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第8話「力」
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第8話「力」
村人の救出を終えたスカビオサが森を駆けていく一方、ベローチェは複数の男たちに囲まれていた。
彼らは、下心を丸出しにして、ベローチェを舐めるように見ている。しかし、一人だけ空気の違う者がいた。
「貴様が頭領か?」
ベローチェは視線を鬱陶しいと思いつつも、男へ声をかけた。彼は、ベローチェを見ながら「そうだ」と返した。
「なぜ村にちょっかいをかける?」
すると、男は笑い出した。
「はっはっはっ……!! そりゃ決まってる俺たちは貧しいからさ……」
「だから、女でも何でも奪うと?」
男はベローチェのローブから微かに見える赤いドレスを見て、にたりと笑った。
「あんたの格好を見るに……貴族だろ? いいよなあ、お貴族さまは、飢えを知らずに生きていけるんだからよお。貴族さまに下々の気持ちなんて分かるわけねえもんなあ!?」
「飢え? 確かに知らないな。今まで飲まず食わずだった」
「ああ? てめえ……ふざけてんのか?」
ベローチェは事実を述べたが、その事実は、目の前にいる賊を挑発してしまったようだ。
「ふざけてなどいない。長話は不要だ。貴様たちは生涯、村へ手を出さないと誓え」
「お嬢ちゃんは、余程世間を知らねえようだなあ!」
頭領は拳を振りかざした!
しかし、ベローチェへ当たることはなく、代わりに彼の拳が宙を舞っていた。ベローチェが体術を駆使したわけではない、頭領の拳だけが本当に飛んでいたのだ。
何が起きたのか理解した頃には、もう遅かった。頭領は、自身の右腕と床に落ちた拳を交互に見た後、地面に転がり、叫び声を上げていた。
「あぁぁぁぁあ!? 痛い!? 痛い~~っ!? てめえ、何しやがった!?」
ベローチェは、冷ややかな視線を向けたままやや気怠そうに言った。
「そう騒ぐな、少しばかり切っただけだ。さあ、誓え……――村に手を出さぬと」
頭領は、血走った眼のまま高らかに賊の常套句を吠えた。
「野郎ども……やっちまえ!!」
合図を皮切りに、賊たちは一斉にベローチェへ殴りかかってきた! ベローチェは唇を少し動かし、詠唱する。
「風の刃は、空をも切り裂く」
ベローチェの周囲に風が起こり、竜巻よりも鋭い刃で賊を刻んでいった。ある者は目を覆い、ある者は脚の腱が切れ、そしてある者は脈を絶たれた。
男臭かった部屋は一瞬にして、鉄の匂いが充満し、思わずベローチェは顔を顰めた。
(やはり、唱えると威力が増すか……)
魔法はイメージするものだとカルミアは教えたが、より高い攻撃性を持たせる場合は、お手本通りに唱えるのも手だとも教えた。もちろんカルミアは、詠唱の危険性と意味も教え込んだ。
複数人で行動する場合、無詠唱での魔法の行使はかなりの危険を伴う。なぜなら、自分以外の仲間が巻き添えを食う可能性があるからだ。そのため、魔法を扱う者は魔力を行使する合図として詠唱することが基本となっている。
加えて、魔力操作も怠ってはならない。
いくら合図したとしても対象や範囲を絞れなければ、先に述べた通り、編成部隊に被害が及んでしまうのだ。
ベローチェは、魔力耐久実験を存分に行う為にスカビオサと分かれたのだ!
(まあ、二手に分かれて行動したほうが効率も良い……)
圧倒的な「力」を見せつけられ、戦意を喪失した賊は、地面に蹲り、痛みに呻いている。但し、頭領は別だ。
頭領は血を吐きながらよろよろと立ち上がり、ベローチェを睨みつけた。
「クソっ、てめぇ……かは……っ、クソ魔女が……ッ!」
「まだ息があるとは……大したものだ。そうだ、元気があるなら村人へしたように、私に暴言を浴びせてみたらどうだ?」
ベローチェは床に転がり、藻掻き苦しむ賊たちを見て、口元に弧を描いた。
「……狂ってやがる……」
「死に際に残す言葉がそんな陳腐だったとは……時間を取った意味がないではないか」
「うる、せえ……っ!! てめえを、てめえを殺してやる!!」
頭領は、傷を治したら憂さ晴らしに村人を殺し、それからベローチェへ復讐する……そう考えていた。しかし、そんな考えは、ベローチェでなくとも手に取るように分かるだろう。
今この時、ベローチェは決断した。
――誓わせるなど、生ぬるい。全員、あの世へ送ってやろう!
彼女が腕を振り下ろした刹那、風の刃は、空をも切り裂き、悲鳴ごと掻き消した。
村人の救出を終えたスカビオサが森を駆けていく一方、ベローチェは複数の男たちに囲まれていた。
彼らは、下心を丸出しにして、ベローチェを舐めるように見ている。しかし、一人だけ空気の違う者がいた。
「貴様が頭領か?」
ベローチェは視線を鬱陶しいと思いつつも、男へ声をかけた。彼は、ベローチェを見ながら「そうだ」と返した。
「なぜ村にちょっかいをかける?」
すると、男は笑い出した。
「はっはっはっ……!! そりゃ決まってる俺たちは貧しいからさ……」
「だから、女でも何でも奪うと?」
男はベローチェのローブから微かに見える赤いドレスを見て、にたりと笑った。
「あんたの格好を見るに……貴族だろ? いいよなあ、お貴族さまは、飢えを知らずに生きていけるんだからよお。貴族さまに下々の気持ちなんて分かるわけねえもんなあ!?」
「飢え? 確かに知らないな。今まで飲まず食わずだった」
「ああ? てめえ……ふざけてんのか?」
ベローチェは事実を述べたが、その事実は、目の前にいる賊を挑発してしまったようだ。
「ふざけてなどいない。長話は不要だ。貴様たちは生涯、村へ手を出さないと誓え」
「お嬢ちゃんは、余程世間を知らねえようだなあ!」
頭領は拳を振りかざした!
しかし、ベローチェへ当たることはなく、代わりに彼の拳が宙を舞っていた。ベローチェが体術を駆使したわけではない、頭領の拳だけが本当に飛んでいたのだ。
何が起きたのか理解した頃には、もう遅かった。頭領は、自身の右腕と床に落ちた拳を交互に見た後、地面に転がり、叫び声を上げていた。
「あぁぁぁぁあ!? 痛い!? 痛い~~っ!? てめえ、何しやがった!?」
ベローチェは、冷ややかな視線を向けたままやや気怠そうに言った。
「そう騒ぐな、少しばかり切っただけだ。さあ、誓え……――村に手を出さぬと」
頭領は、血走った眼のまま高らかに賊の常套句を吠えた。
「野郎ども……やっちまえ!!」
合図を皮切りに、賊たちは一斉にベローチェへ殴りかかってきた! ベローチェは唇を少し動かし、詠唱する。
「風の刃は、空をも切り裂く」
ベローチェの周囲に風が起こり、竜巻よりも鋭い刃で賊を刻んでいった。ある者は目を覆い、ある者は脚の腱が切れ、そしてある者は脈を絶たれた。
男臭かった部屋は一瞬にして、鉄の匂いが充満し、思わずベローチェは顔を顰めた。
(やはり、唱えると威力が増すか……)
魔法はイメージするものだとカルミアは教えたが、より高い攻撃性を持たせる場合は、お手本通りに唱えるのも手だとも教えた。もちろんカルミアは、詠唱の危険性と意味も教え込んだ。
複数人で行動する場合、無詠唱での魔法の行使はかなりの危険を伴う。なぜなら、自分以外の仲間が巻き添えを食う可能性があるからだ。そのため、魔法を扱う者は魔力を行使する合図として詠唱することが基本となっている。
加えて、魔力操作も怠ってはならない。
いくら合図したとしても対象や範囲を絞れなければ、先に述べた通り、編成部隊に被害が及んでしまうのだ。
ベローチェは、魔力耐久実験を存分に行う為にスカビオサと分かれたのだ!
(まあ、二手に分かれて行動したほうが効率も良い……)
圧倒的な「力」を見せつけられ、戦意を喪失した賊は、地面に蹲り、痛みに呻いている。但し、頭領は別だ。
頭領は血を吐きながらよろよろと立ち上がり、ベローチェを睨みつけた。
「クソっ、てめぇ……かは……っ、クソ魔女が……ッ!」
「まだ息があるとは……大したものだ。そうだ、元気があるなら村人へしたように、私に暴言を浴びせてみたらどうだ?」
ベローチェは床に転がり、藻掻き苦しむ賊たちを見て、口元に弧を描いた。
「……狂ってやがる……」
「死に際に残す言葉がそんな陳腐だったとは……時間を取った意味がないではないか」
「うる、せえ……っ!! てめえを、てめえを殺してやる!!」
頭領は、傷を治したら憂さ晴らしに村人を殺し、それからベローチェへ復讐する……そう考えていた。しかし、そんな考えは、ベローチェでなくとも手に取るように分かるだろう。
今この時、ベローチェは決断した。
――誓わせるなど、生ぬるい。全員、あの世へ送ってやろう!
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