将来有望だった俺は騎士団を追放された、だからカワイイ幼馴染と共に冒険者として人生を歩むことにしよう

Tea

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18話 幼き戦士

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 竜が魔物へと変貌を遂げる。
 そんなことが本当に起こり得るのだろうか。
 いや、純白の竜の言葉を考えると、何も魔物へと姿を変えるのは竜だけではなさそうだ。
 まるで、条件さえ揃えばどんな生物でも魔物になる可能性があると言っているかに思える。

 そのとき脳裏には先日受けた依頼が浮かんでいた。
 猪に似た魔物。
 まさかな……。

「魔物になるってどういうことだよ!?」
『言葉通りの意味だ。どうやら、我の体は魔瘴を受け入れている。我の意思とは関係なくな』
「そんな……。でもよぉ、じゃあ今まで何してたんだよ! 魔王を倒しにでも行ってたのか?」
『魔王は強い。魔王の前では我など矮小な存在だろう』
「それじゃあ何を……」
『殺してもらおうと思ったのだ。同胞に』
「なっ……!?」
『我は魔物などという存在に身を堕すつもりはない。竜としての誇りを持ったまま死にたいのだ。だからこそ、この地を離れていた。一言断りを入れておくべきだったな。我自身心が乱れておったゆえ、そこまで頭が回らなかったのだ』
「でも、それじゃ、何で今ここに帰ってきたんだ……?」
『哀しいことだよ。命を絶ってもらおうと出かけたにも関わらず、我が同胞を手にかけてきたのだ。同胞は我よりも末期の状態であった。だから介錯した。供養し次の同胞を訪れる。そこでも手にかける。そして、次、次、と行っているうちに我も限界を迎えてしまった』

 純白の竜は悲しげに語っている。
 同胞も魔瘴に侵されていたのだ。
 そして何頭もの同胞を手にかけた挙句、自分だけが死ぬことを許されなかった。
 竜というのは魔瘴に体を侵されやすいのだろう。
 竜という生命力に溢れた存在だからこそ、死なずに魔物に変貌してしまうのかもしれない。
 人間では魔瘴の負荷に体が耐えられないということなのかもしれないな。

『お前たち三人に、我の介錯を頼みたい』
「え!?」
「私たちも、ですか?」
『そうだ。ここで逢ったのも運命なのだろう。こちらの一方的な要求で申し訳ないが、このままでは我は人間に仇なす存在になってしまう。手遅れになる前に、頼む』

 まさか、竜に魅了されてこの場所に赴いたというのに、命を奪うことになるだなんて考えもしなかった。
 いや、俺にできるのだろうか。
 自我もしっかりしていて対話もできる竜を殺すことなど。

 別に自我が無ければ何も思わず殺せるという訳ではない。
 これでも、生物を殺すことには抵抗は覚えるものだ。
 だから今まで、魔物は悪だと思い込むことで何とかやってきた。
 だが、今眼前にいるのは魔物ではない。
 そして敵でもないのだ。

「あの、死ぬ以外に何とかする方法はないんですか?」
『あればその方法を実行しているさ。もしかすると、探せばあるかもしれない。だが、そんな時間はないんだよ』

 死ぬことを竜自身が望んでいる。
 それは理解しているけど、足踏みしてしまう。
 助かる方法はある、何ていう言葉が口をつく。
 これは、偽善なんだろうな。
 本心では自分の保身しか考えていないのに、あたかも相手を思いやるような言葉を述べてしまうのだ。
 こんな上辺だけの言葉、誰も望んでいないのに。

「大丈夫だ。俺が息の根を止めて楽にしてやる」

 そう宣言したのはフレットだ。
 今の彼からは怒りや憎しみといった感情は感じられない。
 ただ純粋に竜の望みを叶えようとしているのだ。

『やはり、そなたは一族の血を引いているようだな。実に頼もしい』
「一族とか関係ねぇ。これは俺自身がやりたいことだ」
『そうか。そなたに渡すものがある』

 竜はそう言うと、祭壇を示し、フレットにそこへ行くように指示した。
 竜の指示通り祭壇の前に立ったフレットは次の指示を待っている。

『…………』

 竜は俺には聞き取れない呪文のようなものを唱えている。
 詠唱が終わると、祭壇にかけられていた封印が解除されたようだ。

『開けてみるが良い』

 石でできた祭壇にはものを保管するという役割があったようだ。
 フレットが祭壇の天板をグッと押すと、ガガガと重そうな音を立てながらズレていく。
 そしてフレットは手を差し入れて中にあったものを力を込めながら取り出した。

「スゲェ……」

 彼の手には一振りの大剣が握られていた。
 まだまだ、彼の身の丈には大きすぎるそれは、一目でかなりの業物であることが分かる。
 そうとうな力を秘めた大剣だろう。

『まだその剣を扱うには幼いだろう。だが、いずれその剣を自由自在に振るう日が来ることを願っているよ。その姿を我が目にすることはないがな』



 これは世界に稀代の大剣使いが生まれる瞬間である。
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