愛より大切な物語

asabato

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男の思惑でなくて私の思惑 1

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秀樹と待ち合わせの為、カフェの窓辺に座り外を眺めていた。その人混みの中で1人の男の行動が気になり追っていると、最初は道に迷ってキョロキョロしているのかと思った。けど、その男の対応する相手が、若い女性ばかりなのでナンパと気付く。 

それにしては髪は乱れ、日曜というのに革の鞄を持ち、出勤途中という出立。よく見ると靴紐は片方は解けていているし恰好が悪るすぎるので、ナンパと気付くのが遅くなった訳でもある。

さらに覗くようにしてみると、その行動は目的の女性を見つけると後ろを向きになり、タイミングを図り同じ方向に歩きだして声掛けしているのだ。

 ナンパのベテランなのかと含み笑いをしていたら、待ち合わせている秀樹から電話が入り「行けなくなった」と、謝りの連絡が入ってショックも重なる。

いくら急な用事が出来たとしても、連絡遅すぎるだろう・・と、苛立てしまった。いっその事、憂さ晴らしにナンパ男に接近してみようかと興味を示す。

ナンパして、ラブホテルでも行くのを誘っているのだろうか。嫌らしいと思っても私も秀樹とラブホに直行予定だったんだと、人の事を批判は出来ない立場であったので、男を責めることは出来ない。

ずっと男を見ていたら、引っかかってやろうと行動を起こしそうになっている。どんな言葉を掛けて誘ってるのかも気になり、自問自答している私はナンパの逆ナンなんだろうかと笑って、席を立ち会計を済ませた。

 出入口の自動ドアが開くと、あの男と同じ空気感を覚え、なるべく意識しないようにしたが声を掛けてもらおうと言う馬鹿げた考えに、足が前に進まなくなってビビる。

 立ち止まると目立つので仕方なく、歩きスマホでその男に向かって行くと、徐々にその距離は近くなると、気が付いたようであった。それは男は背を向けてナンパのポーズをしてきたからだ。 お茶しませんか・・と呼び止められたと思ったら「秘書しませんか」という。立ち止まることなく歩きながら「・・・」。返事をしないと男は、すぐ諦めそうだったので振り向いてやった。

 最近は諦めの早い男が多すぎるが、その男にも言えたので、すぐに立ち止まって私は予定も無いのに、わざと時計を見て「秘書って? 」

・・
そして今、カフェでナンパ男と一緒にいる。これは男の思惑でなくて私の思惑で、してやった ! と言い聞かせて、男の行動に合わせてやる。

見た感じは40代と思ったが、もう少し上だろうか・・私をどうするつもりか注意深く付きまとってやろうと、年上のナンパ親父を上から目線で話を聞くフリをすることにした。 つづく
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