それぞれの日記をつけ始めた少女たち

神流

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水色の彼女は天職を謳歌する 1

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「この泥棒猫」

突然水を欠けられ朝顔は目をぱちくりと目を瞬かせた。
目の前に立つのは最近突っかかってくる生徒たち。

「…なんの話ですか?」
「とぼけんじゃないわよっ」

一番前にいる女生徒は水の入っていたコップをゴミ箱に捨ててから左手を腰に、右手をびしりと朝顔に向けていた。

「あんたが教練塔の方々を垂らしこんだんでしょっ」
「それに薬草園の管理人たちにも」
「錬金棟の人たちにも色目を使ってっ」

後方からもやんややんやといわれたが、なんのことかさっぱりわからない朝顔はただただ呆然とするしかなかった。
なぜならば教練塔に研究室をもらっていた朝顔は基本的に部屋に引きこもり研究三昧をしており、今日はつい一時間ほど前まで部屋の後片付けをしていたのだから。

「あの、すみません。本当に心当たりがないのですが。教練塔は私も部屋をもらっているので出入りはしてますし、錬金棟と薬草園は必要な素材を取りに行くくらいしか足を運んでいいないはずなのですが?」
「はぁあ? 口答えする気?? そっちがそうなら、この学園から出て行ってもらうから」
「あ、それは大丈夫です。出ていく予定なので」
「「「「え?」」」」
「それでは失礼します」

ポカンとした顔たちを見てから、一礼をしてその場を後にした。
しかしずぶ濡れのままではさすがに寒いので、教練塔の知り合いにシャワーを借りようと足を進めた。
そして乾燥機まで借りた朝顔は知り合いに見送られながら門までくると振り返り学園をみつめた。
そして半年前に起きたことを思い出した。



朝顔がこの学園に編入してきてから一カ月がたった頃から周りにおかしなことが起こり始めたのは。
正確にはよくよく見ればそれは些細なハプニングの連続なのだが、明らかにその頻度やかかわってくる人間がおかしいのだ。
例えば、教練塔では師事してくれる導師がことあるごとにからかい半分に接してきたり、世にいうツンデレと呼ばれる対応で絡んできたりする同輩。
植物をもらいに薬草園を訪れると園芸士や薬師見習いにことごとくお茶に誘われ、それ以外の物資を調達するために錬金棟に顔を出せば総務の担当に冷たくだが甘い言葉を吐かれ、年下の錬金術師からはなぜか会うたびに抱き着かれている。
そんなことが日常化しほとほと嫌気がさしてきた頃だった。
旅の行商が来るということで朝顔も足を延ばした。
そこで見たのはユニコーンが牽く行商馬車。
錬金棟の人たちは行商人にユニコーンの角をもらおうと殺到していたが、辟易した行商人がユニコーンから手綱を外した瞬間どこかへと消えてしまった。
それを追いかけて人が散っていった。
残った人はほとんどおらず、朝顔は何か掘り出し物がないかと物色していた時だった。

「あ」

聞こえてきた声に振り向くと件の行商人が驚いた顔をしてこちらを見ていた。
会ったことはないはずと首を傾げていると、何か考えるそぶりをしてからこちらに近づいてきた。

「あの、初対面で申し訳ないのですが。この後お時間ありますか?」
「え?」

 この出会いが朝顔の人生の転機だったと言える。
商売を終えた行商人と合流した朝顔は彼女からこの世界について教わった。
曰く、この世界は乙女ゲームの世界、もしくは類似の世界。
自分たちを含め複数人の転生者がいること。
そして自分が乙女ゲームの主人公枠である事。
愕然としたが、乙女ゲームに疎い朝顔でも、前世従兄弟がしていたのを見たり説明を受けたりしていたので、主人公と攻略者やり取りは知っている。が、ほぼゲームをしたことがない朝顔からしたらまさかあの過剰スキンシップがそれだとは全く思いいたらなかった。
頭を抱えたくなったが、行商人からある提案受け、朝顔は二つ返事で了承した。
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