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そのきゅうじゅうはち
贈り物
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また何かが届いたぞ、とリシェは荷物を手に部屋に入って来る。
クマのぬいぐるみのメンテナンスをしていたラスは、またダチョウのデカい卵とかじゃないですよねと笑いながら彼を迎え入れていた。
よいしょ、と前回よりは小振りの箱をテーブルに置くと、自分の机の引き出しからカッターナイフを持ち寄り刃を静かに入れる。
「何でしょうね」
「何だろう…まぁ、前より軽かったし卵ではない事は確かだけど」
ぬいぐるみを抱き締めながら、ラスはリシェの隣に座る。
静かに箱を開け放ち、中を覗き込んだ。
「…食べ物じゃない…」
そう言いながら問題の中身を取り出すと、何故か車の模型のような物が出てきた。
「あ、手紙が入ってる」
「ん?」
ラスが言うように、箱の角に封筒が入っていた。それを引っ張り出して便箋を広げると、リシェは困ったような表情を露わにした。
「何て書いてるんです?」
その質問に、リシェは手紙を読み上げる。
「先日ラジコン展に行ってきました。気に入ったラジコンがあったので送ります」
無言で文面から目を離し、リシェは天井を見上げた。
そしてラスに顔を向ける。
「…何で?」
「何でって言われても…それは送ってくれた本人じゃないと」
ブラックを基調とした車体の色に、ピンクのラインが入っているなかなかのデザインだ。箱から丁寧に出しながら、ラスは感心したように褒める。
「でもカッコいい感じじゃないですか?カッコいいっていうか、可愛らしい気もしますよ。黒にピンクって俺的には好きですけどねえ」
しかもしっかり電池も入っていた。
「先輩、ラジコン好きなんですか?意外な趣味ですねえ」
てっきり好きだから送ってきてくれたのだろうと思った。子供の趣味を理解してくれる素敵な親御さんじゃないですか、と笑いながらリモコンの中に電池を入れる。
別の袋にはUSBケーブルが入っていた。どうやら充電でも動かす事が出来るらしい。
「…俺、別にラジコンが趣味な訳じゃないぞ」
「え、そうなの」
では思いつきで送ってきたのだろうか。
いつでも走れる環境を整えると、ラスは小さなリモコンを手にしながら車体を床に置いた。
「でも実際楽しいと思いますよ。いかにも男子の遊びって感じだし。何なら廊下で走らせてみるのもいいかもしれませんね」
「そんなものなのか」
見てて下さいよ、とラスはリシェに笑顔を向けた後、リモコンを操作して車を走らせた。その瞬間、本体はギュイイイインと激しい音を鳴らし、猛スピードで扉に体当たりする。
ガチン!!と強い音が室内に響いた。
あぁ、とリシェは声を上げる。
「いきなり壊そうとするなよ」
あまりにも強く飛び出して扉に突貫する様子を見て、リシェはついラスに文句を言った。
「いや、ちょっと動かしただけですよ!?てかむしろこんなスピード出るもんでしたっけ?」
リシェは手紙を改めて見直した。すると「ん?」と疑問符を放つ。
「どうしましたか?」
「いや、何か…通常のより猛スピードで走れるように改造した仕様だって書いてる」
「そりゃいきなり壁に激突しますよ!!」
むしろそれを早く言って下さいって、とラスは困惑した。
他人のものをいきなり大破させる趣味は持ち合わせてはいない。
「じゃあ廊下で走らせてみましょうよ!」
送られた本人より、ラスのほうが何故かうきうきしている模様。壊れていないかを確認し、無事が分かった後で彼はラジコンを手にリシェを呼ぶ。
寮の廊下は長いのできっと走りやすいだろう。
「先輩、廊下でやった方が絶対楽しいです!」
「…何でお前が楽しそうなんだ?別にいいけど…」
乗り気ではないリシェは、ラスに呼び出される形で廊下に出る。
まぁ見てて下さいって、と彼は廊下の角に向かい、車体を床に静かに置いた。
「こういうの懐かしいなぁ。小さい頃を思い出しますね」
「お前、持ってたのか?」
「友達が動かすのを見た事があるんですよ。なかなか面白いですよ」
ラスは意気揚々と車を動かし始めた。やはり発進も普通のより早く、おかしい位に猛スピードで廊下を走り出す。目の前で一気に通過する車を目の当たりにしたリシェは、その爽快な走りっぷりに目を輝かせていた。
口をぽかんと開けたまま、「わ」と声を上げる。
「早い!!何だこれ!?」
やはりそこは男子っぽい反応を見せた。ラスは操作しながら「面白いでしょ?」と笑った。廊下から聞こえてくる激しい機械音に気付いた寮内の生徒達も、何だ何だと自分達の部屋から出てくる。
そして目の前を駆け抜ける小さな車に、時折歓声を上げていた。
「うわぁああ何これ!?めっちゃ早ぇえ!!」
「凄げぇええ!!」
次々と部屋から出てくる少年達。
「ほら、こういうのみんな好きなんですよ、先輩。みんなで操作して遊びましょう」
きっとリシェの親御さんも、毎日同じ事の繰り返しで退屈であろう寮生活を思って送ってくれたに違いない。内向的な彼が友達を作るいいきっかけにもなる。
そう思うとなかなか粋な事をしてくれるではないか。
謎に魔改造されたラジコンの走りっぷりを見ながら、ラスは他の生徒達に馴染んでいくリシェを微笑ましく眺めていた。
クマのぬいぐるみのメンテナンスをしていたラスは、またダチョウのデカい卵とかじゃないですよねと笑いながら彼を迎え入れていた。
よいしょ、と前回よりは小振りの箱をテーブルに置くと、自分の机の引き出しからカッターナイフを持ち寄り刃を静かに入れる。
「何でしょうね」
「何だろう…まぁ、前より軽かったし卵ではない事は確かだけど」
ぬいぐるみを抱き締めながら、ラスはリシェの隣に座る。
静かに箱を開け放ち、中を覗き込んだ。
「…食べ物じゃない…」
そう言いながら問題の中身を取り出すと、何故か車の模型のような物が出てきた。
「あ、手紙が入ってる」
「ん?」
ラスが言うように、箱の角に封筒が入っていた。それを引っ張り出して便箋を広げると、リシェは困ったような表情を露わにした。
「何て書いてるんです?」
その質問に、リシェは手紙を読み上げる。
「先日ラジコン展に行ってきました。気に入ったラジコンがあったので送ります」
無言で文面から目を離し、リシェは天井を見上げた。
そしてラスに顔を向ける。
「…何で?」
「何でって言われても…それは送ってくれた本人じゃないと」
ブラックを基調とした車体の色に、ピンクのラインが入っているなかなかのデザインだ。箱から丁寧に出しながら、ラスは感心したように褒める。
「でもカッコいい感じじゃないですか?カッコいいっていうか、可愛らしい気もしますよ。黒にピンクって俺的には好きですけどねえ」
しかもしっかり電池も入っていた。
「先輩、ラジコン好きなんですか?意外な趣味ですねえ」
てっきり好きだから送ってきてくれたのだろうと思った。子供の趣味を理解してくれる素敵な親御さんじゃないですか、と笑いながらリモコンの中に電池を入れる。
別の袋にはUSBケーブルが入っていた。どうやら充電でも動かす事が出来るらしい。
「…俺、別にラジコンが趣味な訳じゃないぞ」
「え、そうなの」
では思いつきで送ってきたのだろうか。
いつでも走れる環境を整えると、ラスは小さなリモコンを手にしながら車体を床に置いた。
「でも実際楽しいと思いますよ。いかにも男子の遊びって感じだし。何なら廊下で走らせてみるのもいいかもしれませんね」
「そんなものなのか」
見てて下さいよ、とラスはリシェに笑顔を向けた後、リモコンを操作して車を走らせた。その瞬間、本体はギュイイイインと激しい音を鳴らし、猛スピードで扉に体当たりする。
ガチン!!と強い音が室内に響いた。
あぁ、とリシェは声を上げる。
「いきなり壊そうとするなよ」
あまりにも強く飛び出して扉に突貫する様子を見て、リシェはついラスに文句を言った。
「いや、ちょっと動かしただけですよ!?てかむしろこんなスピード出るもんでしたっけ?」
リシェは手紙を改めて見直した。すると「ん?」と疑問符を放つ。
「どうしましたか?」
「いや、何か…通常のより猛スピードで走れるように改造した仕様だって書いてる」
「そりゃいきなり壁に激突しますよ!!」
むしろそれを早く言って下さいって、とラスは困惑した。
他人のものをいきなり大破させる趣味は持ち合わせてはいない。
「じゃあ廊下で走らせてみましょうよ!」
送られた本人より、ラスのほうが何故かうきうきしている模様。壊れていないかを確認し、無事が分かった後で彼はラジコンを手にリシェを呼ぶ。
寮の廊下は長いのできっと走りやすいだろう。
「先輩、廊下でやった方が絶対楽しいです!」
「…何でお前が楽しそうなんだ?別にいいけど…」
乗り気ではないリシェは、ラスに呼び出される形で廊下に出る。
まぁ見てて下さいって、と彼は廊下の角に向かい、車体を床に静かに置いた。
「こういうの懐かしいなぁ。小さい頃を思い出しますね」
「お前、持ってたのか?」
「友達が動かすのを見た事があるんですよ。なかなか面白いですよ」
ラスは意気揚々と車を動かし始めた。やはり発進も普通のより早く、おかしい位に猛スピードで廊下を走り出す。目の前で一気に通過する車を目の当たりにしたリシェは、その爽快な走りっぷりに目を輝かせていた。
口をぽかんと開けたまま、「わ」と声を上げる。
「早い!!何だこれ!?」
やはりそこは男子っぽい反応を見せた。ラスは操作しながら「面白いでしょ?」と笑った。廊下から聞こえてくる激しい機械音に気付いた寮内の生徒達も、何だ何だと自分達の部屋から出てくる。
そして目の前を駆け抜ける小さな車に、時折歓声を上げていた。
「うわぁああ何これ!?めっちゃ早ぇえ!!」
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