最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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10章「狩人たちの見る夢」

ルドウイークの最期と、新しい同行者(?)

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―――――――――
ナニカ、見えた。

ノイズのかかったやけに生々しく鮮明な視界の中、そこは血塗れた大通り。

大通りには、獣たちの死骸に混じって揃いの官憲装束を纏った人間も多数血塗れ裂傷塗れで死んでいる。

そして、その中に立ち尽くす同じく血塗れの一人の人影。

骨が燃え尽きた後の灰の如き暗い絶妙な色の短髪と、同じ灰色の瞳。青い官憲装束を纏っている。

腰には銃と、ノコギリ鉈。

立ち尽くす人影は、突如座り込み、自らが倒した獣の内の1体を喰らい始める。

その様は血塗れ、自身の血と獲物の血、仲間の血が入り混じって見るも凄惨な凄まじい有様だ。

やがて、彼の瞳は、――――。

***

―――――
目を覚ます。何か見ていたような気もするが……あまりよくわからない。
気が付くとそこは灯り「悪夢の教会」の傍だった。隣にルクスも倒れている。

「……………そうか、死に戻ったんだったな」
「…………む…うぅ」
「お、起きたか」

身体的なデスペナルティなどは一切無い(この時点で随分優しい)ものの、持っていた血の遺志を失ってしまった。まあいいか、また集めれるしと思いつつ身を起こす。

「決着は…?」
「……………行って、みようぜ」

道をもう一度辿り、死体と血が溜まる大部屋へと向かう。
中央には紫の光が灯る灯りが現れており、2人は壁際で肩で息をしながら座り込んでいる。そして、灯りの傍に、頭部だけになったルドウイークが転がっていた。夜空のような絶妙な色合いの髪で隠れていた赤い瞳も、今は露になっている。

「……………………私を、殺しに来たのだろう?」
「っ!」

その表情は悲し気にも、申し訳なさそうにも見える。その赤い目は、聖歌隊の特殊な狩人装束を纏うルクスの方を向いていた。

「……そう、だ」
「…………だろうな。……………聖剣は好きに使うといい。お前のような者に使われるなら、本望だろう。……………これでやっと眠れる…………」

そう言い残して、目を閉じた。
ルクスが、変形前の銀聖剣をその眉間部分に一瞬で突き立てる。ゆっくりしないのは、少しでも痛みを感じないまま逝けるようにということだろう。



「…………」
「………………」
「……………………」
「……………………………」

もう二度と動かないルドウイークの遺体の前に、ルクスは止めを刺した銀剣を突き立てる。

「大丈夫、か?」
「……………………まあ…………な」

表情からは何も読み取れない。

「………月光の聖剣、どうします?」

壁際から静かに見ていたアカが、声を上げた。

「………………聖剣は持っていく。銀剣は……ここに置いていく」

ルクスが静かに言った。

「……そうか」

ヒビキも頷く。
その後暫くは2人が落ち着くまで、休むことにした。


≪ログ≫
灯り「地下死体溜まり」が解放されました。狩人の夢の「狩人の悪夢の墓石」とこの灯りとの転移ができるようになります。

***

―――――
どこかの建物の中が見える。

場所は狩人の悪夢ではなく、元の世界だ。片方は月光の聖剣を携えたルドウイークで、もう片方は大きなフードのついた教会装束を纏っている。フードに隠れて水色の瞳が時々ちらちらと見える以外口元しか見えないが、首には金のペンダントを下げていた。ルドウイークはその人物の来訪に応対しているところらしい。
その人物が口を開く。

――「別れの挨拶をしに来ました」

――「…でも、警句は忘れません」

―――――『『かねてより血を恐れたまえ』』

ルドウイークのものではない若い男の声と、最後明らかに男が言ったものではない誰のものとも知れぬ多重に重なった声が、聞こえた。

***

――――――――
目を覚ます。

そこは変わらず、血の海と死体の溜まる部屋だった。

「………………お目覚めですか?」

近くにいたアカが話しかけてくる。

「ああ、大丈夫なのか?」
「……………俺たちはもう、大丈夫です」
「…………………ああ」

しかしまだ何となく沈鬱とした感じがした。クロノも心配げに2人を見つめている。

「2人はこれからどうするんだ?」
「その話なんですが……」
「オレたち、これといって目的もねぇんだ……」

しゅん、といった様子で落ち込む2人。

「……そうか、ならついてくるか?」
「「!!」」

ヒビキがぼそりと言った。その鋭い赤い瞳からは何を考えているかは読めない。

「クロノ、いいよな?」

それを肯定するように、クロノも頷いた。

「少し考えさせてください…」

少しの沈黙の後、アカとルクスは2人で相談し始めた。一方ヒビキは、思考の海に一人静かに沈み込む。

(夢……にしてはやけに鮮明だったような気がしたが……誰の夢だ?)

軽く眠っていた時に見た酷く生々しい、血濡れた街道で獣を喰らう官憲装束の男の夢と、ルドウイークが応対していた医療教会の謎の若い男の夢。ヒントと言えば前者は官憲装束、後者は金のペンダントだ、が………!?

(青い官憲装束……官憲隊………金のペンダント、警句、…初代教区長……………!!?)

脳裏に鉄兜を被ったヴァルトールと、白い獣と成り果てた教区長エミーリアの姿が過る。いや、まさか、そんな、という言葉がぐるぐると脳内の思考の海に渦を生み出す。

(確か連盟長ヴァルトールは官憲隊の生き残り………なら、輸血を受けていない古狩人……!?フードを被った男は、金のペンダントの元の持ち主、初代教区長か!?)

幾つかの要素が、線で繋がる。上位者の輸血を受け獣と変じた者を喰えば、確かにそれは輸血を受けたのと同じ事になり適合できれば狩人と成れる。ルドウイークがまだ醜い獣化していない、その兆候も無い頃となればかなり昔の筈で、初代教区長が生きていたとしても不思議ではない。筋は通っている…。

「………ヒビキさん、ヒビキさん」
「…………お、おう!?なんだ?」
「俺たち、同行させていただくことになりました。無論普段は梟形態でいますが」
「おう、歓迎するぜ?」
「…ありがとうなっ……!!」

アカの呼びかけで強制的に思考の海から浮上し、同行を受け入れる。直後、2人がどこか安堵したような表情の後に後ろのもう二度と動かないルドウイークの遺体を一瞥してほんの一瞬寂しそうな表情を浮かべたのが、妙に忘れられなかった。

「…………」
「…(わあってるよ)………じゃ、湿っぽいのはここでお終いな!」

クロノの視線(実際には黒布で隠れている)を受けて、沈鬱な空気を振り払おうとパンパンと手を叩き言う。

「まあ、楽しもうぜ?」
「…………だな!」
「……ですね。いつまでも落ち込んではいられません!」

ルクスとアカの表情が元に戻ったのを見て、ヒビキも屈託ない笑顔を浮かべた。クロノもうんうんと頷いて微かに笑みを浮かべている。

「………………ありがとうございます」
「?なんか言ったか?」
「いえ、何でも」

アカがぼそりと言った台詞は、誰にも聞こえないままに周囲の血の香りの中に溶けた。



――――――――――…………???

4人が去ってほぼ直後の、「地下死体溜まり」の部屋。

灯りの紫の光の傍、銀聖剣が墓標代わりにすぐ前に突き立てられたルドウイークの遺体。

そこから、ぼんやりとした人影が滲むように現れた。人影は無論というか、ルドウイークである。

しかし、現れたのは彼1人ではなかった。虚空から滲むように、朧な人影が2人現れる。

処刑隊装束一式と車輪、長い鎌のような武器を装備した人物。

トップハットが特徴的な……ヒビキたちに助言を与える車椅子の狩人と同じ服装をし、長鎌を装備した人物。

処刑隊装備の人物が被っていたアルデオを外し、代わりにサークレットに近い精緻な金色の冠が現れる。

3人は座り込み、何事か楽し気な様子を交え話している。しかし、声が大気を振るわせることはない。

全員の赤い瞳からは既に生者の光は失われており、見る者見れば既に肉体を失った魂だけの者と分かるだろう。

不意に、処刑隊姿の人物がどこか遠くを見ながら言葉を発する。

―――情けない師ですまんな、***。お前に重い使命を背負わせることになってしまったが……赦してくれ…。

―――まあまあ、あまり悲観的になると毒だぞ。***なら大丈夫だろう。カインの血族もかなり少ないらしいし。

―――あと始祖狩人と呼べるのは、………ぐらいだな。相変わらずなようで何よりだが。

―――奴から獣狩りの意思を抜いたら何が残るんだ………

少々手酷い言葉に、他2人が乾いた笑いを浮かべる。……まだ3人の話のタネは尽きないようで、話は続いている。が、それは3人の間だけに通じることであった。

………ある者の言葉曰く、真にその遺志を継ぐ者でないならば、この光景に何も言わずそっとしておくべきなのかもしれないと。

彼らの話を邪魔する無粋な存在が入ることはなく、長い間が経って3人の人影はまた虚空に溶けるように消えた。
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