71 / 105
第一章(約11万字)
第70話:自決
しおりを挟む
どうやら、ラッシュも俺と同じように《収納魔法》を使えるらしい。
「この鳩には、アリアが死んだ旨を記した手紙を持たせている」
「アリア、死んでないけど」
不満気なアリアが反論するが、ラッシュは気にすることなく説明を続けた。
「不本意なことは分かっているが、アリアを守るには都合が良いんだ。ミッション中に死んでしまったことにすれば、少しでも時間を稼げる」
確かに、裏切ったのではなく死んだことになっていれば、アリアが魔族にすぐに命を狙われることはなくなる。
魔族は俺を追うだろうし、いずれはアリアの生存はバレてしまううとしても、その間に俺が魔族たちと戦える力を身につければ問題ない。
悪くない作戦だとは思う。
「だけど、魔族たちは僕が一度彼らを裏切ったことを当然知っている。ただでさえ今は人間大陸へのミッション中なんだ。僕の手紙だけで信じるかというと怪しい」
そう言うと、ラッシュは死霊術を使う。
幾何学模様の魔法陣から、獰猛な一体の死霊ウルフを召喚した。
「じゃあ、どうすれば信じてもらえるか。答えは、これだ」
「お、おい……! ちょっと待て! 早まるな!」
ラッシュは死霊ウルフを後ろに配置し、鋭い爪を背中に突きつけさせていた。
要するに、アリアが死んだという報告だけでは怪しまれる可能性があるため、ラッシュもその後死んだということにすれば信憑性が高まるという結論なのだろう。
「勘違いしないでくれ。あくまでもタイミングの問題なんだ。師匠……レジンさんに迷惑はかけられない。今、僕がここで死ぬのが一番効率的な命の使い方ってだけなのさ」
いや、何を言ってるんだ……?
ただでさえ情報過多で混乱中のアリアが見たらどう思うか……その程度のことも考えられないのか?
「じゃあ、アリアを頼んだ……」
と、自身が召喚した死霊ウルフに背中から胸を貫く一撃を指示するラッシュ。
「クゥ……」
いや、勝手に死なせるかよ。
困惑気味の死霊ウルフが攻撃を仕掛けようというタイミングで、俺は火球を放った。
ラッシュを狙う死霊ウルフを狙う軌道。
だが——
「なっ!」
ラッシュは、俺の火球を阻むようにもう一体の死霊ウルフを召喚し、被弾させたのだった。
衝撃が吸収され、狙った場所に届かない。
そして、そのまま死霊ウルフの爪がラッシュの心臓を突き破ってしまった。
ザクッ‼︎
鮮血が宙を舞い、力を失ったラッシュの身体は崩れ落ちたのだった。
いや……嘘だろ。
どうして、こうなる……?
「……クソッ!」
つい数日前に、クラスメイトたちが白銀の狼に殺された光景がフラッシュバックする。
経緯は違うにせよ、人が目の前で死ぬ場面というのは、後味が悪すぎる。
「この鳩には、アリアが死んだ旨を記した手紙を持たせている」
「アリア、死んでないけど」
不満気なアリアが反論するが、ラッシュは気にすることなく説明を続けた。
「不本意なことは分かっているが、アリアを守るには都合が良いんだ。ミッション中に死んでしまったことにすれば、少しでも時間を稼げる」
確かに、裏切ったのではなく死んだことになっていれば、アリアが魔族にすぐに命を狙われることはなくなる。
魔族は俺を追うだろうし、いずれはアリアの生存はバレてしまううとしても、その間に俺が魔族たちと戦える力を身につければ問題ない。
悪くない作戦だとは思う。
「だけど、魔族たちは僕が一度彼らを裏切ったことを当然知っている。ただでさえ今は人間大陸へのミッション中なんだ。僕の手紙だけで信じるかというと怪しい」
そう言うと、ラッシュは死霊術を使う。
幾何学模様の魔法陣から、獰猛な一体の死霊ウルフを召喚した。
「じゃあ、どうすれば信じてもらえるか。答えは、これだ」
「お、おい……! ちょっと待て! 早まるな!」
ラッシュは死霊ウルフを後ろに配置し、鋭い爪を背中に突きつけさせていた。
要するに、アリアが死んだという報告だけでは怪しまれる可能性があるため、ラッシュもその後死んだということにすれば信憑性が高まるという結論なのだろう。
「勘違いしないでくれ。あくまでもタイミングの問題なんだ。師匠……レジンさんに迷惑はかけられない。今、僕がここで死ぬのが一番効率的な命の使い方ってだけなのさ」
いや、何を言ってるんだ……?
ただでさえ情報過多で混乱中のアリアが見たらどう思うか……その程度のことも考えられないのか?
「じゃあ、アリアを頼んだ……」
と、自身が召喚した死霊ウルフに背中から胸を貫く一撃を指示するラッシュ。
「クゥ……」
いや、勝手に死なせるかよ。
困惑気味の死霊ウルフが攻撃を仕掛けようというタイミングで、俺は火球を放った。
ラッシュを狙う死霊ウルフを狙う軌道。
だが——
「なっ!」
ラッシュは、俺の火球を阻むようにもう一体の死霊ウルフを召喚し、被弾させたのだった。
衝撃が吸収され、狙った場所に届かない。
そして、そのまま死霊ウルフの爪がラッシュの心臓を突き破ってしまった。
ザクッ‼︎
鮮血が宙を舞い、力を失ったラッシュの身体は崩れ落ちたのだった。
いや……嘘だろ。
どうして、こうなる……?
「……クソッ!」
つい数日前に、クラスメイトたちが白銀の狼に殺された光景がフラッシュバックする。
経緯は違うにせよ、人が目の前で死ぬ場面というのは、後味が悪すぎる。
34
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる