【完結】執着系王子のご執心は回避できませんか?

ユユ

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黒の翼

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【 緑の翼 ゼノンの視点 】


二週間半後、再びエリシア嬢が現れて人払いをした。壁の中では私とまたヴラシス殿下が覗いていた。

仕上がった下着を見て王女殿下も驚愕していたが、ヴラシス殿下も驚いていた。

《あれじゃ 尻が隠れないじゃないか》

《隠さない下着なんじゃないですか》


そして王女殿下が出国する5日前、人払いをしてエリシア嬢が講義を始めた。

とんでもない講義だった。
男のアレに見立てた棒を持って。

『そう。胸で挟んで上下に。左右同時でもずらしても。そのままでもいいですが、オイルをつけるかバスタブなら石鹸でもいいです。付けていないときは余裕があって届く長さなら挟んだまま咥えましょう』

『なっ!』

『人によっては足の裏で挟んだり脇に挟んだりすると喜びます』

『へ、変態』

『大抵の男は舐めて貰うのが大好きです。棒だけじゃなくて2つのボールも喜びます』

『……』

『舐め方も様々。目線も大事です。見つめられたい人、時々がいい人、それが自分の目なのか棒なのかは人それぞれ』

『……』

『実践しますよ』

エリシア嬢が王女殿下の隣に座って背を向けたので見ることはできなかったが、ヴラシス殿下は静かになった。

触れ合いから体位から何から何まで、普通の女は知らないことまで知っていた。男の性的なことまで。生理現象や自慰も。しかも特殊な性癖まで。
講義が終わった頃には王女殿下はグッタリしていた。

ヴラシス殿下も元気がなかった。

《エリシアは相当経験があるみたいだな。ずっと側にいたつもりなのに。まあ毎日いたわけじゃないしな。いったいどんな男だろうな》


仕方なく、黒の翼にお願いをして、キュアノス邸から情報を集めてもらった。

1週間後、ヴラシス殿下同席で結果を聞いた。

『まず、エリシア嬢は純潔です。
エリシア嬢は外に出たがりません。出るときは付き添いがいますし異性と会っていません。学園が終われば王家絡み以外は真っ直ぐ帰ります。私兵達も令嬢を溺愛する子爵が怖くて手出ししませんし、常にメイドか侍女が側にいます。夫人も屋敷にいますし。主治医のカルテも見ましたがそれらしき記述はありません。避妊薬も夫妻しか使っていません』

『じゃあ何なんだ』

『エリシア嬢はかなり特殊な子だったそうです。意思表示がはっきりした乳児で、言葉を話せるようになると、改善して欲しいことを次々言い始めたそうです。教えていないのに文字が読め、書くことも出来ました。難しい単語も口にしていました。
それに何故か料理やケーキなどのレシピを知っていたと。新しい料理やデザートだったことも多く、調味料やお茶の種類まで詳しかったようです。国内に無いものもあり取り寄せたそうです。
家具や食器類、服にも及びます。それはまるで最初から知っていたかのように。
多分、閨事の知識も同じではないですか』

『確かに、遊びに行くと食べ物も特注の家具や食器も、部屋着とかいうものも聞いたことも見たことも無かったものがあったな』

『世の中には前世を覚えている者が稀にいます。エリシア嬢も前世の記憶があって、その前世が変わったものだったのではないでしょうか』

結局、その疑問の1つは事件により解決した。
男に襲われていたため、未遂が否かの乙女の診察が行われたからだ。

エリシア嬢が純潔の証を維持していたことを知って、ヴラシス殿下は心から安堵したようだった。食欲も戻り、報告を聞いてきた陛下もホッとしたようだ。

エリシア嬢の事件の後の刑罰の行使は、王妃殿下との関係も良い方に進展した。


相変わらず、私はエリシア嬢に会わせてもらえない。未だに私のことを返せと言うらしい。
エリシア嬢は魅力的だ。歳の差があっても受け入れてくれるのなら口説きたい。ヴラシス殿下が失敗したらすぐにでも。

『言っておくが、ゼノンは妻子持ちということになっているからな』

『はい?』

『あまりにもゼノン ゼノン煩いから、だいぶ昔に言っておいた』

『嘘じゃないですか』

『別にいいだろう?嘘だとバレる日は来ないんだから』


悔しいから堂々と会うことにした。

「エリシア嬢、誕生日おめでとうございます」

「ゼノン卿!来てくれたのですか!?」

「お呼ばれしておりませんが、王女殿下付きから外れましたので」

「嬉しいです!」

「これ、ささやかですが、お祝いです」

「すごい!」

弓と矢のチャームを特注した。

「学生鞄に付けてください」

「ありがとうございます!」

エリシア嬢が抱き付いたので、抱きしめ返した。
確かに、抱きしめ心地がいい。

「ゼノン卿の誕生日はいつですか?」

「1ヶ月前の23日でした」

「出来るだけ早くお祝いを用意しますわ」

「エリシア嬢に抱き付いてもらえるだけで幸せです」

「ゼノン卿ったら」

ふと見ると、ヴラシス殿下が泣きそうな顔をしていたので…

「エリシア嬢。ヴラシス殿下も抱き付いてもらいたいらしいです。私に免じて殿下にもしてあげてくださいませんか」

「…ゼノン卿に頼まれたからだからね」

ヴラシス殿下は少し切なそうな嬉しそうな複雑な表情を見せた。

ああ…本気で恋をしているんだな。
彼女に一喜一憂して、葛藤して。

「エリシア嬢。もう少し強く抱き付いてあげてください」

「こうですか?」

「もっとです」

「こ、こうですか?これ以上力は入りません」

「そろそろパパにも抱き付いてくれないか」

「うん」

エリシア嬢は子爵に抱き付いた。

食事をご馳走になったけど、すごく美味しかった。
彼女と結婚したら、いつもこんなに美味しい食事を食べることができて、可愛くて夜の男心の分かるエリシア嬢が相手をしてくれる。夢のような生活だろうなと羨ましくなった。

ヴラシス殿下に上手くいって欲しい反面、欲が消しきれない。

まいったな。


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