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説明申し上げます
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入室すると会議室みたいな場所で、アメデオ王太子殿下とアイリス王女様しかいない。ヴラシスと私が椅子に座るとドアが閉まった。
「これについて説明してくれ」
王太子殿下は箱をひっくり返して中身をテーブルに出した。
「なっ!」
王女様は真っ赤になった。
そりゃそうだ。私がプレゼントした王女様の下着だから。
「デリカシーがありませんね」
「これは証拠だろう」
「ヴラシスもいるんですよ?王太子殿下は嫉妬してありもしない矛先を探して乙女の下着をこんな風に晒すなんてどうかしています」
「私が?嫉妬?」
「それ以外ないですよね」
私は下着を箱の中に戻して蓋をした。
呼び鈴を鳴らすと男の人が入ってきた。この人、王太子殿下の侍従だったっけ。
「すみません。アメデオ王太子殿下が他人に見られたくないものをいくつか持ってきていただけますか?」
「はい?」
「キュアノス嬢」
「何でしょう」
「私は王太子だぞ」
「知っています」
「君は子爵家の娘だろう。私の私物を持って来させる権限は無い。この中身が恥ずかしい物だろうとこれは証拠なんだ」
「ありもしない嫌疑をかけて証拠だと言って勝手に他人の物を持ち出して、私達の前に晒すことは間違っています。アイリス王女がどんな気持ちになるのか身をもって体験してみてください。私も王太子殿下に同じことをして差し上げます。殿下の恥ずかしい何かを持ってきてもらったら適当に嫌疑をかけましょう」
「この国での王子御免状は発行されていないぞ」
「そうですね。ですが王太子殿下もオヴェル国王の発行した“王女御免状”をお持ちではありませんし、今はアイリス王女様は国賓。これは国際問題に発展しかねない侮辱行為なのです。今の段階では他国の王女の下着を盗んだ窃盗犯なのです。この下着の持ち出し許可をアイリス王女から得ていませんよね?」
「大袈裟な」
「侍従さん。外務室長と出来れば王妃様をお連れしてください。無理ならこちらから伺います」
「ウィル、行かなくていい」
「いや。ウィリアム・フォルン殿、すぐに呼びに行ってくれ。オヴェル国王第三王子ヴラシスの要求だ」
侍従は躊躇ったが、ドアを閉めた。足音が聞こえたから走って呼びに行ったのだろう。
「アメデオ王太子殿下。エリシアは俺の最愛の女です。彼女への威圧や侮辱は俺に向けたものとして受け取り、埒が明かなければ決闘を申し込みます」
「そんな大袈裟な」
「まったく大袈裟ではありません。そもそもどんな下着を身に付けようがアイリス姉上の勝手ではありませんか。ドレスで見えなくなるのに何が問題なんですか?どんな下着を身に付けるか法律で決まっているとか?王太子殿下との婚姻の条件は分かっていて姉はここにいるのです。こんな風に責め立てられる必要はありませんよね」
「……」
「間違いなく、これらは私がデザインして作らせた物です。こちらがその時の大元のデザイン画と、採寸してからの仕様書、そして納品請求書です。
こちらは他のデザイン画です。私のために書いて作らせています。お疑いのようですので、1着この場で描いてみせましょう。あちらのペンをお借りします」
ペンを取り、さっと下着のデザインを考えて描いた。そして王太子殿下の前に置くと本当なのだと理解したようだった。
もう1枚はベリーダンスの衣装のようなものを描いている途中で外務室長とハリス補佐が到着し、続いて王妃様も来てくださった。
ことの経緯と、アイリス王女様の下着を勝手にメイドに集めさせて私達の前で晒したことまで説明すると王妃様と外務室の2人は謝罪をした。
「アイリス王女、アメデオが失礼なことをしました。私の方で再教育しますのでお気持ちを治めてくださいませんか」
「分かりました。
…本当に、この下着はエリシアが私とアメデオ様の歳の差を埋めるために作ってくれた品なのです」
「え?」
「前回の訪問のとき、私より歳上の令嬢を中心にアメデオ様を囲んでおりました。私などアメデオ様の相手にならないのかもしれないとエリシアにこぼしたのです。そこでエリシアがあの下着を用意してくれました。だからあの下着を着けて他の男性と遊んでいたとかそのようなことは無いのです」
王女様はポタポタと涙をこぼした。王太子殿下は驚いた後、バツが悪そうに目を逸らした。
「すまなかった」
「誤解は解けて異論はないということでよろしいですか?」
「もちろんです、ヴラシス王子。いいわね、アメデオ」
「はい、母上」
「では2日後にエリシアを連れて帰ります。姉上も一度戻りたければ一緒に帰りましょう」
王女は首を横に振った。
「これについて説明してくれ」
王太子殿下は箱をひっくり返して中身をテーブルに出した。
「なっ!」
王女様は真っ赤になった。
そりゃそうだ。私がプレゼントした王女様の下着だから。
「デリカシーがありませんね」
「これは証拠だろう」
「ヴラシスもいるんですよ?王太子殿下は嫉妬してありもしない矛先を探して乙女の下着をこんな風に晒すなんてどうかしています」
「私が?嫉妬?」
「それ以外ないですよね」
私は下着を箱の中に戻して蓋をした。
呼び鈴を鳴らすと男の人が入ってきた。この人、王太子殿下の侍従だったっけ。
「すみません。アメデオ王太子殿下が他人に見られたくないものをいくつか持ってきていただけますか?」
「はい?」
「キュアノス嬢」
「何でしょう」
「私は王太子だぞ」
「知っています」
「君は子爵家の娘だろう。私の私物を持って来させる権限は無い。この中身が恥ずかしい物だろうとこれは証拠なんだ」
「ありもしない嫌疑をかけて証拠だと言って勝手に他人の物を持ち出して、私達の前に晒すことは間違っています。アイリス王女がどんな気持ちになるのか身をもって体験してみてください。私も王太子殿下に同じことをして差し上げます。殿下の恥ずかしい何かを持ってきてもらったら適当に嫌疑をかけましょう」
「この国での王子御免状は発行されていないぞ」
「そうですね。ですが王太子殿下もオヴェル国王の発行した“王女御免状”をお持ちではありませんし、今はアイリス王女様は国賓。これは国際問題に発展しかねない侮辱行為なのです。今の段階では他国の王女の下着を盗んだ窃盗犯なのです。この下着の持ち出し許可をアイリス王女から得ていませんよね?」
「大袈裟な」
「侍従さん。外務室長と出来れば王妃様をお連れしてください。無理ならこちらから伺います」
「ウィル、行かなくていい」
「いや。ウィリアム・フォルン殿、すぐに呼びに行ってくれ。オヴェル国王第三王子ヴラシスの要求だ」
侍従は躊躇ったが、ドアを閉めた。足音が聞こえたから走って呼びに行ったのだろう。
「アメデオ王太子殿下。エリシアは俺の最愛の女です。彼女への威圧や侮辱は俺に向けたものとして受け取り、埒が明かなければ決闘を申し込みます」
「そんな大袈裟な」
「まったく大袈裟ではありません。そもそもどんな下着を身に付けようがアイリス姉上の勝手ではありませんか。ドレスで見えなくなるのに何が問題なんですか?どんな下着を身に付けるか法律で決まっているとか?王太子殿下との婚姻の条件は分かっていて姉はここにいるのです。こんな風に責め立てられる必要はありませんよね」
「……」
「間違いなく、これらは私がデザインして作らせた物です。こちらがその時の大元のデザイン画と、採寸してからの仕様書、そして納品請求書です。
こちらは他のデザイン画です。私のために書いて作らせています。お疑いのようですので、1着この場で描いてみせましょう。あちらのペンをお借りします」
ペンを取り、さっと下着のデザインを考えて描いた。そして王太子殿下の前に置くと本当なのだと理解したようだった。
もう1枚はベリーダンスの衣装のようなものを描いている途中で外務室長とハリス補佐が到着し、続いて王妃様も来てくださった。
ことの経緯と、アイリス王女様の下着を勝手にメイドに集めさせて私達の前で晒したことまで説明すると王妃様と外務室の2人は謝罪をした。
「アイリス王女、アメデオが失礼なことをしました。私の方で再教育しますのでお気持ちを治めてくださいませんか」
「分かりました。
…本当に、この下着はエリシアが私とアメデオ様の歳の差を埋めるために作ってくれた品なのです」
「え?」
「前回の訪問のとき、私より歳上の令嬢を中心にアメデオ様を囲んでおりました。私などアメデオ様の相手にならないのかもしれないとエリシアにこぼしたのです。そこでエリシアがあの下着を用意してくれました。だからあの下着を着けて他の男性と遊んでいたとかそのようなことは無いのです」
王女様はポタポタと涙をこぼした。王太子殿下は驚いた後、バツが悪そうに目を逸らした。
「すまなかった」
「誤解は解けて異論はないということでよろしいですか?」
「もちろんです、ヴラシス王子。いいわね、アメデオ」
「はい、母上」
「では2日後にエリシアを連れて帰ります。姉上も一度戻りたければ一緒に帰りましょう」
王女は首を横に振った。
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