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幻想冬歓
凛黎
しおりを挟む足元の沈むような感覚と、さぁ…っと消えてゆく白い息。全ての音を吸い込んで、抱きしめてしまいそうな純白に包まれる。ひんやりと肌を撫でる空気は心を洗ってくれるようだった。
「…寒い………。」
ぼそ、と呟く。あと何日生きられらのだったか。次の春を迎えられないのは確か。ならばいっそ、ここで、……
「透華……!!!!何してんだよっ!?」
後ろから、足元の雪を飛ばしながら走ってくる彼。妥当だろう。こんな雪の日に"病人"が出歩いているのだから。それも、暖かいコートのようなものなど一切羽織らずに。
「何って…見て分からない?春斗。」
「分かるわ、馬鹿野郎。超絶寒い日に馬鹿みたいに外出歩いてるんだろ?馬鹿みたいに。」
ついつい笑みが溢れる。馬鹿みたいに、は繰り返す必要性があっただろうか?春斗らしい。
「嫌いじゃないよ、そういうところ。」
「何言ってんだよばぁか、さっさと中は入るぞ。」
何も感じなかったのかのように淡々と返してくる。けれども差し出された暖かかった。
春斗とは幼馴染だ。幼い頃からよく遊んでいた。けれども私は受験を受け、春斗は地元の中学校へ。その時からあまり会わなくなってしまった。
別に特別寂しいというわけではない。ただの幼馴染だし、春斗がいなくても生きていける。寿命さえ残っていれば。
必死で勉強した。全てを捨てて。
遊ぶ時間も、休む時間も、ひたすらだらだらと過ごす日も、私はとらなかった。
『将来のために。』
なのに、どうして。必死で身に着けた知識も、命がなければ活かせない。私の余命は、あと、一月。
あと一月で何が出来る。海外旅行も行けるかもしれない。けれども病院から離れられないのにどうしろというのだろう。
ああ、夢に見た友人と談笑がしたい。談笑出来る友人なんてどこにもいないのだけれど。
私には、病院と、家族と、春斗しか、気にかけてくれる人がいない。春斗でさえも、私のことを鬱陶しく思ってるかもしれない。
なんのために頑張っていたんだろう。あと一月で何が出来るだろう。
「春斗………。」
「なんだよ?」
そっと口を開く。こんな問を投げかけなきゃいけないのは、春斗じゃないのに。
「私は、なんのために頑張ってたんだろう。あと一月で……何が出来るのかな。」
表情は変わらないけれど、息を呑んだのが分かる。やっぱり、聞いちゃ駄目だった。
私の全て…と言ったら大袈裟だけれど、殆ど知ってる春斗には答え難い、質問だった。
きゅ、と唇の裏を噛む。でもすぐに笑顔を作る。上手く作れてるだろうか。春斗なら見透かしてしまうかもしれない。
「ごめん、忘れ___」
「俺が、」
私の言葉が遮られる。じっとこちらを見つめる春斗の瞳に、私の焦点が重なる。
「俺が、透華がやりてぇこと全部やらせてやるよ。そんで、死んじ…まう、のはすげーやだけど…もしその時が来ても笑って逝けるように、俺が。してやるよ。」
真っ直ぐと私に向けられた瞳から、目をそらせない。そこに嘘が含まれていたとしても。信じたかった。縋りたかった。あと一月。最後の一月を幸せに過ごしたかった。
「何キザな台詞言ってんの。嫌いじゃないよ、ありがとう。」
にこ、と今度は本当の笑みを浮かべて感謝を述べる。もし叶うのなら。本当に実現できるなら。
誰でも嫌がる最後を、笑って迎えられるような一月にしたいと、切実に想うんだ。
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