『真・らぶ・TRY・あんぐる』

倉智せーぢ

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真・らぶ・TRY・あんぐる 四十五

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つき合っている彼女の家に、自分の想い人であり恋敵でもある相手を、とうの恋人が呼んだというこの状況。
佑にとってはだまし討ちに近いが、致し方ないことだろう。
だいたい、だまし討ちに近かろうと事態は進展を見せているので今までに比べればかなりましである。
今までは言わば『事態は踊る』というものだったのだから。


ともあれ、由香が水瀬家へやってきてもまだ佑は虚脱状態だった。 だから留美が由香を出迎えに部屋を出たのにも気づくどころではない。
留美は玄関先で由香と熱烈なディープキスを交わした、というより由香にディープキスを見舞った。
由香が玄関に入って来た途端に先ほどと同じように首の後ろに腕を回し、唇を合せて貪るように舌を……。
周りに誰もいなかったせいもあるが、例え誰かがいたとしても留美は気に留めなかっただろう。
彼女の主観では何も悪いことをしていないのだから。
由香もいくらかの間茫然としていたが、佑と違ってすぐに立ち直り、留美が唇を離すと
「る、留美、いいの? あたしと……いいの?」
そう訊いた。
「うん、今佑クンも来てるよ」
「え」
留美の無邪気なもの言いに、由香は混迷に陥った。
(なんで? どうして? 佑くんと別れてあたしを選んでくれたの? それって佑くんに申し訳が……でも、それならどうして彼が来てるの? もしかして修羅場?)
というような思いが頭の中をぐるぐると回りだしてしまったのだ。
そして、気がついたら留美の自室で佑の対面に座っていたのだった。
「ゆ、由香ちゃん?」
由香より一瞬早く正気に戻る佑。 そして由香も正気を取り戻した。
「佑く、ん……」
とはいっても、お互いまだ混乱からは完全に醒めていない。
二人にとって、留美の言動は想像の範疇を越えたものであったのだ。
留美は二人とトライアングルを描くような位置にちょこん、と座り
「二人とも、大丈夫?」
と彼らの目を交互に覗きこんだ。
「う、うん」
「大丈夫よ、留美」
にっこりと微笑む留美。
「よかった! ね、佑クン、ユカちゃん」
聞いてくれる? とコケティッシュに首を傾げると、由香そして佑さえも鼓動が早くなってくる。
二人が頷くのを見届けて留美は話しはじめた。
「あたしは、佑クンの気持ちもユカちゃんの気持ちも、そしてもちろん自分の気持ちも知ってる」
自分の言葉を確認するように頷いて続ける。
「佑クンも、あたしの気持ちもユカちゃんの気持ちも知ってるの。 でもね」
今まで真顔だったのがだんだんと目が笑いはじめている。
どういう心境なのかは留美自身にもわからないが、笑みが洩れだしてくるのだ。
それは『予感』というものだったかもしれない。
「ユカちゃん、あたしの気持ちも佑クンの気持ちも、そしてひょっとすると」
小悪魔のようなスマイルになって更に続けた。
「ユカちゃん自身の気持ちもよく知らないんじゃない?」
その指摘に由香は当惑した。 思い煩っている体の彼女を慈しむように見、次に佑を見る。
「だから、言い出しっぺのあたしから打ち明けるね? あたしは」
ごくん、と生唾を飲みこみ
「佑クンが好き。 大好き」
何度となくいった言葉なのだが、なぜか留美は感慨深そうに目を伏せ
「そう、佑クンになら何をされても、うん! 裏切られても殺されても許しちゃうくらい好き」
また極端な。
佑はそんなことできないだろうし、考える事ができるかさえも怪しいだろう。
その証拠に真っ青になって手を顔の前でブンブン振っている。
「それに、ユカちゃんのことも好きよ。 友達以上、親友以上に。 さっき佑クンには言っちゃったけど」
えへ、と照れ笑いして
「ユカちゃんと肉体関係もってもいいくらい好きよ?」
そう告げられて彼女は留美に告白した時よりも感動していた。 涙が溢れそうになり、行為に及ぼうとするのを必死で抑える。
「ね、ユカちゃんは?」
無邪気に促され、無理矢理心を落ち着けた由香は、静かに話しだした。
「前にも言ったけどあらためて言うわ。 好きよ、留美」
佑は少々衝撃を受けた。 少々で済んだのはあらかじめ留美から聞いていたからであるが、それでも本人の口から聞くのはショックだった。
「何度この想いを打ち消そうと思ったか」
段々うつむいていく顔をいきなりあげて
「でもダメ! どうしても思い切れなかった」
少し間をおいて続ける。 もやもやしていたものが急にハッキリしてきたのだ。
「でも」
明らかになってきた想いを口にする。
「佑君も、好き、みたい」
佑は先ほどとは別の衝撃を受けた。 留美は『ね?』という視線を由香に、そして佑におくる。
「キスしたの思い出してドキドキするし……。 佑くんのケガが治るまでお世話をしてたら、なんか佑くんのことがどんどん気になってきてて」
由香も今やっと佑への気持ちが自分の内にあることを意識したのだ。 留美は既に彼女の佑への気持ちに気づいていたらしい。 留美のカンが鋭いのか、由香がわかりやすいのか、あるいはその両方か。
「でも! だけど、そんなのって!」
「ストップ」
自らの言葉に興奮し、放っておくと暴走をはじめそうな由香を留美が制止する。
「ね、ユカちゃん落ち着いて? 結論を急いじゃダメ。 まだ佑クンの気持ち聞いてないでしょ」
そして佑に向き直り
「佑クン?」
と、ショックの連続で半分硬直している彼に催促するように声をかける。 おずおずと佑は口を開いた。
「僕は」

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