98 / 101
そのきゅうじゅうなな
素直じゃない寂しがり
しおりを挟む
「リシェ君、ラス先輩が迎えに来たよ」
いつものように授業が終わり、自分の荷物を纏めていたリシェにクラスメイトが声をかけてきた。言われるまま教室の出入口を見ると、鞄を肩にかけるラスがにっこりと笑いながら手をヒラヒラさせている。
毎度の義務のように終わればやって来るのでうんざりする気力も無くなっている。慣れてしまえば普通になるものだ。
今週は清掃当番ではないのですぐ帰る事が出来る。
鞄を持ち、リシェは慣れた様子でラスの元へ向かった。スティレンはその間、最後の授業に使っていたクラス全員のプリントを提出する為に職員室に届けに出て、まだ戻っていない。
「今日はどこか行きます?明日休みだし…先輩とデートしたいなぁ♡なんて思ったりもして…」
「別に欲しいものは無いからいい」
「えー」
一見真面目そうなリシェと、どう見てもチャラそうで、格好も制服を着崩したりピアスを開けたり派手な様子のラスの組み合わせは不釣り合いな印象だったが、しょっちゅうリシェを求めに通い詰めていた為に生徒達の目も慣れた様子だった。
今では普通に弟を迎えに来た兄のような扱い。
「俺、先輩と一緒に街を歩きたい!」
「面倒臭いなあ…」
会話の中身は違和感を受けるが。
しつこいラスの要望を仕方無く受け入れる形で、リシェは渋々彼と街へと繰り出す代わりにパフェをご馳走になる事で合意した。
「やったー!デートだ!」
「約束だぞ」
二人が教室から去った後、役目を終えたスティレンは再び教室に戻ってくる。そしてリシェの姿が無い事に気付いた。
周囲を見回す彼に、これまたクラスメイトが話しかける。
「リシェ君なら少し前にラス先輩と出て行ったよ」
その言葉に、当然ながらスティレンは「はぁあ?」と不愉快そうに声を放った。
「あいつはまた何で俺を待たないかなぁ!」
「ラス先輩が来てたからそのまま行ったよ」
またあいつか!と彼はぷりぷりしながら自分の身支度をする。我儘なスティレンは、彼が自分を待つ事が当然だと思っていたので勝手に置いていかれた事自体腹立たしいようだ。
教えてくれた優しいクラスメイトは、一人怒り狂うスティレンに「何かデート行ったみたいだけど」と問いかける。
「大丈夫?」
ただでさえ面倒なタイプなスティレンの顔を不安げに覗き込んだ。
「大丈夫な訳ないじゃない!ああもう、こうしちゃいられないや。早く追いかけないと!」
鞄を持ち、スティレンは急いで教室を飛び出していった。
残されたクラスメイトはぽかんと口を開きながら、スティレンのリシェに対する執着心につい感心する。
「…早っ」
あまりの素早さに思わず呟いてしまった。
生徒の波を駆け抜け、スティレンは昇降口まで辿り着く。
仲良くデートなんてさせるか!という気持ちが強かったのだ。しかも自分を差し置いてなんて許されない。
自分の靴が収納されている靴棚に近付くと、まだ校舎から出ていないリシェとラスの姿が見えてくる。それを確認すると、スティレンは妙に安心した。
…なんだ、まだそれ程移動してなかったじゃないか。
つい口元が緩んだ。
自分を置いてきた事を心底後悔させてやるんだからね!と意気込むスティレンは、まだ靴を履き替える事無く立ち止まって会話をしている二人に「ちょっと!!」と怒鳴り込んだ。
同時にこちらを振り向く二人。
「俺を差し置いて行くなんてっ、許される訳ないでしょ!!抜け駆けしないでくれないかなぁ!?」
ようやく追いつき、息を切らしながらスティレンは叫んだ。
リシェはきょとんとした顔をしている。
「スティレン、どこに行ってたの?先輩の側に居なかったから変だなって思ってたのに」
自分を置き去った事を悪びれもせずラスが問いかけてくる。スティレンは「はあ?」と彼を睨んだ。
「授業で使ったプリントを提出しに行ったんだよ!むしろリシェ、お前が俺を待たないでどうするのさ!?普通そのまま帰る!?全く気が利かないんだから!!仲良くデートなんてさせるかっての、ムカつく!!」
リシェはラスを困った表情で見上げた。
「ほら」
案の定そうだったろう?と続ける。ラスもふふっと笑った。
「そんなに怒らないでよ。…先輩、スティレンを待とうって言ってたんだよ?俺はデートしたくてたまらなかったんだけどね」
スティレンはしばらくカッカしていたものの、意外な事実に脳内の処理が追いつかず理解するまでに時間を要した。
間を開け、ようやく冷静になり「……は?」と間抜けに問う。
「スティレンを置いていくと後でめちゃくちゃうるさいからって」
リシェは事実だろうと突っぱねる。
「は…??何、え?」
まさか自分を待っていたというオチ。
ではこの怒りはどう処理をしたら良いのだろうか。混乱していると、突然腕が掴まれた。
「ほら、行くぞ」
「じゃあ三人で遊びに行きましょう、先輩。それならいいでしょう?」
リシェはこくりと頷く。
「これなら文句言わないだろう、スティレン?」
やや小馬鹿にしたように揶揄う従兄弟に、怒りのやり場を塞がれたスティレンは「当然でしょ!!」と吐き捨てるように言う。
「この俺を置いていくなんて許されない事だからね!少しは分かってきたようだから褒めてあげてもいいんだよ、リシェ!」
本当はめちゃくちゃ嬉しいくせに、何故素直に喜ばないのか。
「寂しがりだなあ、スティレンは」
この期に及んで全く素直ではない彼に、ラスは思わず吹き出してしまった。
いつものように授業が終わり、自分の荷物を纏めていたリシェにクラスメイトが声をかけてきた。言われるまま教室の出入口を見ると、鞄を肩にかけるラスがにっこりと笑いながら手をヒラヒラさせている。
毎度の義務のように終わればやって来るのでうんざりする気力も無くなっている。慣れてしまえば普通になるものだ。
今週は清掃当番ではないのですぐ帰る事が出来る。
鞄を持ち、リシェは慣れた様子でラスの元へ向かった。スティレンはその間、最後の授業に使っていたクラス全員のプリントを提出する為に職員室に届けに出て、まだ戻っていない。
「今日はどこか行きます?明日休みだし…先輩とデートしたいなぁ♡なんて思ったりもして…」
「別に欲しいものは無いからいい」
「えー」
一見真面目そうなリシェと、どう見てもチャラそうで、格好も制服を着崩したりピアスを開けたり派手な様子のラスの組み合わせは不釣り合いな印象だったが、しょっちゅうリシェを求めに通い詰めていた為に生徒達の目も慣れた様子だった。
今では普通に弟を迎えに来た兄のような扱い。
「俺、先輩と一緒に街を歩きたい!」
「面倒臭いなあ…」
会話の中身は違和感を受けるが。
しつこいラスの要望を仕方無く受け入れる形で、リシェは渋々彼と街へと繰り出す代わりにパフェをご馳走になる事で合意した。
「やったー!デートだ!」
「約束だぞ」
二人が教室から去った後、役目を終えたスティレンは再び教室に戻ってくる。そしてリシェの姿が無い事に気付いた。
周囲を見回す彼に、これまたクラスメイトが話しかける。
「リシェ君なら少し前にラス先輩と出て行ったよ」
その言葉に、当然ながらスティレンは「はぁあ?」と不愉快そうに声を放った。
「あいつはまた何で俺を待たないかなぁ!」
「ラス先輩が来てたからそのまま行ったよ」
またあいつか!と彼はぷりぷりしながら自分の身支度をする。我儘なスティレンは、彼が自分を待つ事が当然だと思っていたので勝手に置いていかれた事自体腹立たしいようだ。
教えてくれた優しいクラスメイトは、一人怒り狂うスティレンに「何かデート行ったみたいだけど」と問いかける。
「大丈夫?」
ただでさえ面倒なタイプなスティレンの顔を不安げに覗き込んだ。
「大丈夫な訳ないじゃない!ああもう、こうしちゃいられないや。早く追いかけないと!」
鞄を持ち、スティレンは急いで教室を飛び出していった。
残されたクラスメイトはぽかんと口を開きながら、スティレンのリシェに対する執着心につい感心する。
「…早っ」
あまりの素早さに思わず呟いてしまった。
生徒の波を駆け抜け、スティレンは昇降口まで辿り着く。
仲良くデートなんてさせるか!という気持ちが強かったのだ。しかも自分を差し置いてなんて許されない。
自分の靴が収納されている靴棚に近付くと、まだ校舎から出ていないリシェとラスの姿が見えてくる。それを確認すると、スティレンは妙に安心した。
…なんだ、まだそれ程移動してなかったじゃないか。
つい口元が緩んだ。
自分を置いてきた事を心底後悔させてやるんだからね!と意気込むスティレンは、まだ靴を履き替える事無く立ち止まって会話をしている二人に「ちょっと!!」と怒鳴り込んだ。
同時にこちらを振り向く二人。
「俺を差し置いて行くなんてっ、許される訳ないでしょ!!抜け駆けしないでくれないかなぁ!?」
ようやく追いつき、息を切らしながらスティレンは叫んだ。
リシェはきょとんとした顔をしている。
「スティレン、どこに行ってたの?先輩の側に居なかったから変だなって思ってたのに」
自分を置き去った事を悪びれもせずラスが問いかけてくる。スティレンは「はあ?」と彼を睨んだ。
「授業で使ったプリントを提出しに行ったんだよ!むしろリシェ、お前が俺を待たないでどうするのさ!?普通そのまま帰る!?全く気が利かないんだから!!仲良くデートなんてさせるかっての、ムカつく!!」
リシェはラスを困った表情で見上げた。
「ほら」
案の定そうだったろう?と続ける。ラスもふふっと笑った。
「そんなに怒らないでよ。…先輩、スティレンを待とうって言ってたんだよ?俺はデートしたくてたまらなかったんだけどね」
スティレンはしばらくカッカしていたものの、意外な事実に脳内の処理が追いつかず理解するまでに時間を要した。
間を開け、ようやく冷静になり「……は?」と間抜けに問う。
「スティレンを置いていくと後でめちゃくちゃうるさいからって」
リシェは事実だろうと突っぱねる。
「は…??何、え?」
まさか自分を待っていたというオチ。
ではこの怒りはどう処理をしたら良いのだろうか。混乱していると、突然腕が掴まれた。
「ほら、行くぞ」
「じゃあ三人で遊びに行きましょう、先輩。それならいいでしょう?」
リシェはこくりと頷く。
「これなら文句言わないだろう、スティレン?」
やや小馬鹿にしたように揶揄う従兄弟に、怒りのやり場を塞がれたスティレンは「当然でしょ!!」と吐き捨てるように言う。
「この俺を置いていくなんて許されない事だからね!少しは分かってきたようだから褒めてあげてもいいんだよ、リシェ!」
本当はめちゃくちゃ嬉しいくせに、何故素直に喜ばないのか。
「寂しがりだなあ、スティレンは」
この期に及んで全く素直ではない彼に、ラスは思わず吹き出してしまった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる