【完結】執着系王子のご執心は回避できませんか?

ユユ

文字の大きさ
18 / 33

ちょっと隣国までお呼ばれされました

しおりを挟む
カチャ

国王夫妻の居間のローテーブルにティーカップが置かれた。

コト

私の前だけマグカップ。しかも持ち込み。

「完全に国賓扱いの招待状だな」

「アメデオ殿下からの正式なものね」

「断ることはできないのですか?」

「普通は無理ね」

「普通じゃない場合は何ですか?」

「移動に耐えられないほどの重病とか大怪我とか妊娠中とか」

「妊娠…」

「そんなことで妊娠しては駄目よ?」

「も、もちろんです」

うっ…国王と王妃が怪しんでる。

「どうして私なんか招待するのでしょう」

「アイリスの絡みでしょう。そうでなければアメデオ殿下がエリシア嬢を知ることはないと思うわ」

やっぱりあの下着が問題で、魔女とか言われて火炙りにされるんじゃ…

「行きたくない」

ヴラシスの腕に絡み付いた。

「仕方ない。結婚してすぐ子を作ろう」

サッと手を離して距離を置いた。

「な、何で離れるんだよ」

「危険な存在を認識したからよ。私を妊娠させようだなんて」

「重病や大怪我は無理だろう」

「しかもってなに。仕方ないで妊娠させちゃうわけ?ヴラシスとの友人関係が破綻しそうだわ」

「俺の言い方が悪かったけど、そういう意味じゃないんだ」

「ふん!」

「エリシア」

「しかし、どうするか。長期休暇で行ってもらえるか?」

「アイリスの様子も見てきて欲しいし」

「…ゼノン卿を就けてください」

「ゼノン卿? み…近衞騎士のか」

「はい。彼は王女殿下の護衛騎士もなさっていましたので」

「それは良いわね」

「では俺も行きます」

「無理しなくていいよ。ついて来てくれなくても」

「エリシア…」

「よし、ではゼノン卿とヴラシスを含めたメンバーで隣国ベルデマレに行ってくれ」

この後、パパが抵抗していたけど、隣国行きは覆らなかった。



学園ではヴラシスに対し必要以上の言葉を発しなかったし、キュアノス邸にも出入り禁止にした。
来てもらう必要はないものね。

和弓と洋弓を用意して、独特の矢尻の付いた矢を作らせた。この世界は盗賊の襲撃はあると考えた方がいい。馬車を襲う賊を相手にするなら近距離戦。矢尻は鋭くて、矢印のような形をして釣り針の様に返しが付いて引き抜きにくいものにした。しかも平面ではなく立体。
そして瓶の中に手に入る香辛料の中で1番刺激のあるものとネズミのフンと腐った水を混ぜたドロドロの液体を用意する。これは出発間際に用意した。ある意味デスソースを矢尻に付けて射る予定。液漏れや誤射に気を付けたい。
カプサイシン爆弾も考えたけど、馬移動の世界では悪手。

大事な土産はデザイン違いのランジェリーと拘束具、プレイ用アイマスクを作らせた。
こちらはヴラシスがいるし国賓だから荷物検査は無いらしい。見つかったら捕まりそう。一応可愛らしい箱にピンクや黄色のリボンを付けた。

出発当日、パパに王宮に送ってもらった。
荷物を乗せ替えている間、存分にハグした。

「パパぁ」

「エリシアっ」

今生の別れの様に。

そして出発した。

ゼノン卿も馬車に乗って欲しいと上目遣いでお願いしたのに、少し戸惑ってはいたけど断られた。

ゴトゴトゴトゴト ゴトゴトゴトゴト

「エリシア。本当に申し訳なかった」

「いいよもう」

「だけどまだ怒っているだろう?」

「怒らない方がどうかしてるよ。
妊娠出産は命懸けだし…もういいよ。どうせ言っても分からないだろうし」

「どうしたら許してくれるんだ?」

「許せないことだって世の中にはたくさん存在するの。きっとあんな些細なことなのにって思っているんでしょ?別にもう私に拘る必要はないんじゃない?ラバル嬢のようにヴラシスと親しくなりたい令嬢だって何人もいるんだし」

「エリシア以外要らない」

「子爵家の娘に拘らなくていいんだってば。陛下にも上手く言っておいてあげるから」

「そうじゃない!」

「これ以上は止めましょう」

「……」

最初の宿泊先は、隣国へ行く途中にある、公爵領のお屋敷だった。
普通の宿の方がいいのだけど防犯上、領主の屋敷に泊まれるならそうする方がいいらしい。

馬車の中ではヴラシスと2人きり。領主邸に行けば愛想笑いと晩餐。早く1人になりたくて、晩餐後はすぐに客室へ向かわせてもらった。

就寝していると、誰かがベッドに入ってきた気配がした。

「誰!」

「しっ…俺だ」

「何で入ってくるの」

「領主の娘が夜這いに来たから追い返したけど、念の為 逃げてきた」

「見張りは?」

「武器を持っていないナイトドレスを着た令嬢だから通しちゃったんだよ」

あるあるなのね。

「じゃあ、私がヴラシスの部屋に行くから」

「待ってくれ」

「…眠いんだけど」

「俺は…エリシアの気持ちを考えない言葉を発してしまったが、俺には思い付きでも無責任な発言でもない。ずっとエリシアが好きで、エリシアと結婚してキュアノス邸で暮らすことを何度も想像して、子供を産んでもらうことも 呆れるほど想像してきた。今すぐにでも結婚したいと思っている。いつもいつも願ってる」

「ずっと!?」

「ずっと。出会ってすぐエリシアを好きになった」

「……」

「だから好きでもない女からの夜這いなんかでエリシアに誤解して欲しくない。一緒に居れば誤解なんてしようがない」

「…まさか子供を産む想像ってことは」

「好きな女を抱きたいと思うのは当然だろう。エリシアの気持ちを考えずに不適切な言葉を口にしたことは本当に申し訳なかった。本当はまだ言うべきことではないと思っているから俺の気持ちを伝えるのを躊躇った。俺にはずっとエリシアとの結婚も夜の生活も子供のことも毎日想像してきた。エリシアに振り向いて欲しくて、愛して欲しくてずっと側にいた。これからもそうするつもりだ。だけどエリシアに冷たくされるのは辛い」

「……分かった」

「ごめん」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さくら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!

satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。  私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。  私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。  お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。  眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!

柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」 『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。 セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。 しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。 だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

つかぬことを伺いますが ~伯爵令嬢には当て馬されてる時間はない~

有沢楓花
恋愛
「フランシス、俺はお前との婚約を解消したい!」  魔法学院の大学・魔法医学部に通う伯爵家の令嬢フランシスは、幼馴染で侯爵家の婚約者・ヘクターの度重なるストーキング行為に悩まされていた。  「真実の愛」を実らせるためとかで、高等部時代から度々「恋のスパイス」として当て馬にされてきたのだ。  静かに学生生活を送りたいのに、待ち伏せに尾行、濡れ衣、目の前でのいちゃいちゃ。  忍耐の限界を迎えたフランシスは、ついに反撃に出る。 「本気で婚約解消してくださらないなら、次は法廷でお会いしましょう!」  そして法学部のモブ系男子・レイモンドに、つきまといの証拠を集めて婚約解消をしたいと相談したのだが。 「高貴な血筋なし、特殊設定なし、成績優秀、理想的ですね。……ということで、結婚していただけませんか?」 「……ちょっと意味が分からないんだけど」  しかし、フランシスが医学の道を選んだのは濡れ衣を晴らしたり証拠を集めるためでもあったように、法学部を選び検事を目指していたレイモンドにもまた、特殊設定でなくとも、人には言えない事情があって……。 ※次作『つかぬことを伺いますが ~絵画の乙女は炎上しました~』(8/3公開予定)はミステリー+恋愛となっております。

心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました

er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」

仙桜可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。 「で、政略結婚って言われましてもお父様……」 優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。 適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。 それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。 のんびりに見えて豪胆な令嬢と 体力系にしか自信がないワンコ令息 24.4.87 本編完結 以降不定期で番外編予定

処理中です...