愛して愛して愛して愛してる人

綾瑪東暢

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片思い

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 「私があいつ追い払ってやったんだから感謝してよね。」
 先に走っていたはずなのに、いつの間にか木にぶら下がっていた女性に追いつかれた。
 「それより、君は誰なんだ?神瀬かみせとどういう関係なの?」
 「神瀬かみせ直也なおやとは何の関係もない。私は白白はくはくの下っ端なんだ。」
 ドヤ顔で羨ましいだろという目線を送ってくる。
 「その白白って誰?」
 女性の足が止まる。
 「白白を知らない?」
 「えーっと」
 はやては考える。
 「もしかして、白斗はくとくんのこと?」
 「なんだ、知ってるんじゃん」
 
 女性は、急にルンルンになる。
 「えっ・・・」

 颯はなんだこの人という表情になった。






 「お前のせいで帰るのに時間かかってしまった。」
 「そりゃあ俺のせいかもだけどさ。なんかもっと別の言い方あると思うんだけど」
 「なに?私が君に『君は何も悪くない。悪いのは全てわ、た、し。私が上手くやっていたらこんなに時間はかからなかった』って言って欲しいの?」
 すごく嫌な鳥肌がたった。
 「言わないでくれてありがたいよ。」
 「でしょ。」
 「さっさと、インターホン押したら?」
 
 急に緊張してきた。長い時間離れていたわけじゃないのに。

 インターホンを押す。
 「はーい」
 中から白斗の声がした。
 「八重やえです。」
 「今開けるね。」


 ガチャと共に白斗が顔を出す。
 「いらっしゃい。どうぞ。委御すお。お迎えありがとう。」
 「白白の願いならいつでも行くよー・・疲れた~入れて!」
 「お疲れ様。あずさがお菓子作ってるよ。」
 「わーいわーい!」

 委御と呼ばれた女性は家の中に走っていく。
 「直也が待ってるよ。」
 「お邪魔します。」


 


 「久しぶり。八重。」
 「神瀬・・久しぶり。」
 「貴方が、八重颯さんなんですね。」
 キッチンから手を拭きながら出てきた女性。
 「改めまして、白鳥しらとり梓です。」
 「よろしくお願いします。」
 「はい、よろしくお願いします。」
 空いてる椅子に座る。
 「そんな時間経ってないのに、八重。変わったな。」
 「そうかな。まぁ確かに。あの頃は本当に子供だったから。神瀬はあんま変わらないね。」

 白斗を膝に乗っけて、クッションのように抱きしめている。
 「恥ずかしいからおろしてよ。」
 「無理ー」
 白斗はため息をつきつつも満更でもないように見える。
 「ねぇ、神瀬直也。そいつをここに呼んだ本題は?」
 梓の作ったお菓子を1人ボロボロと食べている委御が言う。
 「後もう1人くる予定なんだ。」
 「智寧ともねさんがくるんだ。」
 「智寧が?」
 梓も驚いている。
 「聞いてなかったの?」
 やばっと白斗は口を抑える。
 「サプライズだったら盛大に驚いて梓。」
 「任せて。」

 「弘人ひろとのお姉さんが・・」
 「緊張しなくて平気だよ。」
 「お、おう・・」

 梓が入れたお茶に口をつける。心の中で(落ち着け落ち着け)と呟く。
 
 そんなに経たずにインターホンの音がする。
 「はーい」
 白斗が直也の膝から降りて、玄関に向かう。
 「お邪魔します。」
 白斗と楽しそうに入ってくる智寧。八重は立ち上がってお辞儀をする。
 「初めまして。」
 「初めまして。七宮智寧です。」
 「八重颯です。」

 直也がソファからどき、智寧が座る。
 「八重くん。ずっと弘人のこと思ってくれてありがとう。」
 「いえ・・」
 照れ臭くて、後頭部を掻く。
 「弘人が男学校を私が女学校を卒業した後、1ヶ月・・数週間は一緒に暮らしていたんだ。でも、弘人が自分で自分のことはするって言って出ていっちゃったんだ。それからあんまり連絡取れてなかったんだ。弘人の気持ち、わからなくもない。弘人が出ていく前に私達の親が家に来たんだ。私の親は簡単に言うと毒親でさ。そんな親から離れたかったんだと思う。でもまさか、友人にまで連絡してなかったのは知らなかった。」
 智寧が言う『友人』という言葉に胸がズキっと痛んだ。
 「・・・俺も、弘人に連絡できなかったので・・。もっと早くすればよかったって今は思います。」

 智寧は手を叩く。
 「ごめんね。気分を下げるようなこと言って。これを渡したかったんだ。」
 智寧は紙を颯に渡す。
 「これ、弘人の新しい連絡先。渡してって言われたから。」
 「あ、ありがとうございます。」
 紙をぐちゃぐちゃにならないように抱きしめた。
 「・・身内に聞かれたくないかもだけど、八重くんって弘人のこと。」
 颯はゆっくり、頷いた。
 「弘人をよろしくね。」
 「はい。ありがとうございます。」



 「2人とも。夕飯食べていくでしょ。」
 「食べていきたい。」
 「私もいただこうかな。久しぶりに梓ちゃんとご飯食べたい。」
 智寧は腕をまくる。
 「俺も何か手伝おうか?」
 「平気だよ。直也と世間話でもしてて。」

 白斗と梓、智寧はキッチンに、直也がソファに座り、委御が小さい椅子に座る。
 「八重。」
 「な、なに?」
 「いつから、僕から俺にしたんだ?」
 「卒業して、子供っぽい自分が嫌になったから形から入ろうと思って。」
 直也は唸る。
 「いつか、白斗も俺になっちまうのかな。僕って言ってる白斗が可愛いのにっ。」
 「白白。たまに俺って言う練習してるよ。かっわいいっーキュンキュンしちゃうね。」
 直也は目を隠す。
 「ちょっと見たいっ。ひゃー、僕を使ってる白斗もいいが、俺って使ってる白斗も見てみたいっ!」
 「俺が俺って言ってるの平気?」
 「あぁ。今の八重にはぴったりだ。あの頃とは違い、イケメンだよ。俺のタイプじゃないけど。」
 「神瀬に言われると自信がつくよ。」
 
 じーっとこちらを見てくる委御。
 「なに?」
 「なんでヒロヒロが好きなの?」
 「・・・一目惚れかな。」
 「八重の話は聞いたことがなかったから興味ある。」















 
 俺と弘人が初めて会ったのは、中学2年生。パートナーを決めるためにいろんな学年を見て回っていた。
 「僕のドタイプなイケメンいないかな。」

 僕は、自分に自信があったし、それを裏付ける人望もあった。パートナーになりたいという男はたくさんいた。でも、みんな僕の好きな顔ではなかった。

 3組だった僕は、接点のない6組に顔を出してみたんだ。流石にクラスが離れすぎていて僕のことを知っている人は少なかった。

 クラスの中に、僕の好きな顔をしている人は誰もいなくて、帰ろうとした時

 「ねぇ、君。八重颯くんでしょ」
 と声をかけられた。そいつは全然タイプじゃなかったから、
 「誰?邪魔。離して。」
 
 この時の僕は、可愛い子供だったから、ある程度のイケメンには力で敵わず強引にトイレまで連れて来られてしまった。

 「やめてっ」
 「いいだろ。」
 
 パートナー、子供作りは自分の好きな人とやりたいとずっと思っていたからこんな形で襲われたくない。でも、力では敵わなかった。

 (襲われるってこんな気持ちなんだ・・・)
 諦めていた時、

 「こんな朝っぱらからなに盛ってるんだ。」

 男の手が止まったんだ。その時の声が弘人だった。
 「おっ!いいところに弘人もやろうぜー。」
 「俺はいいや。それよりお前、前に無理矢理はやらないとか言ってなかった?どう考えてもこれは無理矢理じゃないか?」
 その言葉に、男は僕から手を離す。
 「わ、わりわり。」
 「俺からもこいつが悪かったな。大丈夫か?」
 その場に座り込んでしまった僕に手を差し出してくれた。
 「・・あ、あり・・・ありがとう。」
 
 弘人の顔をちゃんと見たら、胸がギューっとなった。
 (いや、いやいや。なになにこれ。違う違う違う。違うよね。えっ、なにこの胸の違和感。)

 「もしかして、トラウマに?」
 「!!ほんと、わりっ・・」
 男が手を合わせる。
 「・・あっ・・」
 「って!俺はトイレに来たんだよ。漏れる。ごめん。もうこいつに襲われるなよ。」
 弘人はトイレに駆け込んでいく。僕は握られた手を胸に抱きしめた。
 













 「俺ってチョロいよね・・今思い出すと恥ずいわ。」
 「助けられたから好きになったのね。いいじゃん。」
 委御は足を組んで頬杖をつく。
 「あぁ・・私も白白と一緒になりたいー」
 「絶対渡さんから。」
 「白白~。直直に飽きたら私と付き合おう!!」
 
 キッチンに向かって言う。話を聞いていないから白斗は苦笑いをしながら

 「そうだなぁ・・直也が別の男か女を好きになったら委御と付き合おうかな。」
 「なっ!白斗!俺は俺は白斗だけだからな!」

 直也の必死の叫びにみんなが笑う。

 (いいなぁ・・俺もこんな風に笑い合える関係になりたい。)
 
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