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第2章:第二学院創設編
第34話:最強賢者はエリスの上達に驚く
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それから六日が経ち、今日は学院対抗戦の前日。午後にはカリオン王国の学院生が集まるのだそうだ。
対抗戦は三学年がそれぞれ戦うことになるが、その順番は毎年ランダムになっている。
今年は一日目が三年生、二日目が二年生、三日目が一年生という微妙に盛り上がりに欠けるような順番になっていた。学院長同士がクジを引いて順番を決めるらしい。
学院対抗戦は、学院同士の親善試合だが、アリシア王国とカリオン王国の友好の証でもある。お互いに正々堂々と全力で戦うのが暗黙の了解だ。
俺もついに前日ということで、どんなやつが来るのかとちょっとドキドキしていた。
「ユーヤ、こんな時間に呼び出しちゃってごめんね」
「謝らなくていいよ、エリス。自信がつけば緊張もちょっとは解れるだろうし」
学院対抗戦に出場するメンバーは、前日ということで授業を免除されている。……とは言っても、補講が準備されているわけではないので、授業は受けるつもりだった。リーナは今も普通に授業を受けている。
今朝エリスにオリジナル魔法の最終確認をしてほしいと頼まれたので、それに付き合っているという状況だ。場所は魔法式研究会の部室――魔法演習室だ。
俺が顧問になっているので、放課後じゃなくても許可なく部屋を使うことができる。
「ありがと、じゃあ早速だけど見てて」
エリスは素早い動きで腰に提げた剣を抜き、魔法を始めた。銀色の剣が光り輝き、さらに強く硬くなっていく――。
それだけじゃない。刀身の部分が超スピードで振動していた。
もともとエリスのオリジナル魔法は【剣強化】だけだった。心を通わせた剣に魔力を纏わせ活性化させることで、剣のポテンシャルを限界まで引き上げる。……それでも試合に勝つくらいなら十分だった。
でも、俺は彼女に一つアドバイスを与えた。
剣はただ単に鋭くするだけが攻撃力アップに繋がるのではない。刀身を高周波振動させることで、ポテンシャル以上に引き上げることができるのだ。
俺が前世の記憶で知っている多くのSF作品では、そんな仕組みの武器で格上の敵を屠っていた。最強の剣士がさらに強くなれば鬼に金棒。これならエリスが負けることはない。
「どう……かしら?」
「バッチリだよ。あれからほんの数日でここまで使いこなすなんて流石としか言いようがない。これなら明日の対抗戦も絶対勝てるよ」
「本当!? 二人の足を引っ張ってられないもの。……明日、絶対勝つから!」
「まあ、その気持ちは良いんだけど、試合中も無理だけはするなよ? 引くところは引かないと最悪命を落とすことだってあるんだ」
「わかってる……でも、やれるところまではやるわ!」
「それで十分だ。……俺からアドバイスするところは特にない。明日まで体調を崩さないようにするだけで充分さ」
「明日まで……ギリギリまでできることをするわ」
エリスはかなり気合が入っているようだった。そういえばこの学院に入学してから初めての行事なんだよな。学院生はみんな盛り上がってるというし、興味が無いのは俺だけかもしれない。
どうせ俺より強い奴が同世代にいるわけがないからな。
「今日の昼にカリオン王国の学院生が来たら挨拶をする段取りになってるんだ。一応は自由参加だが、できればみんなで集まっていきたい」
「わかったわ。リーナには伝えてある?」
「同室だから昨日のうちにちゃんと伝えてあるぞ」
「同室……そういえばそうだったわね」
なぜかエリスは悔しそうに唇を噛んだ。闘志をメラメラと燃やしている。……気合入りすぎだろ。対抗戦は明日なんだぞ?
「ちなみにユーヤはカリオン王国の人たちってどんな人かわかる?」
「うーん、知らないんだよな。事前情報はどっちの学校も渡してないから何とも言えない」
「そっか……まあそうよね」
「すまんな」
「気にしないで! じゃあ昼になるまでここで練習してていいかな? できればずっと見ててほしいんだけど……」
エリスは上目遣いで俺を見つめる。俺の方が背が高いから目を見て話すとこうなるから仕方ないんだけど、不意にやられるとドキッとしてしまう。
「見るのはぜんぜんいいんだけど……俺が一緒だと練習に集中できなかったりしないか?」
「大丈夫、むしろ落ち着くわ」
「そうか、それならいいんだけど……」
こうして、エリスは俺の前で魔法の練習を繰り返し、俺はその様子をずっと見守るという時間が続いた。
昼休みになり、外が騒がしくなり始める。
いつもよりちょっとうるさいような気がした。
魔法演習室の扉をコンコンコンと叩く音がして、勢いよく扉が開いた。
リーナは授業が終わってすぐにここまで来たらしい。授業が終わってからまだ一分も経ってないのによくここまで来たもんだなあとその体力に感心した。
これも地道な筋トレのおかげだ。
「ユーヤ、相手校がもう来たって! そろそろ行くわよ」
「もう来たのか。……聞いてたより早いんだな。わかった、行こう」
俺はリーナとエリスと一緒に部屋を出て、校庭に向かった。
対抗戦は三学年がそれぞれ戦うことになるが、その順番は毎年ランダムになっている。
今年は一日目が三年生、二日目が二年生、三日目が一年生という微妙に盛り上がりに欠けるような順番になっていた。学院長同士がクジを引いて順番を決めるらしい。
学院対抗戦は、学院同士の親善試合だが、アリシア王国とカリオン王国の友好の証でもある。お互いに正々堂々と全力で戦うのが暗黙の了解だ。
俺もついに前日ということで、どんなやつが来るのかとちょっとドキドキしていた。
「ユーヤ、こんな時間に呼び出しちゃってごめんね」
「謝らなくていいよ、エリス。自信がつけば緊張もちょっとは解れるだろうし」
学院対抗戦に出場するメンバーは、前日ということで授業を免除されている。……とは言っても、補講が準備されているわけではないので、授業は受けるつもりだった。リーナは今も普通に授業を受けている。
今朝エリスにオリジナル魔法の最終確認をしてほしいと頼まれたので、それに付き合っているという状況だ。場所は魔法式研究会の部室――魔法演習室だ。
俺が顧問になっているので、放課後じゃなくても許可なく部屋を使うことができる。
「ありがと、じゃあ早速だけど見てて」
エリスは素早い動きで腰に提げた剣を抜き、魔法を始めた。銀色の剣が光り輝き、さらに強く硬くなっていく――。
それだけじゃない。刀身の部分が超スピードで振動していた。
もともとエリスのオリジナル魔法は【剣強化】だけだった。心を通わせた剣に魔力を纏わせ活性化させることで、剣のポテンシャルを限界まで引き上げる。……それでも試合に勝つくらいなら十分だった。
でも、俺は彼女に一つアドバイスを与えた。
剣はただ単に鋭くするだけが攻撃力アップに繋がるのではない。刀身を高周波振動させることで、ポテンシャル以上に引き上げることができるのだ。
俺が前世の記憶で知っている多くのSF作品では、そんな仕組みの武器で格上の敵を屠っていた。最強の剣士がさらに強くなれば鬼に金棒。これならエリスが負けることはない。
「どう……かしら?」
「バッチリだよ。あれからほんの数日でここまで使いこなすなんて流石としか言いようがない。これなら明日の対抗戦も絶対勝てるよ」
「本当!? 二人の足を引っ張ってられないもの。……明日、絶対勝つから!」
「まあ、その気持ちは良いんだけど、試合中も無理だけはするなよ? 引くところは引かないと最悪命を落とすことだってあるんだ」
「わかってる……でも、やれるところまではやるわ!」
「それで十分だ。……俺からアドバイスするところは特にない。明日まで体調を崩さないようにするだけで充分さ」
「明日まで……ギリギリまでできることをするわ」
エリスはかなり気合が入っているようだった。そういえばこの学院に入学してから初めての行事なんだよな。学院生はみんな盛り上がってるというし、興味が無いのは俺だけかもしれない。
どうせ俺より強い奴が同世代にいるわけがないからな。
「今日の昼にカリオン王国の学院生が来たら挨拶をする段取りになってるんだ。一応は自由参加だが、できればみんなで集まっていきたい」
「わかったわ。リーナには伝えてある?」
「同室だから昨日のうちにちゃんと伝えてあるぞ」
「同室……そういえばそうだったわね」
なぜかエリスは悔しそうに唇を噛んだ。闘志をメラメラと燃やしている。……気合入りすぎだろ。対抗戦は明日なんだぞ?
「ちなみにユーヤはカリオン王国の人たちってどんな人かわかる?」
「うーん、知らないんだよな。事前情報はどっちの学校も渡してないから何とも言えない」
「そっか……まあそうよね」
「すまんな」
「気にしないで! じゃあ昼になるまでここで練習してていいかな? できればずっと見ててほしいんだけど……」
エリスは上目遣いで俺を見つめる。俺の方が背が高いから目を見て話すとこうなるから仕方ないんだけど、不意にやられるとドキッとしてしまう。
「見るのはぜんぜんいいんだけど……俺が一緒だと練習に集中できなかったりしないか?」
「大丈夫、むしろ落ち着くわ」
「そうか、それならいいんだけど……」
こうして、エリスは俺の前で魔法の練習を繰り返し、俺はその様子をずっと見守るという時間が続いた。
昼休みになり、外が騒がしくなり始める。
いつもよりちょっとうるさいような気がした。
魔法演習室の扉をコンコンコンと叩く音がして、勢いよく扉が開いた。
リーナは授業が終わってすぐにここまで来たらしい。授業が終わってからまだ一分も経ってないのによくここまで来たもんだなあとその体力に感心した。
これも地道な筋トレのおかげだ。
「ユーヤ、相手校がもう来たって! そろそろ行くわよ」
「もう来たのか。……聞いてたより早いんだな。わかった、行こう」
俺はリーナとエリスと一緒に部屋を出て、校庭に向かった。
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