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王女の婚約者
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アイリス王女様に強く手を繋がれて王宮内に連行されている。
「もうこのまま私の結婚式までいるのよね?」
「まさか、とんでもないことでございます」
「急にどうしたのよ…あ、」
廊下の彫刻の影にいかにも王子様が立っていた。壁に寄りかかり腕を組んで値踏みするかのように私を見ている。王女は私の口調が変わったことに触れたけど、私の視線の先を見て納得したようだ。
「アイリス、紹介してくれ」
「はい。私の異母弟のヴラシス第三王子と私の親友兼デザイナーのエリシアです。
ふたりとも、アメデオ王太子殿下よ」
「異母弟のヴラシスです。ベルデマレの若き太陽にご挨拶を申し上げます」
「キュアノス子爵家の長女エリシアが王太子殿下にご挨拶を申し上げます」
「君が!? …アイリス、こんな子供がアレを発案しただなんてあり得ないだろう。もっと上手に嘘を吐いたらどうなんだ?」
「アメデオ様、本当にこの子がデザインして作らせたんです!信じてください!」
「はぁ、もうよい」
「アメデオ様っ!」
「んん゛そのご判断は私からの贈り物をお受け取りいただいた後でも遅くはないかと思います、王太子殿下」
「…先ずは部屋へ案内させる。今父上達は会議中だから、挨拶は夕食のときでいいだろう」
アメデオ王太子殿下は去って行った。
落ち込む王女に仕方なく声をかけた。
「王女様、大丈夫ですよ。私がもっと斬新なアイテムを作ってきましたから、それに比べたらあの下着なんか可愛く思えますよ」
「…それはそれで怖いわね」
客室へ案内してもらい、荷物を運び入れたメイドが荷解きを始めた。
「それもこっちへ」
「かしこまりました」
ヴラシスが自分の荷物を私の客室へ運ばせようとしていた。
「ダメ!自分の客室があるでしょう」
「1人で寂しいだろう?それに俺がいた方が安全だ」
「むしろ危険いっぱいだわ。ゼノン卿、回収してください」
「仰せの通りに。殿下、行きますよ」
「何で俺じゃなくてエリシアの言うことをきくんだよ!」
「この旅の主役はエリシア嬢です。そして私はエリシア嬢に就けられた騎士です。つまり殿下は王族ですが王子御免状をお持ちのエリシア嬢には敵いません」
「チッ」
荷物と一緒にヴラシスは自分の客室へ向かわされた。
荷解きが終わり、お茶を出してもらってから独りにしてもらった。部屋着に着替えてお茶を飲みソファに横になった。
コンコンコンコン
「ゼノンです」
「どーぞ」
ガチャ
「……」
バタン!
ゼノン卿がドアを開けるなりまた閉めてしまった。
起き上がってドアを開けてゼノン卿を呼んだ。
「ゼノン卿、何してるんですか」
「ちょっ!駄目です!そんな格好で出て来ちゃ!!」
ゼノン卿は私を部屋に押し込みドアを閉めた。
「あ、これ部屋着だから」
「脚が出てるじゃないですか!」
「ゼノン卿は例え王女の着替え中でも部屋の中にいるんですよね?」
「王宮外では」
「女性の裸なんて見慣れているのではありませんか?」
「エリシア嬢」
「私は裸ではありません。民族衣装とでも思ってください。あ!そうだ。良い手があった!」
「……」
「ゼノン卿、座っていてください。自由にしていていいんですよ」
「あの、馬車の中の箱は何ですか?それを聞こうと思いまして」
「…ちょっと悪魔も怯えそうな混ぜ物が入っています。あれ?もしかして発酵して蓋が飛んだり瓶が割れたりしないかな。どうしよう。着替えるからちょっと待っていてください」
パンツスーツのようなものを着てゼノン卿と馬車まで来た。
「あの、すみません。再利用ができない汚染物を捨てる場所はありませんか?」
馬車の掃除をしてくれている下働きの人に聞いた。
「どういったものですか?」
「辛いものと動物の糞と汚泥などを混ぜたものです」
「……お預かりします」
「発酵して中身が吹き出す可能性があるから自分でやります」
「とんでもありません!高貴な方にそのようなことをさせたことが分かれば私が罰せられます!」
「でも」
「入れ物は何ですか?」
「蓋付きの瓶です」
「布を被せて蓋を取りましょう。その布は燃やしますし、私も作業用の皮の手袋をしますので」
「その馬車の中にあるんです」
「捨てておきますのでご安心ください」
「ありがとうございます」
そっと手間賃を渡した。
「こんなにいただけません」
「受け取ってもらえなければ自分で捨てます」
「…ありがたくちょうだいします」
「よろしくお願いします」
その後は近くにいた警備の人に客が散歩できる場所を教えてもらってゼノン卿と散歩をしていた。
「まあ、あれ見て。何で王宮庭園に労働者が男連れで歩き回っているのかしら。一般公開の場所とはいえ誰でも入っていい場所じゃないのに」
「何だか急にここがつまらない場所になってしまいましたわ」
ドレスや宝石で着飾った、THE貴族令嬢達が扇子で口元を隠しながら私に向けてくだらない言葉を漏らしていた。
「おい!」
「いいのです。放っておきましょう」
飾り気のないパンツスーツだから下級文官か何かに見えているのね。
「ですが」
「アメデオ王太子殿下に苦情を申し立てるので時間と人相だけ覚えておいてください」
「かしこまりました」
アメデオ王太子の名を出した途端に令嬢達が表情を変えた。
「まあ!あなたなんかが口にしていいお方ではないのよ!」
「そうよ!名を名乗りなさい!」
「知らないおばさんに個人情報を教えたらいけないと両親に躾けられましたのでお断りします」
「お、おばさん!?私を!?」
「そうです、おばさん。だっておばさんの名前を知りませんから名前を呼べませんし、明らかに私より歳上でしょうし」
「ロデリオ伯爵家のマリーヌ様に向かってなんて無礼な!」
「良かったわ。名前が分かって。
さあ、行きましょう」
ゼノン卿と立ち去ろうとすると令嬢に腕を掴まれた。ゼノン卿には手を出すなと顔で合図した。
だけど爪が食い込んで痛い。
「痛いっ!!」
背後から手が伸びて令嬢の指を掴んで捻り上げていた。
「ヴラシス」
ヴラシスは私の腕を見て爪痕を確認するとそのまま指を折った。
パキッ
「ギャアアアアッ!!」
「もうこのまま私の結婚式までいるのよね?」
「まさか、とんでもないことでございます」
「急にどうしたのよ…あ、」
廊下の彫刻の影にいかにも王子様が立っていた。壁に寄りかかり腕を組んで値踏みするかのように私を見ている。王女は私の口調が変わったことに触れたけど、私の視線の先を見て納得したようだ。
「アイリス、紹介してくれ」
「はい。私の異母弟のヴラシス第三王子と私の親友兼デザイナーのエリシアです。
ふたりとも、アメデオ王太子殿下よ」
「異母弟のヴラシスです。ベルデマレの若き太陽にご挨拶を申し上げます」
「キュアノス子爵家の長女エリシアが王太子殿下にご挨拶を申し上げます」
「君が!? …アイリス、こんな子供がアレを発案しただなんてあり得ないだろう。もっと上手に嘘を吐いたらどうなんだ?」
「アメデオ様、本当にこの子がデザインして作らせたんです!信じてください!」
「はぁ、もうよい」
「アメデオ様っ!」
「んん゛そのご判断は私からの贈り物をお受け取りいただいた後でも遅くはないかと思います、王太子殿下」
「…先ずは部屋へ案内させる。今父上達は会議中だから、挨拶は夕食のときでいいだろう」
アメデオ王太子殿下は去って行った。
落ち込む王女に仕方なく声をかけた。
「王女様、大丈夫ですよ。私がもっと斬新なアイテムを作ってきましたから、それに比べたらあの下着なんか可愛く思えますよ」
「…それはそれで怖いわね」
客室へ案内してもらい、荷物を運び入れたメイドが荷解きを始めた。
「それもこっちへ」
「かしこまりました」
ヴラシスが自分の荷物を私の客室へ運ばせようとしていた。
「ダメ!自分の客室があるでしょう」
「1人で寂しいだろう?それに俺がいた方が安全だ」
「むしろ危険いっぱいだわ。ゼノン卿、回収してください」
「仰せの通りに。殿下、行きますよ」
「何で俺じゃなくてエリシアの言うことをきくんだよ!」
「この旅の主役はエリシア嬢です。そして私はエリシア嬢に就けられた騎士です。つまり殿下は王族ですが王子御免状をお持ちのエリシア嬢には敵いません」
「チッ」
荷物と一緒にヴラシスは自分の客室へ向かわされた。
荷解きが終わり、お茶を出してもらってから独りにしてもらった。部屋着に着替えてお茶を飲みソファに横になった。
コンコンコンコン
「ゼノンです」
「どーぞ」
ガチャ
「……」
バタン!
ゼノン卿がドアを開けるなりまた閉めてしまった。
起き上がってドアを開けてゼノン卿を呼んだ。
「ゼノン卿、何してるんですか」
「ちょっ!駄目です!そんな格好で出て来ちゃ!!」
ゼノン卿は私を部屋に押し込みドアを閉めた。
「あ、これ部屋着だから」
「脚が出てるじゃないですか!」
「ゼノン卿は例え王女の着替え中でも部屋の中にいるんですよね?」
「王宮外では」
「女性の裸なんて見慣れているのではありませんか?」
「エリシア嬢」
「私は裸ではありません。民族衣装とでも思ってください。あ!そうだ。良い手があった!」
「……」
「ゼノン卿、座っていてください。自由にしていていいんですよ」
「あの、馬車の中の箱は何ですか?それを聞こうと思いまして」
「…ちょっと悪魔も怯えそうな混ぜ物が入っています。あれ?もしかして発酵して蓋が飛んだり瓶が割れたりしないかな。どうしよう。着替えるからちょっと待っていてください」
パンツスーツのようなものを着てゼノン卿と馬車まで来た。
「あの、すみません。再利用ができない汚染物を捨てる場所はありませんか?」
馬車の掃除をしてくれている下働きの人に聞いた。
「どういったものですか?」
「辛いものと動物の糞と汚泥などを混ぜたものです」
「……お預かりします」
「発酵して中身が吹き出す可能性があるから自分でやります」
「とんでもありません!高貴な方にそのようなことをさせたことが分かれば私が罰せられます!」
「でも」
「入れ物は何ですか?」
「蓋付きの瓶です」
「布を被せて蓋を取りましょう。その布は燃やしますし、私も作業用の皮の手袋をしますので」
「その馬車の中にあるんです」
「捨てておきますのでご安心ください」
「ありがとうございます」
そっと手間賃を渡した。
「こんなにいただけません」
「受け取ってもらえなければ自分で捨てます」
「…ありがたくちょうだいします」
「よろしくお願いします」
その後は近くにいた警備の人に客が散歩できる場所を教えてもらってゼノン卿と散歩をしていた。
「まあ、あれ見て。何で王宮庭園に労働者が男連れで歩き回っているのかしら。一般公開の場所とはいえ誰でも入っていい場所じゃないのに」
「何だか急にここがつまらない場所になってしまいましたわ」
ドレスや宝石で着飾った、THE貴族令嬢達が扇子で口元を隠しながら私に向けてくだらない言葉を漏らしていた。
「おい!」
「いいのです。放っておきましょう」
飾り気のないパンツスーツだから下級文官か何かに見えているのね。
「ですが」
「アメデオ王太子殿下に苦情を申し立てるので時間と人相だけ覚えておいてください」
「かしこまりました」
アメデオ王太子の名を出した途端に令嬢達が表情を変えた。
「まあ!あなたなんかが口にしていいお方ではないのよ!」
「そうよ!名を名乗りなさい!」
「知らないおばさんに個人情報を教えたらいけないと両親に躾けられましたのでお断りします」
「お、おばさん!?私を!?」
「そうです、おばさん。だっておばさんの名前を知りませんから名前を呼べませんし、明らかに私より歳上でしょうし」
「ロデリオ伯爵家のマリーヌ様に向かってなんて無礼な!」
「良かったわ。名前が分かって。
さあ、行きましょう」
ゼノン卿と立ち去ろうとすると令嬢に腕を掴まれた。ゼノン卿には手を出すなと顔で合図した。
だけど爪が食い込んで痛い。
「痛いっ!!」
背後から手が伸びて令嬢の指を掴んで捻り上げていた。
「ヴラシス」
ヴラシスは私の腕を見て爪痕を確認するとそのまま指を折った。
パキッ
「ギャアアアアッ!!」
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