブラックドラゴンの中の一体が”闇の神獣”ヴァ・ロードニアを見つけたと報告があった。我らでは蝕気に対抗できぬ。神獣内に満ちる蝕気に対抗できるものさえあれば、我らだけでもなんとか起動できるのだが」
「…ああなら、これどうぞ」

ドラゴン族の長の手に、アイテムカードの束を渡す。

「これは?」
「俺の仲間の鍛冶師が作った蝕気自動浄化の能力が付いたペンダントと、使うと数時間だけどんな濃い蝕気の中でも能力低下・精神汚染のペナルティが発生しないようにするアイテム。多分こんだけあればなんとかなるんじゃないか?」
「……ありがたい。我らはこれから部下に命じて奴らの残党を殲滅しに行く。そちらの件が終わればこちらの集落にも来てほしい。また頼みたいことがある」
「まあ、終われば、な」

そう言い残してドラゴン族の長は去っていった。

「承諾していただけますか?」
『…………ああ』

暫く躊躇っていたものの、スコールも肯定した。

「ありがとうございます。今から転移……でも構いませんか?」
「いいぜ」
『俺もだ』

承諾が取れたということで、早速転移の結晶石を使って転移を行うランシス。



――古代人族の集落は、ぱっと見どこか和風な雰囲気を醸し出す山間に作られた村だった。
茅葺き屋根と、漆喰を塗った白い木造の壁の家が並ぶ。見たところ宿屋と薬屋、道具屋・鍛冶屋と一通り冒険者としての行動に必要な施設は揃っているようだ。
随所に、涙を流す目を象った紋章が見て取れる。

転移したのは、そんな村の一番大きな家の前の、広場のような場所だった。

「とりあえずこちらへどうぞ」

案内されるがままに、一番大きな家へ立ち入る。そこの応接間らしき場所へ案内された。座布団を勧められたので座る。ランシスは何か仕事があるようで、「暫く待っていてください、この部屋のものは好きにして構いませんから」と言い残し、部屋を出て行った。

「…………なんだかんだ言って来てしまったな……」
『だな……』

二人で顔を見合わせていると、不意に僅かに眩暈を感じた。今までの経験からして、異界へ繋がる場所が近いのか?と当たりをつける。ふと思い出して《血に酔った狩人の瞳》を取り出し、水晶の中に閉じ込められた瞳孔の蕩け崩れた赤い瞳をよく見つめる。何回見ても不気味な瞳だ。

ギィィイイイ――ン……
「!?!?」
『どうした?』

蕩け崩れた暗い瞳孔が、激しく怪しい光を放つ。

頭を思い切り殴られたような痛みが生じる。

反射的に眼晶を取り落とし、こめかみを両手で抑えた。

「…………………っ!!」

何かに引きずられるような感覚。

脳裏に過るは、退廃した街を徘徊する獣と化した人間たち。

赤い瞳に各々の信念を宿し、武器を振るう狩人。

それを見下ろすは、青ざめた瞳の***。

この世界とは技術体系も魔法体系も全く違う、悪夢の世界。

≪………………………******!!≫

どこからか誰かの叫ぶ声が聞こえた。




≪タングラム≫

>【******】規定量超過が確認されました。
>種族:魔導機人 属性:血の月 の記憶深奥の一部が解禁されます。
>それに従い、異界線blublood001への転移が発生。従い、**が制限され条件が満たされるまで戻れません。
>制限は条件が満たされると解除されます。

……確認中……

>エラーが検出されました。同伴者1名が許可されます。
>繋がりのある狩人の系譜に連なる者にも転移が発生します。
>条件が満たされた時点で、報酬として「?????」が贈られます。

>健闘を祈ります







******
更なる力を得る試練。そしてまた強制的に巻き込まれるヒビキェ……。



***【システム異界線:nhy1btj867(真の深淵)】***

一対の世界蛇がまた顔を合わせている。
今回はその他に2体の世界蛇を離れた位置から見ている存在がいた。

――裁定神に掛け合って、報復霊たちの助けも得られるようにはなった。

――闇霊と報復霊は元々敵対関係なのにな、共通敵というのは面白いものだ。

――あああと、裁定神がこいつも連れてけと言ってたから今回連れてきたが、今の状態だとこの深淵に留めておかないとたちまち亡者化するな。心が無い。

――確かその者の心石を持っていた異邦人がいたような……また行ってみるか。

――そうしてくれ。俺はこれで精いっぱいだ。

――わかった。

一対の世界蛇の対話はまだ続くようだ。
一対の世界蛇が顔を突き合わせている場所から少し離れた場所に、真っ黒い巨大十字架がある。十字架には1体の使が、磔にされていた。心臓部分に突き刺さっている聖性を帯びた剣が、封印の効果を成している。
喪服のような黒い衣装を纏い、顔も黒いベールで完全に隠されている。普通の天使とは違い、一対の翼も闇を纏った灰色の翼だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ミックスブラッドオンライン・リメイク

マルルン
ファンタジー
 ある日、幼馴染の琴音に『大学進学資金』の獲得にと勧められたのは、何と懸賞金付きのVRMMOの限定サーバへの参加だった。名前は『ミックスブラッドオンライン』と言って、混血がテーマの一風変わったシステムのゲームらしい。賞金の額は3億円と破格だが、ゲーム内には癖の強い振るい落としイベント&エリアが満載らしい。  たかがゲームにそんな賞金を懸ける新社長も変わっているが、俺の目的はどちらかと言えば沸点の低い幼馴染のご機嫌取り。そんな俺たちを待ち構えるのは、架空世界で巻き起こる破天荒な冒険の数々だった――。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

処理中です...