越えられない壁で僕らの幸せは・・・(黒凪の話)

綾瑪東暢

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恋焦がれる

胸がムカムカする

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 「おい!何も言わずに出ていくつもりか?」

 下が騒がしい。お父様に蹴られた頬をさすりながら、階段を降り一階を覗く。
 「・・・れい兄?」
 
 小声で名前を呼ぶ。聞こえてはないと思うが、黧兄がこっちを見た。
 「じゃあな。凪。元気で」
と言うから。お父様もこっちを見る。黧兄はお父様の言葉には一切反応せず家を出た。お父様は舌打ちをする。
 「どいつもこいつも・・凪。まだ蹴られたか?視界からいなくなれ」
 お父様の言葉に返事をせず、上にあがる。


 部屋に入って壁を殴った。
 「くそっ!」


 「凪さん。」
 母親の声がした。
 「なに?」
 「時咲とさ様が来ています。」
 「わかった。行く。」
 
 それ以上の会話をせずに、母親が階段を降りる音がする。
 お父様もだが、母親に対してもものすごく苛つく。あいつが絶対正しいと疑わない。あいつらはまだ、昔の考えのまま。男は働いて女は、家事をする。いつになったら今の時代に合わせるんだ。
 「・・・くっそ・・もうこんな家嫌だ」

 
 
 僕は、下に降りる。
 「凪様。」
 母親が、入れなかったのか玄関で待っていた。
 「何してるんだ?」
 「彩目あやめ様に凪様が来るまで入ってはいけないと言われまして。待っていました。」
 
 こんな短気だったか?時咲にまでムカッとしてしまう。イライラする。どうして、僕の周りの人間は自分で判断することができないのか。女とか男とか、いつまで縛られてるんだ。
 「凪様?」
 「今日はどうした?学校が休みなんだから芽鶴ちづる様と過ごせばいいだろ。」
 「姉さんは、かおる様とお出かけに行ってます。」

 時咲が少し寂しそうな顔をする。

 「部屋に来い。」
 「は、はい。」
 僕は、時咲に背を向け、また階段を登った。
 「おい。」
 「はっ」
 「飲み物を2つ持っけきてくれ。」
 「わかりました。」
 使いがシュッとでてシュッと消える。

 二人で部屋にいる。

 「凪様。頬、どうしたんですか?」

 時咲が僕の頬に触れようとする。
 「触るなっ」
 時咲の手を払ってしまった。
 「・・わ、悪い」
 「す、すみません。・・ですが、手当したほうが」
 「気にするな。」

 窓の方を見る。今、時咲がどんな表情をしているのかわからない。物音が聞こえる。

 急に時咲の両手がほっぺを挟む。無理矢理、時咲の方を向かされた。
 「と、とさ?」
 「手当しますよ。」
 こんな強引な時咲は初めてだ。
 「な、何なんだ・・」
 手を離され、救急箱を開けている時咲に叫ぶ。
 「将来、当主になる身。傷があってはいけません。」
 アルコールを綿に染み込ませ、傷に当てる。
 「ッ」

 
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