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知らない一面
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コツコツコツコツ
何故私が王族達の列に混じっているのか。
それはコイツのせい。
会場に入ると一身に注文を浴びた。
“おまえ誰?”って顔に書いてある。
分かる。分かるよ。だけど王族ズラリの密室で国王夫妻に頼まれたら断れないでしょ?ドレスや宝石がやけに豪華だと思ったけど、油断して受け取っちゃったし。それに剣術の件もあるし。これはいわばレンタルパートナーなの。
とりあえずカーテシーしとけばいいか。
「(あれ?若い女の子がチラホラいるね)」
ヒソヒソと小声で王子坊ちゃんに話しかけた。
「(王族と縁を繋ぎたいからだろう)」
「(え?)」
「(平民の子でも国王陛下の血が流れているからな。娘と結婚させれば縁を繋げることができる。
伯爵家以上は未婚の娘を連れてくることが許されているんだ)」
つまり、会場の女の子たちはヴラシスのお嫁さん候補ってことか。
「(尚更何で私を誘ったのよ)」
「(いつまでも鈍感でいると強行手段に出るからな)」
「はあ?」
「しっ!」
国王陛下の挨拶、王子坊ちゃんの挨拶が終わると放牧に出された。
「随分とご立派になりましたこと。うちの娘を紹介しますわ。アリーシャご挨拶なさい」
「アリーシャと申します。ヴラシス殿下にお会いできて光栄です」
「よろしく、ご令嬢」
「あの、この後のダンスをご一緒に、」
「そうです。パートナーと踊ります。楽しんでいってください」
親子から離れた。
「(そうじゃなくてダンスを踊って欲しかったのよ)」
「(知ってる)」
「(踊ってあげなさいよ)」
「(俺は王子だから好きに選べるんだ。好みじゃない)」
贅沢ね。可愛かったじゃない。
「何年振りでしょう。すっかり素敵な殿方に成長なさって。うちの娘を覚えていますか?」
「ヴラシス殿下、お久しぶりです ミュゼットです」
「久しぶり。ご令嬢の大好きなダリウス兄上は向こうにいますよ。では」
親子から離れた。
「(何でダメウスなんかのところへ行かせるのよ。美人じゃない)」
「(タイプじゃないし、あの女は昔兄上を追いかけていた女だ。そんな女を相手にできるか)」
乗り換えかぁ…たくましいわね。
「(肉食系は嫌なのね?)」
「(エリシアの言葉だけで一冊辞書ができそうだな)」
「(メンクイ王子坊ちゃんのご希望のお顔は会場にいないの?)」
「(いるよ)」
「(いるなら早く声をかけに行った方がいいよ)」
「(前もってかけてるから大丈夫だよ)」
じゃあ何のために私にパートナー役を押し付けたのよ。その子を誘えばいいじゃない!
「(はぁ…)」
こんなことを数回繰り返しているうちに曲が流れた。国王と王妃のダンスだった。
「え!?」
「しっ!」
何で手を繋ぐわけ!?
お目当ての令嬢に誤解されるじゃない!
頑張って手を解こうとしても全くどうにもならなかった。
力じゃもうとっくに敵わない。股間を蹴るわけにはいかないし…
「(これじゃ無意味な生贄じゃない)」
「そんなつもりはない」
「あっ」
曲が終わると手を引かれ、国王夫妻と入れ替わるように中央へ連れてこられた。
彼は片膝を付いて私の手に唇をつけた。私をじっと見上げる金の瞳がシャンデリアの光のせいかキラキラ光っていた。
立ち上がって手を取り私の背中の下の方に手を添えると演奏が始まった。
「ひっ」
習いはしたが得意とはいえない初心者モードに近い私をリードしていく。私に合わせて基本を守り最後に腰を掴んでふわりと持ち上げくるりと回って下に…
「お、降ろして」
私の腰と腿に腕を回して身体を付け、抱っこしているような状態のまま降ろしてくれない。
「まあ、熱いカップの誕生ですわね」
「陛下も公認しているようだ。特別に子爵家への婿入りが許されるかもな」
「キュアノスは陛下の補佐だからヴラシス殿下なら叶うだろう」
周囲からとんでもない話が聞こえ出した。
「(ヴラシス!降ろして!)」
「(もういいかな)」
やっと降ろしてくれたけど、恥ずかしくて顔を伏せた。肩に腕を回されて端に避けると、次のダンスが始まった。
「(何であんなことをしたの!)」
「(俺のお披露目だからだ)」
「(意味わかんない!)」
「(少しずつ分かるようにしていくから、機嫌直してくれ)」
「(直んない!)」
「(エリシア…今日は一段と可愛いな)」
「(ご、誤魔化されないんだからっ)」
「(綺麗だ)」
「っ!」
「(俺を見て)」
「……」
「(俺、もっとかっこよくなるから)」
そんなこと、私に言わなくたって…
「私に言ってどうするのよ。会場でお嫁さんを見つけて」
彼に背を向けた。
「どこに行くんだ」
「(オシッコ)」
顔が熱いのが分かる。
落ち着こうと外に出た。
噴水の縁に座って噴水に足を浸した。一気に熱りが引いていく。
「あら。子爵家の娘じゃない」
「……」
「返事もできないの?」
「礼儀がまるでないので独り言だと思いました」
「は?私は侯爵家の娘なのよ?子爵家の娘に対して礼儀など必要ないわ」
「本気でそう思っているのなら会場でその態度を貫けば良かったじゃないですか。人気がなくなったら態度変えて絡むなんて性格悪いですよ。あっち行ってください」
「今はその体に夢中になっていても、そのうちヴラシス殿下は飽きて乗り換えるわよ」
「下衆な考えも侯爵家特有のものですか?」
「自分の立場が分からないなら教えてあげる」
「……」
暗がりで分からなかったけど、金髪縦ロールの後ろの暗闇から男が現れた。
巡回の兵士はいなさそう。舐め回すような視線を送る男が近付いたので噴水の中に入った。
「ふふっ、濡れ鼠ね」
「ほら、こっちに来い」
男はずぶ濡れになるのは嫌で縁に足を乗せて手を伸ばすだけ。
それに濡れていた方がドレスは脱がせ難い。
「何をモタモタしているの。巡回が来ちゃうじゃない。噴水に入って捕まえて茂みに連れて行くのよ!」
チャプっ
男は仕方なく噴水に靴を履いたまま足を入れた。
「ヴラシス!!! ヴラシス!!!」
「早く捕まえて黙らせて!」
「ヴラシス!!!」
捕まって噴水から出されたけど、抵抗する私とずぶ濡れのドレスの重量で男は少し苦戦をした。
「痛っ!!」
口を塞いでいた男の手を噛んだ。
「ヴラシス!!!」
その後、衝撃が身体を揺らし、そこからは覚えていない。
何故私が王族達の列に混じっているのか。
それはコイツのせい。
会場に入ると一身に注文を浴びた。
“おまえ誰?”って顔に書いてある。
分かる。分かるよ。だけど王族ズラリの密室で国王夫妻に頼まれたら断れないでしょ?ドレスや宝石がやけに豪華だと思ったけど、油断して受け取っちゃったし。それに剣術の件もあるし。これはいわばレンタルパートナーなの。
とりあえずカーテシーしとけばいいか。
「(あれ?若い女の子がチラホラいるね)」
ヒソヒソと小声で王子坊ちゃんに話しかけた。
「(王族と縁を繋ぎたいからだろう)」
「(え?)」
「(平民の子でも国王陛下の血が流れているからな。娘と結婚させれば縁を繋げることができる。
伯爵家以上は未婚の娘を連れてくることが許されているんだ)」
つまり、会場の女の子たちはヴラシスのお嫁さん候補ってことか。
「(尚更何で私を誘ったのよ)」
「(いつまでも鈍感でいると強行手段に出るからな)」
「はあ?」
「しっ!」
国王陛下の挨拶、王子坊ちゃんの挨拶が終わると放牧に出された。
「随分とご立派になりましたこと。うちの娘を紹介しますわ。アリーシャご挨拶なさい」
「アリーシャと申します。ヴラシス殿下にお会いできて光栄です」
「よろしく、ご令嬢」
「あの、この後のダンスをご一緒に、」
「そうです。パートナーと踊ります。楽しんでいってください」
親子から離れた。
「(そうじゃなくてダンスを踊って欲しかったのよ)」
「(知ってる)」
「(踊ってあげなさいよ)」
「(俺は王子だから好きに選べるんだ。好みじゃない)」
贅沢ね。可愛かったじゃない。
「何年振りでしょう。すっかり素敵な殿方に成長なさって。うちの娘を覚えていますか?」
「ヴラシス殿下、お久しぶりです ミュゼットです」
「久しぶり。ご令嬢の大好きなダリウス兄上は向こうにいますよ。では」
親子から離れた。
「(何でダメウスなんかのところへ行かせるのよ。美人じゃない)」
「(タイプじゃないし、あの女は昔兄上を追いかけていた女だ。そんな女を相手にできるか)」
乗り換えかぁ…たくましいわね。
「(肉食系は嫌なのね?)」
「(エリシアの言葉だけで一冊辞書ができそうだな)」
「(メンクイ王子坊ちゃんのご希望のお顔は会場にいないの?)」
「(いるよ)」
「(いるなら早く声をかけに行った方がいいよ)」
「(前もってかけてるから大丈夫だよ)」
じゃあ何のために私にパートナー役を押し付けたのよ。その子を誘えばいいじゃない!
「(はぁ…)」
こんなことを数回繰り返しているうちに曲が流れた。国王と王妃のダンスだった。
「え!?」
「しっ!」
何で手を繋ぐわけ!?
お目当ての令嬢に誤解されるじゃない!
頑張って手を解こうとしても全くどうにもならなかった。
力じゃもうとっくに敵わない。股間を蹴るわけにはいかないし…
「(これじゃ無意味な生贄じゃない)」
「そんなつもりはない」
「あっ」
曲が終わると手を引かれ、国王夫妻と入れ替わるように中央へ連れてこられた。
彼は片膝を付いて私の手に唇をつけた。私をじっと見上げる金の瞳がシャンデリアの光のせいかキラキラ光っていた。
立ち上がって手を取り私の背中の下の方に手を添えると演奏が始まった。
「ひっ」
習いはしたが得意とはいえない初心者モードに近い私をリードしていく。私に合わせて基本を守り最後に腰を掴んでふわりと持ち上げくるりと回って下に…
「お、降ろして」
私の腰と腿に腕を回して身体を付け、抱っこしているような状態のまま降ろしてくれない。
「まあ、熱いカップの誕生ですわね」
「陛下も公認しているようだ。特別に子爵家への婿入りが許されるかもな」
「キュアノスは陛下の補佐だからヴラシス殿下なら叶うだろう」
周囲からとんでもない話が聞こえ出した。
「(ヴラシス!降ろして!)」
「(もういいかな)」
やっと降ろしてくれたけど、恥ずかしくて顔を伏せた。肩に腕を回されて端に避けると、次のダンスが始まった。
「(何であんなことをしたの!)」
「(俺のお披露目だからだ)」
「(意味わかんない!)」
「(少しずつ分かるようにしていくから、機嫌直してくれ)」
「(直んない!)」
「(エリシア…今日は一段と可愛いな)」
「(ご、誤魔化されないんだからっ)」
「(綺麗だ)」
「っ!」
「(俺を見て)」
「……」
「(俺、もっとかっこよくなるから)」
そんなこと、私に言わなくたって…
「私に言ってどうするのよ。会場でお嫁さんを見つけて」
彼に背を向けた。
「どこに行くんだ」
「(オシッコ)」
顔が熱いのが分かる。
落ち着こうと外に出た。
噴水の縁に座って噴水に足を浸した。一気に熱りが引いていく。
「あら。子爵家の娘じゃない」
「……」
「返事もできないの?」
「礼儀がまるでないので独り言だと思いました」
「は?私は侯爵家の娘なのよ?子爵家の娘に対して礼儀など必要ないわ」
「本気でそう思っているのなら会場でその態度を貫けば良かったじゃないですか。人気がなくなったら態度変えて絡むなんて性格悪いですよ。あっち行ってください」
「今はその体に夢中になっていても、そのうちヴラシス殿下は飽きて乗り換えるわよ」
「下衆な考えも侯爵家特有のものですか?」
「自分の立場が分からないなら教えてあげる」
「……」
暗がりで分からなかったけど、金髪縦ロールの後ろの暗闇から男が現れた。
巡回の兵士はいなさそう。舐め回すような視線を送る男が近付いたので噴水の中に入った。
「ふふっ、濡れ鼠ね」
「ほら、こっちに来い」
男はずぶ濡れになるのは嫌で縁に足を乗せて手を伸ばすだけ。
それに濡れていた方がドレスは脱がせ難い。
「何をモタモタしているの。巡回が来ちゃうじゃない。噴水に入って捕まえて茂みに連れて行くのよ!」
チャプっ
男は仕方なく噴水に靴を履いたまま足を入れた。
「ヴラシス!!! ヴラシス!!!」
「早く捕まえて黙らせて!」
「ヴラシス!!!」
捕まって噴水から出されたけど、抵抗する私とずぶ濡れのドレスの重量で男は少し苦戦をした。
「痛っ!!」
口を塞いでいた男の手を噛んだ。
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