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第1章:魔法学院入学編
第12話:最強賢者は驚愕する
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「あのね、ユーヤ。あなたのお父さんの名前は?」
「レイジス」
二度目のやりとりである。
「あなたのお父さん、伝説の剣士だから」
「へ?」
何言ってんだリーナは……。
普通のおっさんだぞ? まあ確かにレイドボスのブラックベアーを倒した時はそれなりにダメージが入っていたし、決して弱くはないが、田舎の下級貴族じゃないか。
「多分それ別人だぞ。俺の父さんは貴族とはいえ田舎住みだしな。そういう偉い人はみんな都会に住んでいるもんだろう?」
「はぁ……。レイジス様は辺境の町『クーネ』に住んでいるのは確かよ。……でも、それだって理由があってのことなの」
「理由?」
「知らなかったの? クーネの町には強力なモンスターがうようよいるわ。普通は弱いはずのスライムだって、『狂戦士』でもしっかり準備しないと殺されるのよ?」
「そ、そうなのか……」
スライムがそんなに強かったとは……。
父さんとちょっと町の外まで散歩したときはどっちがたくさんスライムを狩れるか勝負したというのに……。
なお結果は169勝169敗。
父さんは剣士のくせにめちゃくちゃ動きが速い。
「わかった? もしアナタがレイジス様と同じくらいの実力があるというなら……いえ、考えたくもないわね」
うん、……最近は何度か勝てるようになりました。
まさか父さんがそこまで強いとは思わなかったな。家族思いの優しい普通のおっさんじゃなかったのか……。
「そういえばつい最近、ブラックベアーが『クーネの町』に現れたと聞いたけど」
「ああ、それは俺と父さんで倒した」
「……一応聞くけど、何人で?」
「ん? 二人だぞ。一応衛兵もいたけど駆け付けた時には全滅してたしな」
リーナはまたもや溜息をつく。
「私が保証するわ。あなたは絶対、剣術試験に合格する」
「お、おう……まあそのつもりだけどな」
誰だって落ちると思って試験を受けないだろ?
『落ちても仕方ない』ならまだしも、『必ず落ちる』試験なら受けるだけ無駄だ。
そんなやり取りをしていると、試験官の一人が前に出てきた。
「それでは、一次試験の合格発表を行います。こちらに記載のない方は落選ですので、速やかにお引き取りください」
ブロックごとに紙が貼られていく。
Lブロックは……
一位:ユーヤ・ドレイク……A
二位:リーナ・ブライアース……A
三位以下に興味はないので、俺とリーナが合格していたことだけを確認した。
名前の後についている『A』と『B』の正体が気になるが、後で説明されるだろうと思ってスルーする。
このアルファベットはA~Dまであり、10名にそれぞれ割り当てられていた。
「それでは、二次試験を行いますので、合格者の方は剣術場にお集まりください」
試験官の誘導に従ってついていくと、およそ500メートルほど離れた場所にそれはあった。
外見は日本の学校にあった剣道場に少し似ている。
日本の学校と違うのは、その広さである。
小学校の体育館を10倍したくらいの広さを持つ剣術場は、床に線が引いてあった。
仕切りのつもりなのだろう。4つのブロックに分かれている。
「それでは、A組の方は1番試験場へお進みください!」
剣術場の奥。向かって左のブロックにはゴツイ装備を着たおっさんが手を挙げていた。
なんか俺を見ているような気がする。
「なにボサっとしているの? いくわよ」
「ん、俺たちってA組なのか?」
「さっきの張り紙見たでしょう? A組に割り当てられていたじゃない」
そういえば、名前の後にAとかBって書いてあった気がする。
次の試験の割り当てということなら説明してくれればいいのに。ボッチだったら迷っていたところだ。
☆
「よーし、お前ら集まったな? お前らの相手をするのはファーガス・マグワイアだ。お前らには、今から俺と剣を交えてもらう」
ファーガスはチラッと俺を見た。
マジかよ……。
ファーガスおじさんと言えば、父さんの飲み仲間じゃないか。
たまに家に来て俺に剣術を教えてくれたこともある。
まさか魔法学院の教官だとは思わなかったぞ。
「よーし、じゃあまずはそこの――ユーヤ・ドレイクと剣を交えようぞ」
まさかの名指し。
まあ、知り合いのおじさんだと言っても、ここは試験場だ。真面目に対応しよう。
俺は他の受験者からの注目が集まる中、前に進んでいく。
ファーガスと眼が合う。
「あんまり俺は目立ちたくないんで、こういうのは控えめにお願いしますよ。ファーガスおじさん」
俺のいたって真面目な訴えを聞いたファーガスは全力で笑い出す。
「なにを言うかと思えば目立ちたくないとはな! カカカ! ユーヤ、もうお前は魔力検査で十分目立ってるから大丈夫だ! これ以上目立つことはない」
え? そんなに俺目立ってたっけ?
ちょっと魔力結晶を二個ほど粉砕しただけなんだけど。
「ほれ、早く剣を構えんか」
足元には真剣が置かれていることに気づく。
まさか試験でこんなものを使うとはな。……さすがは魔法学院か。
「……あれから俺は強くなった。今度はファーガスさんにも勝たせてもらう!」
「レイジス」
二度目のやりとりである。
「あなたのお父さん、伝説の剣士だから」
「へ?」
何言ってんだリーナは……。
普通のおっさんだぞ? まあ確かにレイドボスのブラックベアーを倒した時はそれなりにダメージが入っていたし、決して弱くはないが、田舎の下級貴族じゃないか。
「多分それ別人だぞ。俺の父さんは貴族とはいえ田舎住みだしな。そういう偉い人はみんな都会に住んでいるもんだろう?」
「はぁ……。レイジス様は辺境の町『クーネ』に住んでいるのは確かよ。……でも、それだって理由があってのことなの」
「理由?」
「知らなかったの? クーネの町には強力なモンスターがうようよいるわ。普通は弱いはずのスライムだって、『狂戦士』でもしっかり準備しないと殺されるのよ?」
「そ、そうなのか……」
スライムがそんなに強かったとは……。
父さんとちょっと町の外まで散歩したときはどっちがたくさんスライムを狩れるか勝負したというのに……。
なお結果は169勝169敗。
父さんは剣士のくせにめちゃくちゃ動きが速い。
「わかった? もしアナタがレイジス様と同じくらいの実力があるというなら……いえ、考えたくもないわね」
うん、……最近は何度か勝てるようになりました。
まさか父さんがそこまで強いとは思わなかったな。家族思いの優しい普通のおっさんじゃなかったのか……。
「そういえばつい最近、ブラックベアーが『クーネの町』に現れたと聞いたけど」
「ああ、それは俺と父さんで倒した」
「……一応聞くけど、何人で?」
「ん? 二人だぞ。一応衛兵もいたけど駆け付けた時には全滅してたしな」
リーナはまたもや溜息をつく。
「私が保証するわ。あなたは絶対、剣術試験に合格する」
「お、おう……まあそのつもりだけどな」
誰だって落ちると思って試験を受けないだろ?
『落ちても仕方ない』ならまだしも、『必ず落ちる』試験なら受けるだけ無駄だ。
そんなやり取りをしていると、試験官の一人が前に出てきた。
「それでは、一次試験の合格発表を行います。こちらに記載のない方は落選ですので、速やかにお引き取りください」
ブロックごとに紙が貼られていく。
Lブロックは……
一位:ユーヤ・ドレイク……A
二位:リーナ・ブライアース……A
三位以下に興味はないので、俺とリーナが合格していたことだけを確認した。
名前の後についている『A』と『B』の正体が気になるが、後で説明されるだろうと思ってスルーする。
このアルファベットはA~Dまであり、10名にそれぞれ割り当てられていた。
「それでは、二次試験を行いますので、合格者の方は剣術場にお集まりください」
試験官の誘導に従ってついていくと、およそ500メートルほど離れた場所にそれはあった。
外見は日本の学校にあった剣道場に少し似ている。
日本の学校と違うのは、その広さである。
小学校の体育館を10倍したくらいの広さを持つ剣術場は、床に線が引いてあった。
仕切りのつもりなのだろう。4つのブロックに分かれている。
「それでは、A組の方は1番試験場へお進みください!」
剣術場の奥。向かって左のブロックにはゴツイ装備を着たおっさんが手を挙げていた。
なんか俺を見ているような気がする。
「なにボサっとしているの? いくわよ」
「ん、俺たちってA組なのか?」
「さっきの張り紙見たでしょう? A組に割り当てられていたじゃない」
そういえば、名前の後にAとかBって書いてあった気がする。
次の試験の割り当てということなら説明してくれればいいのに。ボッチだったら迷っていたところだ。
☆
「よーし、お前ら集まったな? お前らの相手をするのはファーガス・マグワイアだ。お前らには、今から俺と剣を交えてもらう」
ファーガスはチラッと俺を見た。
マジかよ……。
ファーガスおじさんと言えば、父さんの飲み仲間じゃないか。
たまに家に来て俺に剣術を教えてくれたこともある。
まさか魔法学院の教官だとは思わなかったぞ。
「よーし、じゃあまずはそこの――ユーヤ・ドレイクと剣を交えようぞ」
まさかの名指し。
まあ、知り合いのおじさんだと言っても、ここは試験場だ。真面目に対応しよう。
俺は他の受験者からの注目が集まる中、前に進んでいく。
ファーガスと眼が合う。
「あんまり俺は目立ちたくないんで、こういうのは控えめにお願いしますよ。ファーガスおじさん」
俺のいたって真面目な訴えを聞いたファーガスは全力で笑い出す。
「なにを言うかと思えば目立ちたくないとはな! カカカ! ユーヤ、もうお前は魔力検査で十分目立ってるから大丈夫だ! これ以上目立つことはない」
え? そんなに俺目立ってたっけ?
ちょっと魔力結晶を二個ほど粉砕しただけなんだけど。
「ほれ、早く剣を構えんか」
足元には真剣が置かれていることに気づく。
まさか試験でこんなものを使うとはな。……さすがは魔法学院か。
「……あれから俺は強くなった。今度はファーガスさんにも勝たせてもらう!」
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