63 / 101
そのろくじゅうに
人の話を全く聞かない二人
しおりを挟む
ここには変態しか居ない、と嘆くリシェ。
先程のヴェスカとオーギュスティンのやり取りを思い出しながらいつもの屋上で頭を抱えていた。端っこでうずくまっている彼を少し離れた場所で見ていたラスは、こんな状況でも可愛い…と惚けてしまう。
「みんな頭おかしい」
ぐねぐねと嘆き続けるリシェに、ラスは仕方無いじゃないですかと声をかけた。
「この学校、そんなに刺激が無いですから」
「………」
「見渡す限りの男ですよ。女の人なんて先生しか居ませんし」
リシェはうずくまりながらラスをちらりと一瞥した後、再びがくりと顔を伏せた。
「だったらそっちに行けばいいのに」
ヴェスカにしろラスにしろ、興味の対象が間違っている。しかも性癖までおかしげな方向に向かっているのを目の当たりにしたので、リシェのショックは凄まじいものだった。
何が踏んでくれ、だ。
この学校は何から何までどこかおかしいのではないかと思わずにはいられない。
「でも俺、ヴェスカ先生の気持ちは分からなくもないですよ」
不意にラスの口から出てきた言葉に、リシェはぴくりと反応した。分からなくはない、とは何なのかと。
「先輩になら踏まれたいですもん。ほら、好きなら何されてもいいかなってさ」
「ええ…」
「でも俺、むしろ踏まれるより抱き締めたいなぁ。ねえ、先輩?」
リシェはすくっと立ち上がると、にこにこしながら手を広げわきわきと指を動かすラスに対し「気持ち悪い奴だ」とぶった斬った。
近付くリシェの体を捕まえようとするものの、ラスの両手は美しく空振りをする。わ、とバランスを崩す彼に対してリシェは冷たい目線を向けていた。
「俺に対するそれはどうせ一過性のものだろう。そのうち目を覚ますぞ。しばらくしたらベッドで顔を埋めて恥ずかしさで足をバタバタさせる位の黒歴史になるに違いない」
「そ、そんな事無いです!黒歴史になんてなるもんか。俺、ここでは絶対先輩を手に入れるって決めてるんだから!」
元の世界では絶対に手の届かない場所に居る相手を、みすみす見逃す程ヘタレではない。絶対に手に入れるんだとラスは意気込んでいるのに。
ツンとするリシェを追いかけ、ラスは彼の腕を掴む。
「何だよ、しつこいなあ」
嫌そうに眉を寄せるリシェ。嫌がるような事は出来るだけ避けたいのだが、結局何をしても嫌がられる結果になるのでそのまま押すしか攻略法は無い。
離せ、と掴まれた腕を引き離そうとするリシェに、ラスは勢い良く言い放っていた。
「先輩、俺と結婚して下さい!!」
その声は周囲に綺麗に響いた。屋上には他の生徒の姿も居て、その凛とした声に反応してこちらにぐるりと注目する。注目するのも当然なのだ。ここは男子校なのだから。
何だ何だと二人は好奇の目線を受けてしまう。
「絶対に!幸せにしますから!!」
「嫌だ馬鹿!!」
プロポーズ後に即拒否されるという非常に斬新なパターン。
リシェはせまってくるラスの胸をぽこぽこと殴りながら「いい加減にしろ!」と怒鳴りつける。
華奢な体を抱き締め、ラスは嫌ですううと拒否した。離れて見ていれば、単にじゃれあっているようにしか見えなくもない。遊びでやっているのかと周囲は勝手に納得したらしくそれぞれ普段通りの会話を始めていく。
しかし一人だけは違った。
「…お前にリシェは勿体無いよ、ラス!!」
自分らを探しに屋上までやってきたスティレンは、ちょうど騒ぎを目の当たりにしたのか怒りで顔を真っ赤にしていた。
リシェを抱き締めたままのラスは「えぇ…」と困惑する。
「ちょっと目を離せば好き勝手に言って。いい、ラス。こいつは俺の玩具なんだから勝手な事しないでよね!」
うねうねと腕の中で蠢くリシェは、結局勝手な妄想ばかり言い出す二人に対してぎりぎりと歯ぎしりしながらふざけるなと立腹する。
「せ、先輩は玩具なんかじゃないだろ!俺は本気で先輩を幸せにしたいんだから邪魔するなよ!」
「はぁあああ!?あのねえ、俺はこいつの従兄弟なの!俺の許可なく結婚なんて許す訳ないでしょ!?」
その間、リシェは密着してくるラスの背中を拳でガンガン叩き続けていた。退け、と。
「親みたいに言うなよ!俺は絶対離れないから!」
ラスとスティレンが言い合う中、リシェは彼らの意見を完全に拒否するように叫んだ。
「どっちも嫌だって言ってるだろ!!人の話を聞け!!」
当人の意見を完全無視とはどういう事なのか。そして勝手に話を進めるなとようやく自由になった手でリシェはラスにビンタする。
「うべっ!!先輩、いたい!!」
パチーン!という心地よい音と共にラスの悲鳴が飛ぶ。
「何でお前らは揃いも揃って人の話を聞かないんだ!!」
放課後の屋上に、リシェの悲痛な叫びが響き渡っていた。
先程のヴェスカとオーギュスティンのやり取りを思い出しながらいつもの屋上で頭を抱えていた。端っこでうずくまっている彼を少し離れた場所で見ていたラスは、こんな状況でも可愛い…と惚けてしまう。
「みんな頭おかしい」
ぐねぐねと嘆き続けるリシェに、ラスは仕方無いじゃないですかと声をかけた。
「この学校、そんなに刺激が無いですから」
「………」
「見渡す限りの男ですよ。女の人なんて先生しか居ませんし」
リシェはうずくまりながらラスをちらりと一瞥した後、再びがくりと顔を伏せた。
「だったらそっちに行けばいいのに」
ヴェスカにしろラスにしろ、興味の対象が間違っている。しかも性癖までおかしげな方向に向かっているのを目の当たりにしたので、リシェのショックは凄まじいものだった。
何が踏んでくれ、だ。
この学校は何から何までどこかおかしいのではないかと思わずにはいられない。
「でも俺、ヴェスカ先生の気持ちは分からなくもないですよ」
不意にラスの口から出てきた言葉に、リシェはぴくりと反応した。分からなくはない、とは何なのかと。
「先輩になら踏まれたいですもん。ほら、好きなら何されてもいいかなってさ」
「ええ…」
「でも俺、むしろ踏まれるより抱き締めたいなぁ。ねえ、先輩?」
リシェはすくっと立ち上がると、にこにこしながら手を広げわきわきと指を動かすラスに対し「気持ち悪い奴だ」とぶった斬った。
近付くリシェの体を捕まえようとするものの、ラスの両手は美しく空振りをする。わ、とバランスを崩す彼に対してリシェは冷たい目線を向けていた。
「俺に対するそれはどうせ一過性のものだろう。そのうち目を覚ますぞ。しばらくしたらベッドで顔を埋めて恥ずかしさで足をバタバタさせる位の黒歴史になるに違いない」
「そ、そんな事無いです!黒歴史になんてなるもんか。俺、ここでは絶対先輩を手に入れるって決めてるんだから!」
元の世界では絶対に手の届かない場所に居る相手を、みすみす見逃す程ヘタレではない。絶対に手に入れるんだとラスは意気込んでいるのに。
ツンとするリシェを追いかけ、ラスは彼の腕を掴む。
「何だよ、しつこいなあ」
嫌そうに眉を寄せるリシェ。嫌がるような事は出来るだけ避けたいのだが、結局何をしても嫌がられる結果になるのでそのまま押すしか攻略法は無い。
離せ、と掴まれた腕を引き離そうとするリシェに、ラスは勢い良く言い放っていた。
「先輩、俺と結婚して下さい!!」
その声は周囲に綺麗に響いた。屋上には他の生徒の姿も居て、その凛とした声に反応してこちらにぐるりと注目する。注目するのも当然なのだ。ここは男子校なのだから。
何だ何だと二人は好奇の目線を受けてしまう。
「絶対に!幸せにしますから!!」
「嫌だ馬鹿!!」
プロポーズ後に即拒否されるという非常に斬新なパターン。
リシェはせまってくるラスの胸をぽこぽこと殴りながら「いい加減にしろ!」と怒鳴りつける。
華奢な体を抱き締め、ラスは嫌ですううと拒否した。離れて見ていれば、単にじゃれあっているようにしか見えなくもない。遊びでやっているのかと周囲は勝手に納得したらしくそれぞれ普段通りの会話を始めていく。
しかし一人だけは違った。
「…お前にリシェは勿体無いよ、ラス!!」
自分らを探しに屋上までやってきたスティレンは、ちょうど騒ぎを目の当たりにしたのか怒りで顔を真っ赤にしていた。
リシェを抱き締めたままのラスは「えぇ…」と困惑する。
「ちょっと目を離せば好き勝手に言って。いい、ラス。こいつは俺の玩具なんだから勝手な事しないでよね!」
うねうねと腕の中で蠢くリシェは、結局勝手な妄想ばかり言い出す二人に対してぎりぎりと歯ぎしりしながらふざけるなと立腹する。
「せ、先輩は玩具なんかじゃないだろ!俺は本気で先輩を幸せにしたいんだから邪魔するなよ!」
「はぁあああ!?あのねえ、俺はこいつの従兄弟なの!俺の許可なく結婚なんて許す訳ないでしょ!?」
その間、リシェは密着してくるラスの背中を拳でガンガン叩き続けていた。退け、と。
「親みたいに言うなよ!俺は絶対離れないから!」
ラスとスティレンが言い合う中、リシェは彼らの意見を完全に拒否するように叫んだ。
「どっちも嫌だって言ってるだろ!!人の話を聞け!!」
当人の意見を完全無視とはどういう事なのか。そして勝手に話を進めるなとようやく自由になった手でリシェはラスにビンタする。
「うべっ!!先輩、いたい!!」
パチーン!という心地よい音と共にラスの悲鳴が飛ぶ。
「何でお前らは揃いも揃って人の話を聞かないんだ!!」
放課後の屋上に、リシェの悲痛な叫びが響き渡っていた。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる