30 / 101
そのにじゅうきゅう
バレてはいけない
しおりを挟む
なんだ、意外に夢中じゃんとゲームの真っ最中であるノーチェに対し、キリルは冷やかし始める。昼休みの最中、珍しくラスも一緒なのでノーチェは更にご機嫌だった。
四人固まって一ヶ所に集まり、各々昼ご飯をとっている。ラスが教室内に留まる理由は、体育の授業中に足を挫いたからだった。
あらかじめリシェから強引にアカウントを聞き出した通話アプリ内にて今日は屋上に行けない旨のメッセージを送り、寂しいかどうかを聞き出そうとするが全く返事は無い。
既読はついているのに。
リシェはマメに返事をするタイプではないのは分かっていたが、たまには反応が欲しい。かと言って、あの変わり者の彼の兄の時のように変なスタンプを連打されるのも嫌だった。
「レベル上げ手伝ってやろっか?」
ニヤニヤしつつ、ネカマプレイをフルに楽しむ『♬マミマミ♬』ことベルンハルドは自分の携帯電話を取り出した。
しかしノーチェは拒否する。
「いいよぉ。俺、のんびりやるのが合ってるしさ。それにお前のキャラと一緒に居たら変な奴ら寄ってきそう」
「何だよ、一緒に居れば俺の取り巻きからアイテム沢山貰えるぞ」
「その思考が既に怖ぇよ…」
ベルンハルドの乞食思考な言葉にキリルは呆れた。
「でもお前、ひたすらチャットしてねぇか?フレ居るの?」
指の動きを見ながらベルンハルドはノーチェに問う。
「うん。ゲームやっててもチャットしかしてないんだ」
「へぇ…まあ、会話だけでも楽しめるしな。どんな奴よ?」
「外見は可愛いな。でも中身男みたいだ、俺って言ってるし」
三人の会話を聞きながら、ラスはリシェからの返事を待ち続けていた。彼がどこかで変な奴に絡まれていないか、それだけが心配で仕方ない。
足の怪我さえ無ければすぐにでもリシェの近くに駆け寄って優しく抱き締めてあげられるのに。
「はあ…」
ラスは頭をかくりと下げた。
ノーチェはそれを見て、むうっと頬を膨らませる。
「ラス」
「ん?」
「そんなにあの一年の奴に会いたい訳ぇ?あんな生意気な性格で顔だけの奴にさあ」
生意気な顔だけの奴。否定は出来ないかもしれないが、きつい言い方に少しだけカチンとしつつ「そりゃ」としょげる。
「先輩、ああ見えて変な奴に絡まれやすいし」
「そこまで絡まれやすいならあしらうのも慣れてるでしょ?心配し過ぎだよ」
心配症だなあ、とノーチェはゲームの画面に再び目を向けた。キリルとベルンハルドも彼のゲーム画面を覗き込む。
チャットで会話をしている最中、キリルはそういやさとノーチェに話を切り出した。
「ユーザーネーム何よ?」
「んっ?」
どうやら画面には名前が確認出来ないらしく、ふと疑問を感じたようだ。ノーチェは適当に名前付けたからなあと恥ずかしそうに頭を掻く。
捨て垢みたいな名前にしちゃったよ、と。
ラスは仲間の様子を見ながら、自分の携帯電話の画面とも睨めっこしていた。
「そんなに変な名前かよ?俺なんておっさん受け狙ったような名前にしたのに」
「だよな、マミマミ」
さらりとディスるキリルに、ベルンハルドは「名前言うなよ!!」と怒りだした。
理由は単にネカマプレイをしているのを知られたくないかららしい。もしかしたらクラス内にも存在するかもしれない。
ゲームアイテムを他のプレイヤーから貢がせていると知られたら大変だ。炎上するに違いない。
「バレたら怖いんだから!」
「いや、絶対バレるわ」
「俺はいいんだよ、とりあえず!ノーチェのアカウント名教えろって」
もう、とノーチェは困った表情を二人に向けた後、恥ずかしそうに名前を呟いた。
「肉食の赤フン」
「何その名前、キモいな」
肉食の赤フン。
…赤フン!?
その名前を耳にして頭の中で理解した瞬間、ラスは「はあっ!?」と体を起こしガタリと椅子から立ち上がった。三人はわっ、と声を上げてこちらを見る。
ノーチェはラスに「な、何?」と困惑した。いきなり勝手に驚かれ、何事かと動揺してしまう。
ラスは冷や汗がじっとりと湧いてくるのを感じた。
リシェから聞いたチャット内の赤フンとの会話の内容と微妙にリンクしているなとは思っていたが、まさかこんなに近い場所で赤フンと遭遇していたとは。
しかも彼が唯一嫌っているリシェとは知らずにゲーム内で仲良く会話しているなんて。
俺、赤フンとは仲良くなれそうな気がすると言っていたリシェの嬉しそうな顔を思い出した。
だが現実の世界では、彼は一方的に敵視してくるノーチェと仲が良い訳では無い。むしろ逆だ。
こんな偶然があるとは誰が思うだろう。
「どした、ラス?」
動揺するラスに、キリルは不思議そうに問いかけた。
「あ…あぅう、な、何でも無い…」
ラスは再び椅子にへたり込むようにして着席した。
これは実際お互いの正体を知れば大変こじれてしまうのではないかと危惧する。ネットでは仲が良いのに、リアルでは仲良く無い相手同士だなんて誰が予想出来ただろう。
…内緒にしなければ。
先輩とノーチェのゲーム内の平和の為に。
絶対知られてはいけないぞ…とラスは謎の使命感に燃え始めていた。
四人固まって一ヶ所に集まり、各々昼ご飯をとっている。ラスが教室内に留まる理由は、体育の授業中に足を挫いたからだった。
あらかじめリシェから強引にアカウントを聞き出した通話アプリ内にて今日は屋上に行けない旨のメッセージを送り、寂しいかどうかを聞き出そうとするが全く返事は無い。
既読はついているのに。
リシェはマメに返事をするタイプではないのは分かっていたが、たまには反応が欲しい。かと言って、あの変わり者の彼の兄の時のように変なスタンプを連打されるのも嫌だった。
「レベル上げ手伝ってやろっか?」
ニヤニヤしつつ、ネカマプレイをフルに楽しむ『♬マミマミ♬』ことベルンハルドは自分の携帯電話を取り出した。
しかしノーチェは拒否する。
「いいよぉ。俺、のんびりやるのが合ってるしさ。それにお前のキャラと一緒に居たら変な奴ら寄ってきそう」
「何だよ、一緒に居れば俺の取り巻きからアイテム沢山貰えるぞ」
「その思考が既に怖ぇよ…」
ベルンハルドの乞食思考な言葉にキリルは呆れた。
「でもお前、ひたすらチャットしてねぇか?フレ居るの?」
指の動きを見ながらベルンハルドはノーチェに問う。
「うん。ゲームやっててもチャットしかしてないんだ」
「へぇ…まあ、会話だけでも楽しめるしな。どんな奴よ?」
「外見は可愛いな。でも中身男みたいだ、俺って言ってるし」
三人の会話を聞きながら、ラスはリシェからの返事を待ち続けていた。彼がどこかで変な奴に絡まれていないか、それだけが心配で仕方ない。
足の怪我さえ無ければすぐにでもリシェの近くに駆け寄って優しく抱き締めてあげられるのに。
「はあ…」
ラスは頭をかくりと下げた。
ノーチェはそれを見て、むうっと頬を膨らませる。
「ラス」
「ん?」
「そんなにあの一年の奴に会いたい訳ぇ?あんな生意気な性格で顔だけの奴にさあ」
生意気な顔だけの奴。否定は出来ないかもしれないが、きつい言い方に少しだけカチンとしつつ「そりゃ」としょげる。
「先輩、ああ見えて変な奴に絡まれやすいし」
「そこまで絡まれやすいならあしらうのも慣れてるでしょ?心配し過ぎだよ」
心配症だなあ、とノーチェはゲームの画面に再び目を向けた。キリルとベルンハルドも彼のゲーム画面を覗き込む。
チャットで会話をしている最中、キリルはそういやさとノーチェに話を切り出した。
「ユーザーネーム何よ?」
「んっ?」
どうやら画面には名前が確認出来ないらしく、ふと疑問を感じたようだ。ノーチェは適当に名前付けたからなあと恥ずかしそうに頭を掻く。
捨て垢みたいな名前にしちゃったよ、と。
ラスは仲間の様子を見ながら、自分の携帯電話の画面とも睨めっこしていた。
「そんなに変な名前かよ?俺なんておっさん受け狙ったような名前にしたのに」
「だよな、マミマミ」
さらりとディスるキリルに、ベルンハルドは「名前言うなよ!!」と怒りだした。
理由は単にネカマプレイをしているのを知られたくないかららしい。もしかしたらクラス内にも存在するかもしれない。
ゲームアイテムを他のプレイヤーから貢がせていると知られたら大変だ。炎上するに違いない。
「バレたら怖いんだから!」
「いや、絶対バレるわ」
「俺はいいんだよ、とりあえず!ノーチェのアカウント名教えろって」
もう、とノーチェは困った表情を二人に向けた後、恥ずかしそうに名前を呟いた。
「肉食の赤フン」
「何その名前、キモいな」
肉食の赤フン。
…赤フン!?
その名前を耳にして頭の中で理解した瞬間、ラスは「はあっ!?」と体を起こしガタリと椅子から立ち上がった。三人はわっ、と声を上げてこちらを見る。
ノーチェはラスに「な、何?」と困惑した。いきなり勝手に驚かれ、何事かと動揺してしまう。
ラスは冷や汗がじっとりと湧いてくるのを感じた。
リシェから聞いたチャット内の赤フンとの会話の内容と微妙にリンクしているなとは思っていたが、まさかこんなに近い場所で赤フンと遭遇していたとは。
しかも彼が唯一嫌っているリシェとは知らずにゲーム内で仲良く会話しているなんて。
俺、赤フンとは仲良くなれそうな気がすると言っていたリシェの嬉しそうな顔を思い出した。
だが現実の世界では、彼は一方的に敵視してくるノーチェと仲が良い訳では無い。むしろ逆だ。
こんな偶然があるとは誰が思うだろう。
「どした、ラス?」
動揺するラスに、キリルは不思議そうに問いかけた。
「あ…あぅう、な、何でも無い…」
ラスは再び椅子にへたり込むようにして着席した。
これは実際お互いの正体を知れば大変こじれてしまうのではないかと危惧する。ネットでは仲が良いのに、リアルでは仲良く無い相手同士だなんて誰が予想出来ただろう。
…内緒にしなければ。
先輩とノーチェのゲーム内の平和の為に。
絶対知られてはいけないぞ…とラスは謎の使命感に燃え始めていた。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる