世界に光をもたらすのは奴隷の猫娘と最強の女冒険者でした

Tea

文字の大きさ
4 / 16

4話 対話

しおりを挟む
 オークション終了後、私はいきなりご主人様に抱きしめられている。
 正直これは予想してなかった。
 痛いことをされるより遥かにましだし、そこまで嫌じゃないんだけど、こういう場合はどうしておくのが良いのだろうか。







 ギュー

 猫ちゃんのあまりの可愛さに思わず抱きしめてしまった。
 オークションでは思わず大声を出してしまったり、急に抱きしめたり、どうやら私は思考の許容量を超えると考えることを止め行動してしまうタイプの人間だったようだ。
 今更自分の性格を知ることになってしまった。

 そんなことよりも、猫ちゃんの体はとても柔らかくてポカポカしてる。
 これは変な趣味に目覚めてしまうかもしれない。
 とは言えあまり長くこうしているわけにもいかないだろう。

「コホン。えーっと、取り敢えず私が泊ってる宿に行こうか。」
「……」

 名残惜しいけど猫ちゃんから離れて、宿に行こうと提案したんだけど完全に無視されている。
 どうやらこれはファーストコンタクトを誤ってしまった可能性が高い。
 いきなり抱きしめるなんて、私のバカ。
 これはこの先、前途多難だな……。







 いきなり抱きしめられたかと思えば、今度は宿に行こうと提案された。
 まだ日中なのに。
 やっぱりご主人様はそういう趣味なんだ。
 そういうことがしたいんだ。
 私にだってそういう知識はあるし、人の性癖を否定するつもりはないけど、正直逃げ出したい。
 申し訳ないけど私にそんな趣味はない。
 と言うかなぜ私なんだ。
 他にも女の子はいるし、私は人間でもないのに。
 もしかしてご主人様は人間以外がいいの……?
 様々な憶測が脳内を巡る。
 けど、抱きしめられた時のことを思い出すと不思議と不快だとは思わなかった。
 むしろ安心感を感じた。
 酷い生活が続いていたから人肌恋しくなっていたのだろうか?

 私が思案しているとご主人様が話し掛けてきた。

「いきなり抱きしめてごめんね……そういえば、自己紹介もまだしてなかったよね。私の名前はソレイユ! よろしくね!」

 私の新しいご主人様はソレイユという名前らしい。
 ニコニコした笑顔を思い出しながら、ピッタリな名前だなと思った。
 こういう感情が出てくるということは、私は彼女のことを嫌悪したりはしていないみたいだ、今のところは。

 …………

 私とご主人様の間に沈黙が流れる。

「……あの、名前聞いてもいい?」

 どうやら私が名乗るのを待っていたみたいだ。
 最近まともに会話してなかったからか、会話の流れを読むのが難しい。

「……シナア」

 私が名乗ると、

「シナアちゃんっていうのね! カワイイ名前! 似合ってるわ!」

 ご主人様は私の名前を知れたことが嬉しいのか顔をほころばせている。
 何だか憎めない人だな。
 それが私の彼女への印象だった。







 その後、微妙な距離感の二人はソレイユが宿泊している宿屋へ向かって歩き始めた。
 シナアにとっては、しばらく滞在していたこの街もキチンと見て回るのは初めてのことで辺りをキョロキョロと見回しながら歩いている。
 その様子を微笑ましそうにソレイユは眺めている。
 結局、二人は夕方までマーケットで時間を潰した。
 マーケットではソレイユがシナアに似合う服を見繕った。
 いままで着ていた服はボロボロで服とも言い難い布切れだったが、新調した服に身を包むとガラっと雰囲気が変わって見える。
 可愛らしい年ごろの女の子だ。

 その後、シナアとソレイユは宿屋兼ご飯屋に帰ってきた。
 相変わらず微妙な距離感のまま。

 グウゥゥ

 お店に近づくとシナアのお腹が鳴った。
 夕食どきになり美味しそうな匂いが漂っているのだ、無理もないだろう。
 一日一食というひもじい生活を強制されていたのだ、この美味しそうな匂いの誘惑には耐えられないだろう。
 空腹そうなシナアを見たソレイユは部屋に帰る前に食事を取ることにした。

「シナアちゃん! 好きなの注文していいからね!」

 ファーストコンタクトをしくじったソレイユは、シナアの胃袋を掴み仲良くなろうと考えているようだ。
 果たしてその思惑は上手くいくのだろうか?
 
 言われた通り好きなものを注文していくシナア。
 運ばれて来たご飯を美味しそうに胃に収めていく。
 パクパクとご飯を食べる女の子。
 なんとも微笑ましい光景である。

 しかし、その光景を眺めるソレイユは徐々に顔が青ざめていく。
 抑圧されていた獣人の食欲を舐めていたのだ。
 机の上には空になったお皿が山のように積みあがっていく。
 店内にいるお客や店員もシナアの見事な食べっぷりに驚きを隠せないようで、視線が集まり見世物のようになっている。

「シナアちゃん……無理して食べなくていいからね! お腹いっぱいになったら止めていいからね!」
「……まだ食べられる。」

 もはやソレイユには凍り付いた笑顔を向けることしかできなかった。

 食事を終え、二人は部屋へと引き上げていった。

 部屋に入るや否や、

「シナアちゃん。これからのことについて相談なんだけど……さっきの晩ご飯代で私の全財産が底を突いちゃったの。このままじゃ明日の朝ご飯も食べられないわ。」
「それは困る。ご飯食べたい。」
「そうよね! 私も困るもの! なので、明日、シナアちゃんには冒険者ギルドに登録してもらおうと思います!」
「冒険者ギルドって何? ご主人様。」
「簡単に言うと仕事をくれるところよ! そこで仕事を探して、達成して、お金をもらうの!」
「わかった、ご主人様。期待に応えられるよう頑張る。」
「理解してくれてありがとうシナアちゃん。本当なら私が養ってあげれればいいんだけど。」
「だいじょーぶ。 ご主人様。」
「お金が貯まったら、故郷に送り届けてあげるからね! 約束するわ! あとね、私のことはソレイユって呼んで欲しいな! 奴隷と主人の関係じゃなくてシナアちゃんと友達になりたいの!」

 ソレイユの言葉に対して、シナアはこくりと頷き理解を示した。
 
 その後、二人は他愛無い会話を交わし夜が更けていった。

 ソレイユとシナアが心から友達になれる日は来るのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

処理中です...