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真・らぶ・TRY・あんぐる 二十六
しおりを挟むというわけで、自宅に帰ってきた佑。
そして、私服の留美が妹の横で寛いでいるのを見た。
「あ、佑クン、お帰りなさい」
「あのね、お兄ちゃん」
留美や冴英の説明を聞くまでもなかった。
佑は自分のかりそめの休息が永久に終わったのを知った。
気分としてはトイレ(註・鍵がかかる自宅唯一の室なので)に駆け込み、頭を抱えて唸っていたいところだった。
しかし、いろいろとそういうわけにもいかないし、いくまい。
家族と留美の醸しだす雰囲気は、そんなことを許すものではなかったのである。
「……って佑クンが……」
「え、そんなことしたのお兄ちゃんが?」
当事者である自分を完全に置き去りにし、留美は家族と談笑している。
決して、決して最悪の状況ではないハズなのだが、佑の心にはわだかまりがあった。
無論『媚薬』のことである。
彼はもともと井沢正の実力に恐れいっていたが、自分がその対象にされるというのではまた話が別だ。
しかし、それは仕方がないかもしれない。
彼・井沢正にとり、ごく少数の例外を除いて、まわりの大部分の人間は『モルモット』、またはその予備軍以外の何ものでもないからである。
つくづく、はた迷惑な話だった。
さて――
留美がやってきてから、ひとつの屋根の下で佑がどんな目にあっているか、それを語るのは少々控えたい。
『お互いの部屋に鍵はついていない』
と語るだけでだいたい予想できるだろうし、誰もが読むことができる状態で詳しく描写すると風紀を乱すようなことになりかねないからである。(作者註・というワケで、例によってその部分はカットせざるを得ないのだ。 悪しからず)
ただこれだけは伝えておこう。
彼らは一線を越えなかった。
つまり留美も佑もまだ『未経験』なのである。
この時点では。
そして――
ここらで視点を移すことにしよう。
なんとなれば、佑の想い人・立村由香のことを語るときが来たようだからだ。
あらためて言うが、これまでの話だけでは三角関係ではなく留美から佑へ・佑から由香への一方通行でしかない。
もっと端的に言えば『留美のアタック大作戦』というニュアンスであった。
これまで佑の思いも留美の思いも数多く語ってきた。 由香の思いを語る機会がここまで少ないのは不公平というものだろう。
このままでは彼女が佑の『かつて好きだった相手』に過ぎなくなるし、由香自身の恋心を完全に無視していることになる。
それは如何なものだろうか。
是正されてしかるべきである。
由香とて血のかよった人間なのだから。
「はあぁ……」
由香は溜め息をついた。
最近、妙に自分の気持ちがすっきりしないのだった。
それはあの日以来のことだ。
そして留美と佑・二人の仲睦まじい様子を見ていると
『ツクン』と胸の奥が疼くのだ。
「……まさか乳ガンでもあるまいし……」
そう冗談めかしてひとりごちる。
だが由香にはわかっていた。
(自分ごまかしてもダメだな……これ、嫉妬だ)
そして、誰への嫉妬かもわかっている。
「留美……佑くん……」
そう呟く。 すると、また『ツクン』がやってくる。
「でも、こんなこと……」
そう、とてもではないが告白するわけにはいかない、と由香は思っていた。
だが、理性では『ツクン』はおさまりそうになかった。
それどころか、日に日に大きくなるような気がする。
だから由香は、だんだん二人と距離を取るようになっていった。
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