100 / 101
そのきゅうじゅうきゅう
無茶振りな恋は骨をも砕く
しおりを挟む
あなたが余計な事をするから変な噂を立てられましたよ、とロシュはオーギュスティンに苦情を言っていた。次の授業の準備をしている最中の当事者は、しれっとした様子で飲んでいたお茶の残りを飲み干す。
余計な事とは人聞きの悪い。
自分は彼がこれ以上変な道に向かわないように軌道修正をしたつもりだったのだ。
「私は単に大切な生徒を守ろうとしているだけですよ」
しれっとした様子でオーギュスティンは突っぱねる。
「現行犯じゃあるまいし…」
「予告っぽく聞こえてくるのでね。あなた実際やりそうですし」
眉目秀麗な外見であるが、昔馴染みであるオーギュスティンはロシュの変人っぷりを良く把握していた。
あまりの変質者っぷりに、そのうち彼は可愛い顔立ちの若者に牙を向くのではないだろうかと。
「はぁ…あんまりだ。私はこれまで誠実に教職に就いているつもりです。真面目に物事に取り組みながら、その合間に沢山の生徒達の悩みだって聞いてきたのですよ。それが何ですか、たった一本の通報で台無しになってしまいそうになるなんて」
舞台の演出か何かのように大袈裟な身振り手振りで、ロシュは悲しさをアピールしてくる。しかしオーギュスティンには全く通用はしない。日頃の行いがすこぶる悪過ぎたのかもしれない。
彼は全くロシュを信用していないどころか、むしろ鬱陶しいなと舌打ちする始末だ。
「説明するにも骨が折れましたよ。全く、どうしてくれるんですか」
「あなたがうちの生徒に変なちょっかいかけたりするのを止めたら、私は何も言いませんよ。立場も年も考えずに如何わしい事をしたいと宣言するような馬鹿がどこに居るんですか。あなたがそうだから私は全力で守らなければいけない」
悪びれもせずにリシェといちゃいちゃしたいだの、恋だの愛だのと聞くにたえない事を喋りだされる側にもなって欲しいものだ。
くだらない…とオーギュスティンはうなだれる。
いい年をして自分の感情のコントロールすら出来ないとは。もう少し冷静になればいいのにと思わずにはいられない。
すると向かい合わせに座っていた体育教師のヴェスカが、「俺もロシュ先生の気持ちは分かる気がするよ」と頼みもしないのに話に参加してきた。
仲間が居たとばかりに、ロシュは目を輝かせる。
「…でしょう!?」
「あなたもまた要らん事を言って餌を与えないで下さいよ!」
喜びを露わにするロシュと、心底面倒そうなオーギュスティン。
「俺だって好きな相手にはめちゃくちゃ押すタイプだからな。そうでもしなきゃ相手に理解してくれねぇだろ?」
朗らかに笑いながらヴェスカはロシュの言い分に理解を示した。
それならお二人で仲良く話していればいいじゃないですか、と教材を纏めて首を振った。
「そうですよ、私の場合道は険しいのでね。本人にしっかりアピールしないと…向こうでは恋人だったのだから…」
ロシュはとにかくリシェをこちらの世界でも恋人にしたいと願っているのだ。他の人間は元の世界の記憶が無い為に完全孤立無援の状態だが、ヴェスカが少しだけ自分の気持ちの理解をしてくれた事に内心安堵していた。
とにかくリシェが欲しい。それだけなのだ。
「やっぱアピールは必要だな。まあ、散々アピールしても全っっっく反応が薄いと難易度高いんだけどさぁ…なあ、オーギュスティン先生?」
「は?」
名指しされ、オーギュスティンは反射的に顔を上げて思い切り嫌そうに表情を曇らせる。
「おや…おやおやおやぁあ??」
その様子を目の当たりにするロシュは、面白いものを見たと言わんばかりに両者を交互に見回した。んふふ、といやらしい笑みを浮かべると、ロシュは「なるほど」と呟く。
「何です、ヴェスカ先生の気になるお相手って…あっはあ、確かにそうですよねぇ。元ネタに忠実ですからね!把握把握」
オーギュスティンは不愉快そうな様子ですぐ隣に居るロシュの腰に向けてドスンと一発拳を入れた。
「んっひ!!?」
いい所に拳が入ったようだ。妙に骨がぶつかるような音色も聞こえたが。
彼のしなやかな体がかくりと傾き、へなへなと沈み込んでしまう。あぁああ、と情けない声がロシュの口から漏れ出していく。
同時に授業開始予告の鐘が校舎内に鳴り始めた。
外部は生徒らが急ぎ足で教室に戻っていく足音が聞こえてくる。
「馬鹿馬鹿しい話はもうおしまいになさい」
沈んでいるロシュを無視し、オーギュスティンは席から立ち上がるとニヤニヤするヴェスカに向かって「あなたもご自分の授業があるでしょう」と冷静に告げた。
堅物。とにかく堅物。
さっさと職員室から出ていくお堅いオーギュスティンを見送った後、ヴェスカは身を起こし沈んだロシュに大丈夫ですか?と声をかける。
「ええ、ええ。大丈夫です」
「そか。良かった。何かゴキって聞こえた気がしたから」
「ははは…心配無いですよ…んっふ…痛っ」
ロシュは眉間に皺を寄せながら、この位でへたばっていたらあの子を悦ばせてあげられませんしねと意味不明な事を呟いていた。
余計な事とは人聞きの悪い。
自分は彼がこれ以上変な道に向かわないように軌道修正をしたつもりだったのだ。
「私は単に大切な生徒を守ろうとしているだけですよ」
しれっとした様子でオーギュスティンは突っぱねる。
「現行犯じゃあるまいし…」
「予告っぽく聞こえてくるのでね。あなた実際やりそうですし」
眉目秀麗な外見であるが、昔馴染みであるオーギュスティンはロシュの変人っぷりを良く把握していた。
あまりの変質者っぷりに、そのうち彼は可愛い顔立ちの若者に牙を向くのではないだろうかと。
「はぁ…あんまりだ。私はこれまで誠実に教職に就いているつもりです。真面目に物事に取り組みながら、その合間に沢山の生徒達の悩みだって聞いてきたのですよ。それが何ですか、たった一本の通報で台無しになってしまいそうになるなんて」
舞台の演出か何かのように大袈裟な身振り手振りで、ロシュは悲しさをアピールしてくる。しかしオーギュスティンには全く通用はしない。日頃の行いがすこぶる悪過ぎたのかもしれない。
彼は全くロシュを信用していないどころか、むしろ鬱陶しいなと舌打ちする始末だ。
「説明するにも骨が折れましたよ。全く、どうしてくれるんですか」
「あなたがうちの生徒に変なちょっかいかけたりするのを止めたら、私は何も言いませんよ。立場も年も考えずに如何わしい事をしたいと宣言するような馬鹿がどこに居るんですか。あなたがそうだから私は全力で守らなければいけない」
悪びれもせずにリシェといちゃいちゃしたいだの、恋だの愛だのと聞くにたえない事を喋りだされる側にもなって欲しいものだ。
くだらない…とオーギュスティンはうなだれる。
いい年をして自分の感情のコントロールすら出来ないとは。もう少し冷静になればいいのにと思わずにはいられない。
すると向かい合わせに座っていた体育教師のヴェスカが、「俺もロシュ先生の気持ちは分かる気がするよ」と頼みもしないのに話に参加してきた。
仲間が居たとばかりに、ロシュは目を輝かせる。
「…でしょう!?」
「あなたもまた要らん事を言って餌を与えないで下さいよ!」
喜びを露わにするロシュと、心底面倒そうなオーギュスティン。
「俺だって好きな相手にはめちゃくちゃ押すタイプだからな。そうでもしなきゃ相手に理解してくれねぇだろ?」
朗らかに笑いながらヴェスカはロシュの言い分に理解を示した。
それならお二人で仲良く話していればいいじゃないですか、と教材を纏めて首を振った。
「そうですよ、私の場合道は険しいのでね。本人にしっかりアピールしないと…向こうでは恋人だったのだから…」
ロシュはとにかくリシェをこちらの世界でも恋人にしたいと願っているのだ。他の人間は元の世界の記憶が無い為に完全孤立無援の状態だが、ヴェスカが少しだけ自分の気持ちの理解をしてくれた事に内心安堵していた。
とにかくリシェが欲しい。それだけなのだ。
「やっぱアピールは必要だな。まあ、散々アピールしても全っっっく反応が薄いと難易度高いんだけどさぁ…なあ、オーギュスティン先生?」
「は?」
名指しされ、オーギュスティンは反射的に顔を上げて思い切り嫌そうに表情を曇らせる。
「おや…おやおやおやぁあ??」
その様子を目の当たりにするロシュは、面白いものを見たと言わんばかりに両者を交互に見回した。んふふ、といやらしい笑みを浮かべると、ロシュは「なるほど」と呟く。
「何です、ヴェスカ先生の気になるお相手って…あっはあ、確かにそうですよねぇ。元ネタに忠実ですからね!把握把握」
オーギュスティンは不愉快そうな様子ですぐ隣に居るロシュの腰に向けてドスンと一発拳を入れた。
「んっひ!!?」
いい所に拳が入ったようだ。妙に骨がぶつかるような音色も聞こえたが。
彼のしなやかな体がかくりと傾き、へなへなと沈み込んでしまう。あぁああ、と情けない声がロシュの口から漏れ出していく。
同時に授業開始予告の鐘が校舎内に鳴り始めた。
外部は生徒らが急ぎ足で教室に戻っていく足音が聞こえてくる。
「馬鹿馬鹿しい話はもうおしまいになさい」
沈んでいるロシュを無視し、オーギュスティンは席から立ち上がるとニヤニヤするヴェスカに向かって「あなたもご自分の授業があるでしょう」と冷静に告げた。
堅物。とにかく堅物。
さっさと職員室から出ていくお堅いオーギュスティンを見送った後、ヴェスカは身を起こし沈んだロシュに大丈夫ですか?と声をかける。
「ええ、ええ。大丈夫です」
「そか。良かった。何かゴキって聞こえた気がしたから」
「ははは…心配無いですよ…んっふ…痛っ」
ロシュは眉間に皺を寄せながら、この位でへたばっていたらあの子を悦ばせてあげられませんしねと意味不明な事を呟いていた。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる