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11話 森の一族
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「これは、村か?」
俺たちの眼前には木造の家々が立ち並んでいる。
森の中にありながら、この空間だけは木が生えておらず、人為的に作られた場所であることを窺わせる。
「怖いよ……シグルズ……」
ヒルダは目をギュッと瞑って、俺の首に回している腕に力を込めてくる。
オバケが嫌いなヒルダにとっては、この空間も恐怖に感じるのだろう。
なぜなら、家々はボロボロに崩れており、ゴーストタウンのような雰囲気を漂わせているのだ。
ただ、普通に考えれば、村人たちがこの村を離れた結果、村が寂れてしまっただけだと推測できる。
魔物による被害が世界中で出ているため、村が廃れることも珍しくはない。
それに、家の壊れ方も自然に壊れたというよりも何者かに破壊されたような惨状だ。
おそらくこの村は魔物におそわれたのだろう。
ということは、先ほど俺たちを追い掛け回した声の正体は……。
「ねえ、ここを離れよう? ね?」
「そうは言ってもな、もう一度森に入っても、また声に追い掛けられるかもしれないぞ?」
「それは、ヤダ……。でも、ここもヤダよ……」
「今日はここで休もう、ヒルダ。嫌なのは分かるけど、休まないと体力が持たないからさ。俺が護るから、な?」
「……うん。でも傍にいてね?」
「任せろ!」
俺はヒルダを抱きかかえたまま村を歩いている。
なるべく綺麗な建物で休もうと考えたのだが、ほとんどの家がひどい状態で泊まるのは難しそうだ。
少し触れば崩れ落ちてしまうかもしれない。
それほどまでにひどい惨状だ。
いったいこの村に何があったというのだろうか。
しばらく村を見て歩くと、一番大きな家が幸い形を保っていた。
家の大きさなどから考えるに、村長か村の権力者の建物だろう。
ここなら建物が崩れる心配もなさそうだ。
「ヒルダ、この家を少し借りようか。ここなら休めそうだ」
「シグルズに任せるわ……」
任せると言っているヒルダは、もはや目を開けていない。
村を歩き始めてからずっとこの調子だ。
怖がりなのは知ってたけど、ここまでとは思わなかったな。
さっそく家の扉に近づいていくと、ガチャッと扉が開いた。
俺は扉に触れていないぞ!?
俺はヒルダを抱えているし、まさか何者かが待ち構えているなんて思いもしなかった。
完全に油断していた。
今からでは武器を構えることも間に合わない。
やられる。
そう悟った時、家からのそっと男が出てきた。
「誰だ、お前たちは? ここはカップルで来るようなところじゃないぞ? もし、略奪が目的だとしたら見ての通りこの村には何もない。残念だったな」
俺たちに声を掛けてきた男は20代~30代といったところだろうか。
かなり若い見た目をしている。
そして、俺たちに対してまったく敵意を感じない。
すでに諦めてしまっているのだろうか。
「ち、違います。俺たちは盗賊とかそんなんじゃなくて、偶然この村に来たんです」
「こんなところに偶然来るものかねえ?」
「それは、霊峰ワーガルドに行こうと思ったら迷ってしまって……」
「お前たち、霊峰に行こうとしたのか? へえ~、いつぶりだ? 霊峰に行きたいなんてやつは! 話しを聞かせてくれ。さっ、中に入って!」
男性は霊峰の名を出した途端に急にテンションが上がり、先ほどまで魂が抜けたような顔をしていたのが、今ではニコッとした笑顔をしている。
せっかく招き入れてくれたのだ、お言葉に甘えることにしよう。
もし何か怪しい素振りをしたとしても、すぐに対処できるよう気を抜かないようにしなければ。
「ヒルダ、抱っこもここまでだ。大丈夫だよ、オバケはいないからさ」
「分かった……ありがとね、シグルズ」
ゆっくりとヒルダを下ろすと、男性が開けてくれている扉をくぐり家に入る。
家の中は家の外装と同様に、それほどダメージを受けていないようだ。
ただ、あまり生活感が無いようにも感じられる。
大きい家だし、もし彼一人で住んでいるのならおかしいことではないのかもしれないけど。
「こっちだ!」
男性は俺たちを連れて家の中を歩くと、リビングのような部屋に辿り着いた。
そして、ソファを指し示して、座りなよ、と俺たちに促すと、自分は奥から椅子を持ってきてソファの前に座る。
俺とヒルダも彼に続くようにソファへと腰を下ろす。
フカフカとしていて座り心地の良いソファだ。
「それで、君たちは霊峰に何の用があるんだい?」
「霊峰の方向に竜が飛んで行くのを見たんです。だから、その竜を追って来ました」
「竜? 君たちはドラゴンスレイヤーというやつかい?」
「違います! 竜と戦いたいというわけじゃなくて、ただもっと近くで見てみたいなと思ったんです」
「竜に魅了されたわけか。確かに竜ってやつはカッコいいからな。分かるぜその気持ち」
男性はグッと親指を立てて同意を示してくれる。
自分の気持ちを理解してくれると、素直に嬉しいものだ。
「あの、良ければお名前を伺っても?」
「おお、そう言えば名前名乗ってなかったな! すまんすまん! 誰かと話すのも久しぶりだからさ。俺の名前はガイだ!」
「ガイさんですね! 俺はシグルズです。こっちはヒルダ」
「どうも」
自己紹介を終えた俺とヒルダとガイさんは、その後世間話やお互いの少し踏み込んだ話などをした。
その結果分かったことは、この村の人たちは昔から霊峰への旅人を案内することを生業としていたこと。
そして、魔物の襲撃で全員死んでしまったということ。
「俺は、村人を殺したあの魔物を許さない。それに、あの魔物は俺の恋人を連れて行ったんだ! 必ず復讐してやる!」
「ガイさん……」
「悪いな、こんな話し聞かせちまって。復讐したいと言っておきながら、未だにできずにいるんだ。魔物の居場所は分かっているというのに。笑えるよな、こんな腰抜け」
「そんなことありません! もし良ければ俺たちに協力させてください!」
「いいのか?」
「はい! こんな話し聞かされて放っておくことなんて出来ませんよ!」
「悪いな、シグルズ。その言葉に甘えさせてもらうよ。ヒルダちゃんもそれで大丈夫かい? それとも、この家で俺たちが帰るのを待ってるか?」
「私も行きます。相手がオバケじゃないなら力を発揮できますから」
「ありがとう。それじゃあ、明日出発しようと思うが、それでいいか?」
「はい」
偶然森の中の村で出会ったガイさん。
彼の話しを聞いてどうしても放っておけなくなった俺は、復讐に手を貸すことにした。
出発は明日だ。
今日はしっかり体を休めなきゃな。
こうして一夜が過ぎていくのだった。
俺たちの眼前には木造の家々が立ち並んでいる。
森の中にありながら、この空間だけは木が生えておらず、人為的に作られた場所であることを窺わせる。
「怖いよ……シグルズ……」
ヒルダは目をギュッと瞑って、俺の首に回している腕に力を込めてくる。
オバケが嫌いなヒルダにとっては、この空間も恐怖に感じるのだろう。
なぜなら、家々はボロボロに崩れており、ゴーストタウンのような雰囲気を漂わせているのだ。
ただ、普通に考えれば、村人たちがこの村を離れた結果、村が寂れてしまっただけだと推測できる。
魔物による被害が世界中で出ているため、村が廃れることも珍しくはない。
それに、家の壊れ方も自然に壊れたというよりも何者かに破壊されたような惨状だ。
おそらくこの村は魔物におそわれたのだろう。
ということは、先ほど俺たちを追い掛け回した声の正体は……。
「ねえ、ここを離れよう? ね?」
「そうは言ってもな、もう一度森に入っても、また声に追い掛けられるかもしれないぞ?」
「それは、ヤダ……。でも、ここもヤダよ……」
「今日はここで休もう、ヒルダ。嫌なのは分かるけど、休まないと体力が持たないからさ。俺が護るから、な?」
「……うん。でも傍にいてね?」
「任せろ!」
俺はヒルダを抱きかかえたまま村を歩いている。
なるべく綺麗な建物で休もうと考えたのだが、ほとんどの家がひどい状態で泊まるのは難しそうだ。
少し触れば崩れ落ちてしまうかもしれない。
それほどまでにひどい惨状だ。
いったいこの村に何があったというのだろうか。
しばらく村を見て歩くと、一番大きな家が幸い形を保っていた。
家の大きさなどから考えるに、村長か村の権力者の建物だろう。
ここなら建物が崩れる心配もなさそうだ。
「ヒルダ、この家を少し借りようか。ここなら休めそうだ」
「シグルズに任せるわ……」
任せると言っているヒルダは、もはや目を開けていない。
村を歩き始めてからずっとこの調子だ。
怖がりなのは知ってたけど、ここまでとは思わなかったな。
さっそく家の扉に近づいていくと、ガチャッと扉が開いた。
俺は扉に触れていないぞ!?
俺はヒルダを抱えているし、まさか何者かが待ち構えているなんて思いもしなかった。
完全に油断していた。
今からでは武器を構えることも間に合わない。
やられる。
そう悟った時、家からのそっと男が出てきた。
「誰だ、お前たちは? ここはカップルで来るようなところじゃないぞ? もし、略奪が目的だとしたら見ての通りこの村には何もない。残念だったな」
俺たちに声を掛けてきた男は20代~30代といったところだろうか。
かなり若い見た目をしている。
そして、俺たちに対してまったく敵意を感じない。
すでに諦めてしまっているのだろうか。
「ち、違います。俺たちは盗賊とかそんなんじゃなくて、偶然この村に来たんです」
「こんなところに偶然来るものかねえ?」
「それは、霊峰ワーガルドに行こうと思ったら迷ってしまって……」
「お前たち、霊峰に行こうとしたのか? へえ~、いつぶりだ? 霊峰に行きたいなんてやつは! 話しを聞かせてくれ。さっ、中に入って!」
男性は霊峰の名を出した途端に急にテンションが上がり、先ほどまで魂が抜けたような顔をしていたのが、今ではニコッとした笑顔をしている。
せっかく招き入れてくれたのだ、お言葉に甘えることにしよう。
もし何か怪しい素振りをしたとしても、すぐに対処できるよう気を抜かないようにしなければ。
「ヒルダ、抱っこもここまでだ。大丈夫だよ、オバケはいないからさ」
「分かった……ありがとね、シグルズ」
ゆっくりとヒルダを下ろすと、男性が開けてくれている扉をくぐり家に入る。
家の中は家の外装と同様に、それほどダメージを受けていないようだ。
ただ、あまり生活感が無いようにも感じられる。
大きい家だし、もし彼一人で住んでいるのならおかしいことではないのかもしれないけど。
「こっちだ!」
男性は俺たちを連れて家の中を歩くと、リビングのような部屋に辿り着いた。
そして、ソファを指し示して、座りなよ、と俺たちに促すと、自分は奥から椅子を持ってきてソファの前に座る。
俺とヒルダも彼に続くようにソファへと腰を下ろす。
フカフカとしていて座り心地の良いソファだ。
「それで、君たちは霊峰に何の用があるんだい?」
「霊峰の方向に竜が飛んで行くのを見たんです。だから、その竜を追って来ました」
「竜? 君たちはドラゴンスレイヤーというやつかい?」
「違います! 竜と戦いたいというわけじゃなくて、ただもっと近くで見てみたいなと思ったんです」
「竜に魅了されたわけか。確かに竜ってやつはカッコいいからな。分かるぜその気持ち」
男性はグッと親指を立てて同意を示してくれる。
自分の気持ちを理解してくれると、素直に嬉しいものだ。
「あの、良ければお名前を伺っても?」
「おお、そう言えば名前名乗ってなかったな! すまんすまん! 誰かと話すのも久しぶりだからさ。俺の名前はガイだ!」
「ガイさんですね! 俺はシグルズです。こっちはヒルダ」
「どうも」
自己紹介を終えた俺とヒルダとガイさんは、その後世間話やお互いの少し踏み込んだ話などをした。
その結果分かったことは、この村の人たちは昔から霊峰への旅人を案内することを生業としていたこと。
そして、魔物の襲撃で全員死んでしまったということ。
「俺は、村人を殺したあの魔物を許さない。それに、あの魔物は俺の恋人を連れて行ったんだ! 必ず復讐してやる!」
「ガイさん……」
「悪いな、こんな話し聞かせちまって。復讐したいと言っておきながら、未だにできずにいるんだ。魔物の居場所は分かっているというのに。笑えるよな、こんな腰抜け」
「そんなことありません! もし良ければ俺たちに協力させてください!」
「いいのか?」
「はい! こんな話し聞かされて放っておくことなんて出来ませんよ!」
「悪いな、シグルズ。その言葉に甘えさせてもらうよ。ヒルダちゃんもそれで大丈夫かい? それとも、この家で俺たちが帰るのを待ってるか?」
「私も行きます。相手がオバケじゃないなら力を発揮できますから」
「ありがとう。それじゃあ、明日出発しようと思うが、それでいいか?」
「はい」
偶然森の中の村で出会ったガイさん。
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