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10章「狩人たちの見る夢」
「ヤーナムの影」戦~別行動開始!
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――――――――目を覚ます。
鬱蒼とした森の隙間から月光が零れ地面を照らしている。眠っている間に何か見たような気がするが、おぼろげな姿しか思い出せない。相変わらず綺麗な水辺には蛍が舞っていて、薄ら寒い冷気で満たされている。
≪ログ≫
>特殊技能「??????」が解放されました。
>記憶技能「??????」が3人分解禁されました。
「おーい起きろー」
ぺちぺち。
頬を軽くたたいて他3人も起こす。むにゃむにゃ言いながらも少々時間はかかった(特にルクス)が、無事に全員起きた。まだむにゃむにゃ言っているルクスとため息をついているアカ、それをじっと見ているクロノは置いておいて、ヒビキは一人大砲があった先の建物と繋がるショートカットエレベーターを開けに向かった。ここを開けておかないと、もし負けた時にまたこの鬱蒼とした馬鹿広い森を抜けなくてはならない。
それだけは御免だ。面倒は嫌である。
「えーと、あったあった」
そつなく辿り着いたショートカットエレベーターの傍にあったレバーをガコンと引く。すると、がりがりがりがりと耳障りな音を立ててエレベーターが起動した。それを見届けてもと来た道を戻る。
風が何事か囁くように耳元を通り抜ける。
微かにエレベーターの穴からは水が流れる音が聞こえる。どうやらこの先は水路と水場があるらしい。あくまで勘でしかないが。
「先へ行けるみたいですね」
「…そうだな。ルクスはもう完全に起きたのか?」
「まあなんとか」
「ならいいが…」
いつの間にやらすぐ隣まで来ていたアカが言う。それに遅れてミミズク形態のルクスを頭の上に乗っけたクロノも来た。レバーを引いてまたエレベーターを呼び、しかしエレベーターは物凄く狭いので2人ずつ乗り、下へ降りる。
…
―――――エレベーターで降りた先は、両脇に細い水路が走るそこそこ広い道だった。その道には赤茶けた人食い豚が複数うろついている。人食い豚を各々の武器で薙ぎ倒しながら先へ進み、不穏な空気と勘に従って分かれ道を左へ降りる。と、如何にもなぼろぼろの門があった。その先が広場のようだ。
「………………………」
―――ギィィイイイイ………………
「……………!!」
黒い影が3つ、滲むように虚空から現れる。その3つの影は全く同時にこちらを認識し、攻撃動作に入る。
「行くぞ」
「ああ!」
「自分は…あっちに行きます」
「じゃあオレはこっちだな!」
影はそれぞれ、ぱっと見手に蝋燭、刀剣…までは分かるがあと1人の持ち物は分からない。アカは何も持っていないように見える影の方へ、ルクスは刀剣持ちの影の方へ行った。ヒビキが促すと、クロノはアカの援護に行った。
「俺はこっちか…………ぐあっ!?」
ヒビキは一人で蝋燭持ちの影の方へ向かう。蝋燭持ちはよく見ると刀剣も持っていた。がいきなり片手で掲げる蝋燭に息を吹きかけ、扇状の火炎放射を行う。完全に予想していなかったヒビキは咄嗟に腕を掲げ顔だけは防いだものの、途轍もない熱で炙られたわけで幾分かは装束の防御を突き抜け直接届く。
「うっ………こいつ!」
幸い左腕だったため右手の弓剣で斬りかかる。薄く変色し痛みが走る左腕を見て一瞬理性が外れかけたが、精神の深層から突き出された理性の手綱を掴む”彼”の腕の力でほぼ無理矢理立て直される。
それからは剣撃に合わせ銃撃パリィを狙う。
斬撃が、炎が、血が乾いたタイルに振り撒かれ、秘儀の発射音と武器の音と炎の音が狂気的な三重奏を奏でる。
よくよく見るとルクスは変形した月光の聖剣を左手に、変形していない銀剣の幻影を右手に持ち、自在に振るっている。ただ幻影の方は防御にしか回せないのか、そちらで攻撃する様子はない。
アカはアカで、展開する秘儀の弾数が明らかに増えている。ついでに威力も僅かに強化されているようで、着実にヤーナムの影(秘儀持ち)の体力を減らしていっている。
クロノはそれをサポートする方向に回っているが、振るっている月光の聖剣の剣撃の重さが上がっているような感じがする。
自分はというと、夢の人影が持っていた大鎌の幻影を出せるようになっていた。しかしまだ攻撃には使えないようなので、雑魚敵相手ならともかくここで出すのは躊躇われる。ルクスは二刀流ができるので何ら問題はないが、大鎌は両手で扱うものだ。
というわけでそのまま弓剣と銃槍で戦う。が、様子がおかしい。
―――バァン!!
「……………ぐっ!?」「……!」
一際大きく響く秘儀の爆発音。その後に続く2人分の地を擦る音。その原因に確信を持つ前に炎を纏う刀剣が目の前に迫った。咄嗟に後ろにローリングして躱す。
改めて目の前のヤーナムの影を見ると、いつの間にか蛇憑きよろしく大きな蛇が胸から突き出ている。その手には先ほどの炎を纏う剣と、蝋燭の燭台が握られている。他2体の影も同じく大蛇が胸を突き破って現れている。先ほどの秘儀の爆発音は、秘儀持ちの影が出したものだったのか。
「まだいけるか!?」
「ええ、行けます!」「…………!」
「ルクスは!?」
「おう、近くに寄ってればまだ戦えるぞ!」
幸い、ここにいる全員の装束は炎防御がそれなりに高い。炎に対して心配はいらないだろう。ただしルクスがこんなことを言った。
「こいつ腕伸びるから気を付けてくれ!」
「わかった!ルクスは大丈夫なのか?」
「オレは何とか躱せる!」
蛇のように腕を伸ばすタイミングに合わせて、右手の幻影銀剣でその蛇化した伸びる腕を防ぎ左手の聖剣で光波を飛ばして腕を斬ろうとしているようだ。何故か刀剣持ちヤーナムの影は攻撃一辺倒で防御を行わない。目の前の影に向き直ったヒビキは、まず炎を纏う剣を持つ手を斬り飛ばそうとチャンスを窺う。
蝋燭での火炎放射は背後に大きな隙が生じる。いつかの対ルドウイーク戦とは違い今度は背後に回り込むことが可能なため、左右に大きく動き火炎放射を誘い遠慮なく背後に回って斬りつける。ただしその手が通じたのは数回だけだった。流石に学習するか。ついでに先ほどから銃撃音が連続で響いているが、これはクロノがしているらしい。
その調子で目の前の蝋燭持ちヤーナムの影と戦っていると、唐突にルクスが乱入してきた。
「ルクス!刀剣持ちはやったのか!?」
「もうやったぜ!」
ちらりと彼が戦っていたはずの方を見ると、蛇と化した両腕を数回斬り飛ばされ、心臓部分をぐっさり突かれ、終いに胸から突き出た蛇部分を細切れにされてHPを枯渇させた刀剣持ちヤーナムの影の無残な血塗れ死体が転がっていた。案外容赦ないな、と認識を改める。
で、唐突に現れたルクスはというと瞬く間に炎を纏う剣を持っている側の腕を斬り落とした。当然注意はルクスに向く。がその前に無防備に開いた蛇の口に水銀矢を撃ち込んだ。血が流れ出し、蛇が叫び声をあげて噛みつこうとしてくる。無論そんなことをさせるはずもなく、地面を蹴り蛇の口を水銀矢で縫い留めてやる。
その隙をチャンスと見たか、ルクスが更に追撃を加えた。といっても武器ではない。《祭祀者の骨の刃》を取り出し深々と突き立てたのだ。緑の液体に濡れた骨の刃は問題なく効果を発揮し、認識を狂わされた蝋燭持ちのヤーナムの影は残った秘儀持ちの方に攻撃を向ける。それを察したアカとクロノが攻撃をやめ、4人で暫く同士討ちをちょっと離れて見物していると案の定というか、元々残HPの少なかった蝋燭持ちがHPを枯渇させ死体と化した。
「気を付けてください、こいつ鉄槌持ってますので」
「了解」
確かに最初秘儀だけかと思ったらもう片方の手に鉄槌を持っている。対処を考えながら銃撃をしようと銃槍を向けると、足元に気配の異変を感じた。隣のルクスの方を見ると、ルクスも警戒モードで足元を見ている。視線を秘儀持ちヤーナムの影に向けたまま、そこから離れるように大きく距離をとる。
「「離れろ!!!」」
2人で叫ぶ。はっとしたようにアカとクロノも攻撃をやめ、全力で距離を取る。………………予感は的中し、《マダラスの笛》で呼ばれる蛇より数倍大きな蛇が突き上げるように地面から勢いよく召喚された。幸い蛇は数秒で消えたが、あんなのに直撃を貰うと大ダメージも貰うのは目に見えている。影の残りHPも25%を切っている。さっさと決着をつけるが吉だ。
しかし、この炎秘儀を使う影、神秘属性が全く効かない。ならアカは何故秘儀を使っていたのかと訊くと、相手の秘儀と鉄槌に狙いを定めて相殺させていたらしく弾数が多かったお陰で威力で負けても補えたとか。その間にクロノの銃撃でHPを削っていたと。
「じゃ、オレは近づいて注意引くから」
「お、おい……」
ルクスは幻影銀剣と聖剣を両手に持ち近接戦に入る。クロノは引き続き隙間を狙い銃撃を叩き込む。アカは炎秘儀を撃ち落とすために《彼方への呼びかけ》を展開し、ヒビキは鉄槌を持っている手を狙い銃槍を構える。そこから先は可哀そうになるぐらい非常に一方的な展開で、程なく最後のヤーナムの影も倒れた。数回ほど大蛇を召喚してきており、その中1回だけルクスが距離を取り切れず巻き込まれたが死んではいない。
同時に黒カンテラが現れる。
≪ログ≫
灯り「禁域の墓」が解放されました。狩人の夢の「辺境の墓石」とこの灯りとの転移ができるようになります。
今回の戦いでは、全員《輸血液》を全く使っていない。証拠に、一番被弾の少ないクロノでもHPは6割ぐらい、アカとヒビキは半分を割り込んでいる。最後の大蛇召喚でダメージを喰らったルクスに至っては2割とほぼ瀕死状態。4人で笑いながら一旦狩人の夢に転移し、輸血液を複数使い全快させた。
「そういえばクロノ、聖堂街の古教会で変な光の塊みたいなの見なかったか?」
「………………(こくり)」
ただし、扉は開いていなかった。2人は今の今まで貯め込んでいた《狂人の智慧》を少しづつ使って、啓蒙とかいうのは聖堂街に着いた時点で40ある。そこからはまあいいかと保管箱に入れたままだ。
「ああ、あそこですか…………」
アカは何か知っているようだ。
「前1回それに捕まったことあったよな!ヒビキたちも行くか?」
ルクスが何でもないことのように言う。
「………ああ、今考えて何かに似てるなと思ったら、狩人の悪夢に行くのに捕まったブラックホールと同じやつだ。じゃあ、それに捕まったらまたどこかに転送されんのか?」
「口で言うより行った方が早いと思う!」
「それもそうか………そこで提案なんだが………」
ヒビキは別行動を提案する。自分はルクスを連れて廃城へ向かい、アカはクロノを連れてそのブラックホールを調べに行く。現状の4人行動でも問題はないが、廃城も気になるしブラックホールも気にかかる。
「………………別に構いませんが、何故その組み合わせで?」
「お節介だったなら済まんが………――――――」
「オレは大丈夫だぞ!」
「……………!」
方向音痴の気がある上一人で爆走しかけないルクスを、声で制止できないクロノと組み合わせるわけにはいかない。それにこの先万が一を考えて、互いに依存しているこの2人は1人づつでの行動にも慣れるべきだろう。
「じゃ、少しの間別行動な」
ヒビキはそういうと2人分の武器を修理しある程度強化を施して、その間に人形さんに装束の裂け目を繕ってもらい、それにルクスに消耗品を買ってもらいさっさとヘムウィックの墓地街へ向かう………がその前に使者から処刑隊の装束をある程度買い(一応だ)、聖堂街のある場所に向かうことにする。彼に招待状を渡さなくては。
血の香りを含んだ乾いた空気に乗って、どこかまだ遠くから自分の知らない、恐らく死んでいるであろう人々の怨嗟のうねりが仄かに聞こえてくる。
夜空にぽっかりと浮かんだ黄色い月が、無感情にそれを見下ろしていた。
【拾ったアイテム】
・血石の二欠片
・狂人の智慧×3
・カレル文字「左回りの変態」Lv1
・鋭い血晶石【3】
・カレル文字「散りゆく湖」Lv1
・カレル文字「右回りの変態」Lv1
鬱蒼とした森の隙間から月光が零れ地面を照らしている。眠っている間に何か見たような気がするが、おぼろげな姿しか思い出せない。相変わらず綺麗な水辺には蛍が舞っていて、薄ら寒い冷気で満たされている。
≪ログ≫
>特殊技能「??????」が解放されました。
>記憶技能「??????」が3人分解禁されました。
「おーい起きろー」
ぺちぺち。
頬を軽くたたいて他3人も起こす。むにゃむにゃ言いながらも少々時間はかかった(特にルクス)が、無事に全員起きた。まだむにゃむにゃ言っているルクスとため息をついているアカ、それをじっと見ているクロノは置いておいて、ヒビキは一人大砲があった先の建物と繋がるショートカットエレベーターを開けに向かった。ここを開けておかないと、もし負けた時にまたこの鬱蒼とした馬鹿広い森を抜けなくてはならない。
それだけは御免だ。面倒は嫌である。
「えーと、あったあった」
そつなく辿り着いたショートカットエレベーターの傍にあったレバーをガコンと引く。すると、がりがりがりがりと耳障りな音を立ててエレベーターが起動した。それを見届けてもと来た道を戻る。
風が何事か囁くように耳元を通り抜ける。
微かにエレベーターの穴からは水が流れる音が聞こえる。どうやらこの先は水路と水場があるらしい。あくまで勘でしかないが。
「先へ行けるみたいですね」
「…そうだな。ルクスはもう完全に起きたのか?」
「まあなんとか」
「ならいいが…」
いつの間にやらすぐ隣まで来ていたアカが言う。それに遅れてミミズク形態のルクスを頭の上に乗っけたクロノも来た。レバーを引いてまたエレベーターを呼び、しかしエレベーターは物凄く狭いので2人ずつ乗り、下へ降りる。
…
―――――エレベーターで降りた先は、両脇に細い水路が走るそこそこ広い道だった。その道には赤茶けた人食い豚が複数うろついている。人食い豚を各々の武器で薙ぎ倒しながら先へ進み、不穏な空気と勘に従って分かれ道を左へ降りる。と、如何にもなぼろぼろの門があった。その先が広場のようだ。
「………………………」
―――ギィィイイイイ………………
「……………!!」
黒い影が3つ、滲むように虚空から現れる。その3つの影は全く同時にこちらを認識し、攻撃動作に入る。
「行くぞ」
「ああ!」
「自分は…あっちに行きます」
「じゃあオレはこっちだな!」
影はそれぞれ、ぱっと見手に蝋燭、刀剣…までは分かるがあと1人の持ち物は分からない。アカは何も持っていないように見える影の方へ、ルクスは刀剣持ちの影の方へ行った。ヒビキが促すと、クロノはアカの援護に行った。
「俺はこっちか…………ぐあっ!?」
ヒビキは一人で蝋燭持ちの影の方へ向かう。蝋燭持ちはよく見ると刀剣も持っていた。がいきなり片手で掲げる蝋燭に息を吹きかけ、扇状の火炎放射を行う。完全に予想していなかったヒビキは咄嗟に腕を掲げ顔だけは防いだものの、途轍もない熱で炙られたわけで幾分かは装束の防御を突き抜け直接届く。
「うっ………こいつ!」
幸い左腕だったため右手の弓剣で斬りかかる。薄く変色し痛みが走る左腕を見て一瞬理性が外れかけたが、精神の深層から突き出された理性の手綱を掴む”彼”の腕の力でほぼ無理矢理立て直される。
それからは剣撃に合わせ銃撃パリィを狙う。
斬撃が、炎が、血が乾いたタイルに振り撒かれ、秘儀の発射音と武器の音と炎の音が狂気的な三重奏を奏でる。
よくよく見るとルクスは変形した月光の聖剣を左手に、変形していない銀剣の幻影を右手に持ち、自在に振るっている。ただ幻影の方は防御にしか回せないのか、そちらで攻撃する様子はない。
アカはアカで、展開する秘儀の弾数が明らかに増えている。ついでに威力も僅かに強化されているようで、着実にヤーナムの影(秘儀持ち)の体力を減らしていっている。
クロノはそれをサポートする方向に回っているが、振るっている月光の聖剣の剣撃の重さが上がっているような感じがする。
自分はというと、夢の人影が持っていた大鎌の幻影を出せるようになっていた。しかしまだ攻撃には使えないようなので、雑魚敵相手ならともかくここで出すのは躊躇われる。ルクスは二刀流ができるので何ら問題はないが、大鎌は両手で扱うものだ。
というわけでそのまま弓剣と銃槍で戦う。が、様子がおかしい。
―――バァン!!
「……………ぐっ!?」「……!」
一際大きく響く秘儀の爆発音。その後に続く2人分の地を擦る音。その原因に確信を持つ前に炎を纏う刀剣が目の前に迫った。咄嗟に後ろにローリングして躱す。
改めて目の前のヤーナムの影を見ると、いつの間にか蛇憑きよろしく大きな蛇が胸から突き出ている。その手には先ほどの炎を纏う剣と、蝋燭の燭台が握られている。他2体の影も同じく大蛇が胸を突き破って現れている。先ほどの秘儀の爆発音は、秘儀持ちの影が出したものだったのか。
「まだいけるか!?」
「ええ、行けます!」「…………!」
「ルクスは!?」
「おう、近くに寄ってればまだ戦えるぞ!」
幸い、ここにいる全員の装束は炎防御がそれなりに高い。炎に対して心配はいらないだろう。ただしルクスがこんなことを言った。
「こいつ腕伸びるから気を付けてくれ!」
「わかった!ルクスは大丈夫なのか?」
「オレは何とか躱せる!」
蛇のように腕を伸ばすタイミングに合わせて、右手の幻影銀剣でその蛇化した伸びる腕を防ぎ左手の聖剣で光波を飛ばして腕を斬ろうとしているようだ。何故か刀剣持ちヤーナムの影は攻撃一辺倒で防御を行わない。目の前の影に向き直ったヒビキは、まず炎を纏う剣を持つ手を斬り飛ばそうとチャンスを窺う。
蝋燭での火炎放射は背後に大きな隙が生じる。いつかの対ルドウイーク戦とは違い今度は背後に回り込むことが可能なため、左右に大きく動き火炎放射を誘い遠慮なく背後に回って斬りつける。ただしその手が通じたのは数回だけだった。流石に学習するか。ついでに先ほどから銃撃音が連続で響いているが、これはクロノがしているらしい。
その調子で目の前の蝋燭持ちヤーナムの影と戦っていると、唐突にルクスが乱入してきた。
「ルクス!刀剣持ちはやったのか!?」
「もうやったぜ!」
ちらりと彼が戦っていたはずの方を見ると、蛇と化した両腕を数回斬り飛ばされ、心臓部分をぐっさり突かれ、終いに胸から突き出た蛇部分を細切れにされてHPを枯渇させた刀剣持ちヤーナムの影の無残な血塗れ死体が転がっていた。案外容赦ないな、と認識を改める。
で、唐突に現れたルクスはというと瞬く間に炎を纏う剣を持っている側の腕を斬り落とした。当然注意はルクスに向く。がその前に無防備に開いた蛇の口に水銀矢を撃ち込んだ。血が流れ出し、蛇が叫び声をあげて噛みつこうとしてくる。無論そんなことをさせるはずもなく、地面を蹴り蛇の口を水銀矢で縫い留めてやる。
その隙をチャンスと見たか、ルクスが更に追撃を加えた。といっても武器ではない。《祭祀者の骨の刃》を取り出し深々と突き立てたのだ。緑の液体に濡れた骨の刃は問題なく効果を発揮し、認識を狂わされた蝋燭持ちのヤーナムの影は残った秘儀持ちの方に攻撃を向ける。それを察したアカとクロノが攻撃をやめ、4人で暫く同士討ちをちょっと離れて見物していると案の定というか、元々残HPの少なかった蝋燭持ちがHPを枯渇させ死体と化した。
「気を付けてください、こいつ鉄槌持ってますので」
「了解」
確かに最初秘儀だけかと思ったらもう片方の手に鉄槌を持っている。対処を考えながら銃撃をしようと銃槍を向けると、足元に気配の異変を感じた。隣のルクスの方を見ると、ルクスも警戒モードで足元を見ている。視線を秘儀持ちヤーナムの影に向けたまま、そこから離れるように大きく距離をとる。
「「離れろ!!!」」
2人で叫ぶ。はっとしたようにアカとクロノも攻撃をやめ、全力で距離を取る。………………予感は的中し、《マダラスの笛》で呼ばれる蛇より数倍大きな蛇が突き上げるように地面から勢いよく召喚された。幸い蛇は数秒で消えたが、あんなのに直撃を貰うと大ダメージも貰うのは目に見えている。影の残りHPも25%を切っている。さっさと決着をつけるが吉だ。
しかし、この炎秘儀を使う影、神秘属性が全く効かない。ならアカは何故秘儀を使っていたのかと訊くと、相手の秘儀と鉄槌に狙いを定めて相殺させていたらしく弾数が多かったお陰で威力で負けても補えたとか。その間にクロノの銃撃でHPを削っていたと。
「じゃ、オレは近づいて注意引くから」
「お、おい……」
ルクスは幻影銀剣と聖剣を両手に持ち近接戦に入る。クロノは引き続き隙間を狙い銃撃を叩き込む。アカは炎秘儀を撃ち落とすために《彼方への呼びかけ》を展開し、ヒビキは鉄槌を持っている手を狙い銃槍を構える。そこから先は可哀そうになるぐらい非常に一方的な展開で、程なく最後のヤーナムの影も倒れた。数回ほど大蛇を召喚してきており、その中1回だけルクスが距離を取り切れず巻き込まれたが死んではいない。
同時に黒カンテラが現れる。
≪ログ≫
灯り「禁域の墓」が解放されました。狩人の夢の「辺境の墓石」とこの灯りとの転移ができるようになります。
今回の戦いでは、全員《輸血液》を全く使っていない。証拠に、一番被弾の少ないクロノでもHPは6割ぐらい、アカとヒビキは半分を割り込んでいる。最後の大蛇召喚でダメージを喰らったルクスに至っては2割とほぼ瀕死状態。4人で笑いながら一旦狩人の夢に転移し、輸血液を複数使い全快させた。
「そういえばクロノ、聖堂街の古教会で変な光の塊みたいなの見なかったか?」
「………………(こくり)」
ただし、扉は開いていなかった。2人は今の今まで貯め込んでいた《狂人の智慧》を少しづつ使って、啓蒙とかいうのは聖堂街に着いた時点で40ある。そこからはまあいいかと保管箱に入れたままだ。
「ああ、あそこですか…………」
アカは何か知っているようだ。
「前1回それに捕まったことあったよな!ヒビキたちも行くか?」
ルクスが何でもないことのように言う。
「………ああ、今考えて何かに似てるなと思ったら、狩人の悪夢に行くのに捕まったブラックホールと同じやつだ。じゃあ、それに捕まったらまたどこかに転送されんのか?」
「口で言うより行った方が早いと思う!」
「それもそうか………そこで提案なんだが………」
ヒビキは別行動を提案する。自分はルクスを連れて廃城へ向かい、アカはクロノを連れてそのブラックホールを調べに行く。現状の4人行動でも問題はないが、廃城も気になるしブラックホールも気にかかる。
「………………別に構いませんが、何故その組み合わせで?」
「お節介だったなら済まんが………――――――」
「オレは大丈夫だぞ!」
「……………!」
方向音痴の気がある上一人で爆走しかけないルクスを、声で制止できないクロノと組み合わせるわけにはいかない。それにこの先万が一を考えて、互いに依存しているこの2人は1人づつでの行動にも慣れるべきだろう。
「じゃ、少しの間別行動な」
ヒビキはそういうと2人分の武器を修理しある程度強化を施して、その間に人形さんに装束の裂け目を繕ってもらい、それにルクスに消耗品を買ってもらいさっさとヘムウィックの墓地街へ向かう………がその前に使者から処刑隊の装束をある程度買い(一応だ)、聖堂街のある場所に向かうことにする。彼に招待状を渡さなくては。
血の香りを含んだ乾いた空気に乗って、どこかまだ遠くから自分の知らない、恐らく死んでいるであろう人々の怨嗟のうねりが仄かに聞こえてくる。
夜空にぽっかりと浮かんだ黄色い月が、無感情にそれを見下ろしていた。
【拾ったアイテム】
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・狂人の智慧×3
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