異世界学園の中の変な仲間たち2

へすこ(ひしご)

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そのろくじゅうに

人の話を全く聞かない二人

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 ここには変態しか居ない、と嘆くリシェ。
 先程のヴェスカとオーギュスティンのやり取りを思い出しながらいつもの屋上で頭を抱えていた。端っこでうずくまっている彼を少し離れた場所で見ていたラスは、こんな状況でも可愛い…と惚けてしまう。
「みんな頭おかしい」
 ぐねぐねと嘆き続けるリシェに、ラスは仕方無いじゃないですかと声をかけた。
「この学校、そんなに刺激が無いですから」
「………」
「見渡す限りの男ですよ。女の人なんて先生しか居ませんし」
 リシェはうずくまりながらラスをちらりと一瞥した後、再びがくりと顔を伏せた。
「だったらそっちに行けばいいのに」
 ヴェスカにしろラスにしろ、興味の対象が間違っている。しかも性癖までおかしげな方向に向かっているのを目の当たりにしたので、リシェのショックは凄まじいものだった。
 何が踏んでくれ、だ。
 この学校は何から何までどこかおかしいのではないかと思わずにはいられない。
「でも俺、ヴェスカ先生の気持ちは分からなくもないですよ」
 不意にラスの口から出てきた言葉に、リシェはぴくりと反応した。分からなくはない、とは何なのかと。
「先輩になら踏まれたいですもん。ほら、好きなら何されてもいいかなってさ」
「ええ…」
「でも俺、むしろ踏まれるより抱き締めたいなぁ。ねえ、先輩?」
 リシェはすくっと立ち上がると、にこにこしながら手を広げわきわきと指を動かすラスに対し「気持ち悪い奴だ」とぶった斬った。
 近付くリシェの体を捕まえようとするものの、ラスの両手は美しく空振りをする。わ、とバランスを崩す彼に対してリシェは冷たい目線を向けていた。
「俺に対するそれはどうせ一過性のものだろう。そのうち目を覚ますぞ。しばらくしたらベッドで顔を埋めて恥ずかしさで足をバタバタさせる位の黒歴史になるに違いない」
「そ、そんな事無いです!黒歴史になんてなるもんか。俺、ここでは絶対先輩を手に入れるって決めてるんだから!」
 元の世界では絶対に手の届かない場所に居る相手を、みすみす見逃す程ヘタレではない。絶対に手に入れるんだとラスは意気込んでいるのに。
 ツンとするリシェを追いかけ、ラスは彼の腕を掴む。
「何だよ、しつこいなあ」
 嫌そうに眉を寄せるリシェ。嫌がるような事は出来るだけ避けたいのだが、結局何をしても嫌がられる結果になるのでそのまま押すしか攻略法は無い。
 離せ、と掴まれた腕を引き離そうとするリシェに、ラスは勢い良く言い放っていた。
「先輩、俺と結婚して下さい!!」
 その声は周囲に綺麗に響いた。屋上には他の生徒の姿も居て、その凛とした声に反応してこちらにぐるりと注目する。注目するのも当然なのだ。ここは男子校なのだから。
 何だ何だと二人は好奇の目線を受けてしまう。
「絶対に!幸せにしますから!!」
「嫌だ馬鹿!!」
 プロポーズ後に即拒否されるという非常に斬新なパターン。
 リシェはせまってくるラスの胸をぽこぽこと殴りながら「いい加減にしろ!」と怒鳴りつける。
 華奢な体を抱き締め、ラスは嫌ですううと拒否した。離れて見ていれば、単にじゃれあっているようにしか見えなくもない。遊びでやっているのかと周囲は勝手に納得したらしくそれぞれ普段通りの会話を始めていく。
 しかし一人だけは違った。
「…お前にリシェは勿体無いよ、ラス!!」
 自分らを探しに屋上までやってきたスティレンは、ちょうど騒ぎを目の当たりにしたのか怒りで顔を真っ赤にしていた。
 リシェを抱き締めたままのラスは「えぇ…」と困惑する。
「ちょっと目を離せば好き勝手に言って。いい、ラス。こいつは俺の玩具なんだから勝手な事しないでよね!」
 うねうねと腕の中で蠢くリシェは、結局勝手な妄想ばかり言い出す二人に対してぎりぎりと歯ぎしりしながらふざけるなと立腹する。
「せ、先輩は玩具なんかじゃないだろ!俺は本気で先輩を幸せにしたいんだから邪魔するなよ!」
「はぁあああ!?あのねえ、俺はこいつの従兄弟なの!俺の許可なく結婚なんて許す訳ないでしょ!?」
 その間、リシェは密着してくるラスの背中を拳でガンガン叩き続けていた。退け、と。
「親みたいに言うなよ!俺は絶対離れないから!」
 ラスとスティレンが言い合う中、リシェは彼らの意見を完全に拒否するように叫んだ。
「どっちも嫌だって言ってるだろ!!人の話を聞け!!」
 当人の意見を完全無視とはどういう事なのか。そして勝手に話を進めるなとようやく自由になった手でリシェはラスにビンタする。
「うべっ!!先輩、いたい!!」
 パチーン!という心地よい音と共にラスの悲鳴が飛ぶ。
「何でお前らは揃いも揃って人の話を聞かないんだ!!」
 放課後の屋上に、リシェの悲痛な叫びが響き渡っていた。
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