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王子坊ちゃんのお披露目
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メイド達がニタニタしながら化粧をして髪を結っていく。王子坊ちゃんのお披露目パーティに出席する準備をしている。
1ヶ月前、王子坊ちゃんから箱を受け取った。
『その箱なに?』
『週末のお披露目におまえが着て行くドレスだ』
『……』
『ちゃんと締め付けのないドレスだよ』
『いつの間にサイズを?』
胸の前に腕を交差させた。
『馬鹿!子爵に聞いたんだよ』
『パパが!?信じられない』
話を聞いたら、王子坊ちゃんが“可愛い一人娘のためにドレスを作って愛でませんか”的なことを言ってのせたらしい。デザインは主にパパがデレデレしながら考えたのだとか。
パパ…
箱を開けると私の瞳の色のドレスだった。金色の刺繍糸を使っている。その下には小さな箱があった。
開けるとアクセサリーだった。
『イエローダイヤモンドだぞ』
『こんな高いの貰えないよ』
『子爵夫人のデザインだから返されても困る』
『チッ』
今私はそのときのドレスを身に纏い、化粧と髪結を終えてネックレス、イヤリング、ブレスレットを装着した。
一体いくら使ったんだろうか。
支度を終えて一階に降りるとパパとママがいた。
お揃いの衣装で相変わらず仲良し夫婦だ。
馬車に乗って王宮へ着くと私だけ別の場所に案内された。
中に入ると王族がズラリ。
「ひっ!…こ、国王陛下にご挨拶を申し上げます。
王妃様にご挨拶を申し上げます」
「挨拶はもういいからこちらへ来なさい」
「はい、陛下」
良かった。挨拶人数2人に省略できた。
「すまなかったね。ダリウスが迷惑をかけたとか」
「はい」
「……」
「あ、滅相もございません」
「よいよい。私はエリシアの素直なところも気に入っている理由の一つだ。正直に話してくれたらいい」
「ではお言葉に甘えてそういたします」
「王宮で弓の先生をしてみないか?いい小遣いをあげるよ?」
「教えるのはまた少し別の能力だと思います。私にはその才覚はなさそうです」
「ヴラシスが弓の腕をかなり上げたとか。エリシアが指導したのではなかったか?」
「見て吸収してもらいました。全てはヴラシス殿下の直向きな努力の賜物です」
「あの子を育ててくれてエリシアには感謝している」
「こちらこそ王子御免状をありがとうございます」
そこに口を挟む男がひとり。
「ダリウスが負けたって?」
「……」
「返事は」
「ご存知のことを聞かれて何と答えればよろしいのでしょう、ロイス王子殿下」
「“仰る通りです”」
「本当にそう答えてよろしいのですか?」
「何が悪い」
「皆様の前でそう答えれば、私は以降 ロイス王子殿下が負けたときや表に出したくないことを誰かに聞かれても大っぴらに肯定することになります。
その質問の目的がその後のお話しに繋がるのならば前置きを省くか前置きを変えるかなさった方がよろしいかと思います」
「ロイス、お止めなさい」
「母上」
「あなたは何が言いたいの?」
「…その…銀の翼に見せてもらえないかと」
「なら初めからそうおっしゃい」
「申し訳ございません」
「エリシア嬢、ロイスの願いは叶うかしら」
「王妃殿下からのご用命を承りました」
「ふふっ、お願いね。
ロイス。今のがどういうことか分かるわね?」
「…はい」
「分かっていないな」
「父上」
「エリシアは王妃の顔を立てた一方で保険を掛けたんだ」
「……」
「息子のロイスがエリシアに何かすれば全て王妃に跳ね返る」
「!!」
「関係のない学生の令嬢を引っ張り出したのだから6歳も歳上のお前が何かしたら、わずかな嫌味も周囲からは極悪人に見えてしまうぞ」
「肝に銘じます」
「そろそろご入場のお時間です」
「そうか」
王族全員が立ち上がった。
「では、失礼いたします」
「何を言っているんだ。そなたも行くのだぞ」
「はい?」
「ヴラシスのパートナーだろう」
「違います」
「違わないでしょう、ここにいるのだから」
国王陛下に王妃様まで…どういうこと!?
「俺のお披露目の目的は?」
「今後発生する公務を円滑に進めるためです。王子パワーを手っ取り早く顔で発揮させるために貴族の皆様にヴラシスの顔を覚えてもらうことです」
「…まあそうだ」
「ヴラシス、おまえが肯定するな。公務執行の妨げにならないよう協力を仰ぐためだろう」
「ダリウス兄上。エリシアには肯定することが一番の近道なのです。彼女に口では敵いません。
それにパートナーだというと来てくれないので単なる出席者だと思わせたのです」
「は?」
「駄目だろう」
「エリシア嬢、成人した王子のお披露目にはパートナーが必要なの。婚約者がいれば婚約者に頼むのだけどいないし、ヴラシスがあなたが出席を承諾したと言うからパートナーとしてだと思ったのよ」
「すまないがヴラシスの隣に立ってくれないだろうか」
うっ…陛下と王妃様に頼まれたらノーとは言えない。
「かしこまりました」
「エリシア、行こうか」
「陛下の頼みだから引き受けたけど、貸しだからね」
「いいよ」
はぁ…
1ヶ月前、王子坊ちゃんから箱を受け取った。
『その箱なに?』
『週末のお披露目におまえが着て行くドレスだ』
『……』
『ちゃんと締め付けのないドレスだよ』
『いつの間にサイズを?』
胸の前に腕を交差させた。
『馬鹿!子爵に聞いたんだよ』
『パパが!?信じられない』
話を聞いたら、王子坊ちゃんが“可愛い一人娘のためにドレスを作って愛でませんか”的なことを言ってのせたらしい。デザインは主にパパがデレデレしながら考えたのだとか。
パパ…
箱を開けると私の瞳の色のドレスだった。金色の刺繍糸を使っている。その下には小さな箱があった。
開けるとアクセサリーだった。
『イエローダイヤモンドだぞ』
『こんな高いの貰えないよ』
『子爵夫人のデザインだから返されても困る』
『チッ』
今私はそのときのドレスを身に纏い、化粧と髪結を終えてネックレス、イヤリング、ブレスレットを装着した。
一体いくら使ったんだろうか。
支度を終えて一階に降りるとパパとママがいた。
お揃いの衣装で相変わらず仲良し夫婦だ。
馬車に乗って王宮へ着くと私だけ別の場所に案内された。
中に入ると王族がズラリ。
「ひっ!…こ、国王陛下にご挨拶を申し上げます。
王妃様にご挨拶を申し上げます」
「挨拶はもういいからこちらへ来なさい」
「はい、陛下」
良かった。挨拶人数2人に省略できた。
「すまなかったね。ダリウスが迷惑をかけたとか」
「はい」
「……」
「あ、滅相もございません」
「よいよい。私はエリシアの素直なところも気に入っている理由の一つだ。正直に話してくれたらいい」
「ではお言葉に甘えてそういたします」
「王宮で弓の先生をしてみないか?いい小遣いをあげるよ?」
「教えるのはまた少し別の能力だと思います。私にはその才覚はなさそうです」
「ヴラシスが弓の腕をかなり上げたとか。エリシアが指導したのではなかったか?」
「見て吸収してもらいました。全てはヴラシス殿下の直向きな努力の賜物です」
「あの子を育ててくれてエリシアには感謝している」
「こちらこそ王子御免状をありがとうございます」
そこに口を挟む男がひとり。
「ダリウスが負けたって?」
「……」
「返事は」
「ご存知のことを聞かれて何と答えればよろしいのでしょう、ロイス王子殿下」
「“仰る通りです”」
「本当にそう答えてよろしいのですか?」
「何が悪い」
「皆様の前でそう答えれば、私は以降 ロイス王子殿下が負けたときや表に出したくないことを誰かに聞かれても大っぴらに肯定することになります。
その質問の目的がその後のお話しに繋がるのならば前置きを省くか前置きを変えるかなさった方がよろしいかと思います」
「ロイス、お止めなさい」
「母上」
「あなたは何が言いたいの?」
「…その…銀の翼に見せてもらえないかと」
「なら初めからそうおっしゃい」
「申し訳ございません」
「エリシア嬢、ロイスの願いは叶うかしら」
「王妃殿下からのご用命を承りました」
「ふふっ、お願いね。
ロイス。今のがどういうことか分かるわね?」
「…はい」
「分かっていないな」
「父上」
「エリシアは王妃の顔を立てた一方で保険を掛けたんだ」
「……」
「息子のロイスがエリシアに何かすれば全て王妃に跳ね返る」
「!!」
「関係のない学生の令嬢を引っ張り出したのだから6歳も歳上のお前が何かしたら、わずかな嫌味も周囲からは極悪人に見えてしまうぞ」
「肝に銘じます」
「そろそろご入場のお時間です」
「そうか」
王族全員が立ち上がった。
「では、失礼いたします」
「何を言っているんだ。そなたも行くのだぞ」
「はい?」
「ヴラシスのパートナーだろう」
「違います」
「違わないでしょう、ここにいるのだから」
国王陛下に王妃様まで…どういうこと!?
「俺のお披露目の目的は?」
「今後発生する公務を円滑に進めるためです。王子パワーを手っ取り早く顔で発揮させるために貴族の皆様にヴラシスの顔を覚えてもらうことです」
「…まあそうだ」
「ヴラシス、おまえが肯定するな。公務執行の妨げにならないよう協力を仰ぐためだろう」
「ダリウス兄上。エリシアには肯定することが一番の近道なのです。彼女に口では敵いません。
それにパートナーだというと来てくれないので単なる出席者だと思わせたのです」
「は?」
「駄目だろう」
「エリシア嬢、成人した王子のお披露目にはパートナーが必要なの。婚約者がいれば婚約者に頼むのだけどいないし、ヴラシスがあなたが出席を承諾したと言うからパートナーとしてだと思ったのよ」
「すまないがヴラシスの隣に立ってくれないだろうか」
うっ…陛下と王妃様に頼まれたらノーとは言えない。
「かしこまりました」
「エリシア、行こうか」
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「いいよ」
はぁ…
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