異世界学園の中の変な仲間たち2

へすこ(ひしご)

文字の大きさ
35 / 101
そのさんじゅうよん

僕は君の主人、君は僕の「?」

しおりを挟む
 今日も一日疲れたぁ、とスティレンは自分の部屋の扉の鍵を解錠して中に入ろうとした。毎回出る時は鍵をきちんと施錠して確認の上で校舎に向かうのだが、ドアノブを捻った際に何故か施錠されている事に気付く。
 あれ、ちゃんと鍵を掛けていったのにな。知らないうちに忘れてた?
 不思議に思い、また鍵穴に鍵を差し込んだ。
 今度は扉が開かれ、変だなと違和感を感じながら部屋の中に足を踏み入れた。
「おっかえりー!スティレン★」
 嫌な声が聞こえてきた。
 そして自分の部屋に居るかのように寛ぎ、回転する椅子に腰を掛けてくるくる回る金髪の小悪魔美少年の姿を見た瞬間、スティレンは無言で部屋を出て扉を閉める。
「あぁん、スティレンンン」
 扉を挟んだ向こう側から、甘えたような声が聞こえた。
 忌々しく舌打ちしながら、スティレンは心の中で罵倒する。
 …このクソガキ、何しに来やがったのさ!!…てか金握らされて勝手に入れないでよ事務所連中!!
 学生寮の事務所員にまで腹が立って仕方無い。親族ならまだ構わないが、よりによって面倒な奴を許可無く入れてしまうとは。
 扉の向こうでバンバンと叩く音がする。
 出てこないようにドアノブをしっかり掴んで固定しながら、スティレンは人の部屋に勝手に上がり込んできた他校の生徒をどうしてくれようかと考えてしまう。
「待ってたんだよーぅ、スティレン★ほら、バレンタインだったでしょ?僕からのチョコを貰って欲しいなぁってさあ。んふふ、嬉しいでしょ?」
「全く嬉しくないんだけど!!何なのあんた!?勝手に人の部屋に上がり込んできてさぁ!」
「何なのって…君の主人のサキト様だよぉ♫君にぴったりの高級チョコ持って来たんだから有り難く思いなよね!ほらぁ、スティレン。扉開けて開けて!」
 君の主人という言葉に、スティレンは短気を起こしてつい扉を蹴りそうになった。だがそれは美徳に反する。
 落ち着け、と自分に言い聞かせながら「あんたを主人にした記憶は全く無いんだけど」と怒りを押さえて返事をした。
 お互い扉越しに言い合う形で会話を続ける。
「今更何言ってるのさ。僕は毎日四つん這いになってる君を椅子にする妄想をしてるんだよぉ。僕の頭の中では僕は君のご主人様なの。はぁあ、君がこうして間近に居るだけで僕我慢出来なくなっちゃうぅ」
「きっっっっっも!!!」
 ネジが緩みきったサキトの発言に、スティレンは反射的に嫌悪の言葉を吐いていた。
「何なのあんた!怖いんだけど!よくその顔でそこまで気色悪い言葉が吐けたもんだね!」
 罵倒と同時に、向こうから扉が開かれた。
 うわ!とスティレンの体が引いたが、サキトのひらひらしたシャツの袖が伸びて彼の腕をキャッチする。すかさずサキトはスティレンの胸元に飛びついてきた。
 ふわりと柔らかそうな髪が視界に入り込み、香水のほのかな香りが鼻を掠める。
「つーかまえた★」
 好意があれば満更でも無い態度を見せられるだろう。
 だがスティレンには全くサキトに対して好意は無い。むしろ気持ち悪いレベルだ。外見はとんでもなく可愛らしい人形のような美少年なのに、とにかく受け付けられない。
 理由は、とにかく思考が気持ち悪い。
「んんっふぅ」
 サキトはスティレンを見上げると、無邪気な笑みを向けた。
「さあスティレン、僕を貰って!」
「嫌だね!絶対嫌!」
「僕の体にチョコ掛けして丸ごと食べていいんだよ!」
「頭おかしいんじゃないの!?」
 つれないなあ、と頰を膨らませる。
「じゃあさ、せめて僕が持ってきた高級チョコを食べてね。一粒一粒が万単位なの。君の為に取り寄せたんだよぉ。一流のシェフが作ったんだからぁ」
 スティレンの胸に頰をぴったりくっつけ、恍惚とした表情を浮かべて甘えてくる。
 ぞわぞわと背中に悪寒が走り、スティレンは彼から離れようと両手を突き出し続けていた。
「君がその気になれないなら僕は一旦引くよ。クロスレイも待たせてるからね。ふふ、そのうち君に僕が君の主人だって事を分からせてあげるんだから。あとおまけに、また君と僕の薄い本を持って来たからそれを読んで学習してねっ!後でエッチなおさらいするから」
「いや、持って帰って。いらないからマジで」
 何を期待しているのだろう。
 サキトはスティレンに「キスして」と迫るが、嫌だと拒否した。
「頭突きされたくなかったら帰って。めちゃくちゃ強い頭突きするよ」
「んもう、つれない!!」
 じゃあチョコは食べてよね!と興醒めした様子で言うと、彼は何故か窓から出て行った。ここは一階では無いはずだが。
 まあいいや、と安堵する。
 机の上には綺麗に包装された上品な雰囲気のチョコと、数冊の薄い本。前回見た時と同じ絵柄だ。クロスレイが描かされたものだろう。
 はあ、と溜息をつきながら薄い本を机の奥に入れた。
 包装されたチョコを開くと、確かに箱にも記載されている位のブランド物だった。
 一粒万単位、という言葉が頭に浮かぶ。
「別にお金かけなくてもいいってのにさ…」
 馬鹿じゃないの、と呆れながらスティレンはその高級チョコを一口頬張っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...