【完結】執着系王子のご執心は回避できませんか?

ユユ

文字の大きさ
25 / 33

説明申し上げます

しおりを挟む
入室すると会議室みたいな場所で、アメデオ王太子殿下とアイリス王女様しかいない。ヴラシスと私が椅子に座るとドアが閉まった。

「これについて説明してくれ」

王太子殿下は箱をひっくり返して中身をテーブルに出した。

「なっ!」

王女様は真っ赤になった。
そりゃそうだ。私がプレゼントした王女様の下着だから。

「デリカシーがありませんね」

「これは証拠だろう」

「ヴラシスもいるんですよ?王太子殿下は嫉妬してありもしない矛先を探して乙女の下着をこんな風に晒すなんてどうかしています」

「私が?嫉妬?」

「それ以外ないですよね」

私は下着を箱の中に戻して蓋をした。
呼び鈴を鳴らすと男の人が入ってきた。この人、王太子殿下の侍従だったっけ。

「すみません。アメデオ王太子殿下が他人に見られたくないものをいくつか持ってきていただけますか?」

「はい?」

「キュアノス嬢」

「何でしょう」

「私は王太子だぞ」

「知っています」

「君は子爵家の娘だろう。私の私物を持って来させる権限は無い。この中身が恥ずかしい物だろうとこれは証拠なんだ」

「ありもしない嫌疑をかけて証拠だと言って勝手に他人の物を持ち出して、私達の前に晒すことは間違っています。アイリス王女がどんな気持ちになるのか身をもって体験してみてください。私も王太子殿下に同じことをして差し上げます。殿下の恥ずかしい何かを持ってきてもらったら適当に嫌疑をかけましょう」

「この国での王子御免状は発行されていないぞ」

「そうですね。ですが王太子殿下もオヴェル国王の発行した“王女御免状”をお持ちではありませんし、今はアイリス王女様は国賓。これは国際問題に発展しかねない侮辱行為なのです。今の段階では他国の王女の下着を盗んだ窃盗犯なのです。この下着の持ち出し許可をアイリス王女から得ていませんよね?」

「大袈裟な」

「侍従さん。外務室長と出来れば王妃様をお連れしてください。無理ならこちらから伺います」

「ウィル、行かなくていい」

「いや。ウィリアム・フォルン殿、すぐに呼びに行ってくれ。オヴェル国王第三王子ヴラシスの要求だ」

侍従は躊躇ったが、ドアを閉めた。足音が聞こえたから走って呼びに行ったのだろう。

「アメデオ王太子殿下。エリシアは俺の最愛の女です。彼女への威圧や侮辱は俺に向けたものとして受け取り、埒が明かなければ決闘を申し込みます」

「そんな大袈裟な」

「まったく大袈裟ではありません。そもそもどんな下着を身に付けようがアイリス姉上の勝手ではありませんか。ドレスで見えなくなるのに何が問題なんですか?どんな下着を身に付けるか法律で決まっているとか?王太子殿下との婚姻の条件は分かっていて姉はここにいるのです。こんな風に責め立てられる必要はありませんよね」

「……」

「間違いなく、これらは私がデザインして作らせた物です。こちらがその時の大元のデザイン画と、採寸してからの仕様書、そして納品請求書です。
こちらは他のデザイン画です。私のために書いて作らせています。お疑いのようですので、1着この場で描いてみせましょう。あちらのペンをお借りします」

ペンを取り、さっと下着のデザインを考えて描いた。そして王太子殿下の前に置くと本当なのだと理解したようだった。
もう1枚はベリーダンスの衣装のようなものを描いている途中で外務室長とハリス補佐が到着し、続いて王妃様も来てくださった。

ことの経緯と、アイリス王女様の下着を勝手にメイドに集めさせて私達の前で晒したことまで説明すると王妃様と外務室の2人は謝罪をした。

「アイリス王女、アメデオが失礼なことをしました。私の方で再教育しますのでお気持ちを治めてくださいませんか」

「分かりました。
…本当に、この下着はエリシアが私とアメデオ様の歳の差を埋めるために作ってくれた品なのです」

「え?」

「前回の訪問のとき、私より歳上の令嬢を中心にアメデオ様を囲んでおりました。私などアメデオ様の相手にならないのかもしれないとエリシアにこぼしたのです。そこでエリシアがあの下着を用意してくれました。だからあの下着を着けて他の男性と遊んでいたとかそのようなことは無いのです」

王女様はポタポタと涙をこぼした。王太子殿下は驚いた後、バツが悪そうに目を逸らした。

「すまなかった」

「誤解は解けて異論はないということでよろしいですか?」

「もちろんです、ヴラシス王子。いいわね、アメデオ」

「はい、母上」

「では2日後にエリシアを連れて帰ります。姉上も一度戻りたければ一緒に帰りましょう」

王女は首を横に振った。















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さくら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!

satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。  私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。  私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。  お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。  眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!

柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」 『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。 セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。 しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。 だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

つかぬことを伺いますが ~伯爵令嬢には当て馬されてる時間はない~

有沢楓花
恋愛
「フランシス、俺はお前との婚約を解消したい!」  魔法学院の大学・魔法医学部に通う伯爵家の令嬢フランシスは、幼馴染で侯爵家の婚約者・ヘクターの度重なるストーキング行為に悩まされていた。  「真実の愛」を実らせるためとかで、高等部時代から度々「恋のスパイス」として当て馬にされてきたのだ。  静かに学生生活を送りたいのに、待ち伏せに尾行、濡れ衣、目の前でのいちゃいちゃ。  忍耐の限界を迎えたフランシスは、ついに反撃に出る。 「本気で婚約解消してくださらないなら、次は法廷でお会いしましょう!」  そして法学部のモブ系男子・レイモンドに、つきまといの証拠を集めて婚約解消をしたいと相談したのだが。 「高貴な血筋なし、特殊設定なし、成績優秀、理想的ですね。……ということで、結婚していただけませんか?」 「……ちょっと意味が分からないんだけど」  しかし、フランシスが医学の道を選んだのは濡れ衣を晴らしたり証拠を集めるためでもあったように、法学部を選び検事を目指していたレイモンドにもまた、特殊設定でなくとも、人には言えない事情があって……。 ※次作『つかぬことを伺いますが ~絵画の乙女は炎上しました~』(8/3公開予定)はミステリー+恋愛となっております。

心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました

er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」

仙桜可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。 「で、政略結婚って言われましてもお父様……」 優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。 適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。 それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。 のんびりに見えて豪胆な令嬢と 体力系にしか自信がないワンコ令息 24.4.87 本編完結 以降不定期で番外編予定

処理中です...