『真・らぶ・TRY・あんぐる』

倉智せーぢ

文字の大きさ
41 / 52

真・らぶ・TRY・あんぐる 三十八

しおりを挟む

佑は二人の間で上半身裸になっていた。
いや、正確にいうなら上半身のパジャマとシャツを脱がされていた。
留美と由香の二人に、である。

別段色っぽい展開ではない。
入浴代わりに身体を拭く……専門用語で言うと『清拭せいしき』のためであった。

実をいえば、由香は看護師に憧れていた。
小学生のころに盲腸で入院して以来のことらしく、今では知識だけは准看じゅんかんなみであった。
だからこそ、佑がケガした時に手出しせず黙って見ていたのだった。
看護師が勝手に処置してはいけない事を知っていたからである。
だが、留美の意見を聞いて、清拭くらいは問題がないだろうと判断し、実行に移すことにしたのである。

とはいえ、同年代の男の子の裸体を、たとえ上半身だけとはいえこんなに間近に見るのは初めての経験だった。
それは留美も同様で、二人はほんのり頬を火照らし、佑の顔は火照りに火照っていた。
「佑クンて、けっこう逞しいのね」
思ったより佑は胸板が厚かった。 けっこう着痩せするタイプなのである。
とはいうものの、筋骨隆々なのではない。 飽くまでも着衣のときよりは逞しく見えるというだけなのであった。


で、本来息子の世話をするべき母親はどうしているかというと、前日に留美から聞き出した場所、つまり留加が屋台を出している場所へ向かっている真っ最中なのだった。
例によって、話は少々さかのぼるが、ご理解いただきたい。



「留美ちゃん、由香ちゃん? 二人とも佑をお願い致しますわ。 あたくしはちょっと用事があって出かけてきますからね」
いつもより幾分デラックスな服装で二人に告げる。 昨日の今日で佑美が行動を起こすとは、留美の想像の範疇外はんちゅうがいのことで夢にもそんなことは思っていない。
留美にとっても由香にとっても佑美のお願いは願ったり叶ったりというものであった。 二人とも、少しでも佑に助けて貰った恩を返したい、そう思っていたからである。
だが、佑にとっては困惑のタネ以外の何ものでもない。

昨日と同じく二人に挟まれ、佑は汗をだらだらと流していた。
「佑クン、すごい汗」
それは二人のせいだ、などと言える佑ではない。
「拭いてあげるね」
「ちちちちちょっと待って」
待つ筈がなかった。
そして、まだあまり身動きのとれない佑は、あっと言う間に留美と由香の二人に上半身を裸にされていたのである。

汗のおかげで湿布も剥がれかかっていた。
「ユカちゃん、タオル絞ってきてくれる? あたしは佑クンの下着の着替えと湿布用意するから」
「うん、わかった」
タオルを4、5枚持って階下の洗面所へ向かう由香。
そのかん留美は、勝手知ったる恋人の部屋という感じで手早く替えのシャツとトランクスを用意する。
そうこうするうちに由香がお湯につけて絞ったタオルを持って戻ってきた。
「ありがと、ユカちゃん」
「どう致しまして」
そして、由香が体の前面を、留美が背面を担当し、佑の体を丁寧に拭きはじめた。
「ちょ、く、くすぐっ」
「佑くん、動かないで」
由香がそう言って押さえつける。
その点、留美の担当している背中はそれほどくすぐったくはない。
だが、留美は唐突に佑のうなじから背筋へと口づけた。
「ひあっ!?」
背筋に唇を這わせられ、びくん、と体を震わせる。
「ふふっ、佑クンて背中感じやすいんだね」
留美のオヤジ的発言に、由香はあきれ返り、佑は顔どころか全身を真っ赤にした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...