26 / 33
鈍い王太子と生徒になった王妃
しおりを挟む
【 王妃の視点 】
あの後、アイリス王女とヴラシス王子とエリシアをハリス室長補佐に任せて、外務室長同席の上でアメデオからも話を聞いた。外務室長の表情からするとアメデオが下着の件について怒っていたことを知っていたのだろう。
「で、これがエリシアの描いたデザイン画?」
「はい」
「ここで描いたの?」
「はい」
「才能があるのね。かなり刺激的な下着だこと」
「こういった下着をアイリスが持っていたと聞いたら疑うのが普通ですよね」
「そうとも限らないわ。王太子との閨事のために用意したと受け取ることもできるもの。王女は嘘をついていないと思うわよ」
「誤解だったことは分かりました」
「そうよね。いろいろと状況が変わってしまったわ」
「何のですか?」
「エリシアが欲しかったのにヴラシス王子が手を付けてしまったじゃないの。しかも守りに入っているわ」
「決闘を申し込まれるところでした」
「なっ、殿下、ヴラシス王子殿下とですか!?」
「ちょっとキュアノス嬢と口論っぽくなってな」
「絶対に駄目です!一度鍛錬をした時にうちの兵士と手合わせをしたら隊長クラスじゃないとまったく相手にならなかったと聞いています。絶対に決闘は駄目です!」
「……」
「あなた、アイリス王女が好きなのね」
「え?私がですか?」
「だって、もし他の男と寝ていたとしたら結婚式前夜の検査を証拠に破棄を突き付けて賠償金をもらってオヴェルに優位に立てる機会だと考えたはずよ。そんなことは考えずに浮気をしていたと腹を立てた。室長が忠告したのに怒りがおさまらずにこんな問題を起こしてしまった。そんなに怒るのは好きだからじゃないの?例の下着を着ている姿を他の男に見られたくないのでしょう?他の男を知って欲しくないのでしょう?」
まったく。令嬢達と程よく遊んでいたはずなのに、アイリス王女をいつの間にか好きになっていて、冷静になれなくなっていただなんて。
「申し訳ありません」
「あなたの婚約者は他国の王女。その王女の下着を勝手に持ち出すのも、ヴラシス王子が異母弟だとしても王女の下着を出すのも他国の王族に対する侮辱行為なのよ。例え夫婦になった後でもアイリス王女はオヴェルの後ろ盾を持った王族なのだから敬意を忘れてはいけないわ」
「申し訳ありません」
「オヴェルでエリシアを襲いかけた令息はヴラシス王子がその場で処刑したらしいわ。命じた令嬢はヴラシス王子に鼻の骨を折られたそうよ。折れてひん曲がったままにして治った頃に、令嬢を的に貼り付けてエリシアが弓を射ったそうよ。遠くから、目隠しをして、最後に乗ったこともない馬に乗って射ろうとして令嬢が自白したらしいわ。相当な腕前ね。もし弓の賭け事を提案されたら断りなさい。必ず負けるわよ」
「その話は誰から聞いたのですか」
「うちの騎士がオヴェルの兵士に聞いたの。馬車の中にあった弓が大きくて、しかも矢尻が特殊だったから気になったうちの騎士が質問をしたら、エリシアの特注品だと教えてくれたのよ。そこからいろいろ聞き出して報告が上がったの」
「……」
「アイリス王女には頭を下げてしっかり謝罪をして、ヴラシス王子とエリシアとも仲直りするのよ」
「わかりました」
外務室長に後のことを頼んだ。そして私はエリシアに下着の作成の依頼をしに彼女の客室を訪れた。陛下とのマンネリを解消できるかもしれないと淡い期待を抱いていた。エリシアは少し悩んだ後、いくつか質問をして最後に体位の質問をした。
「体位はいろいろ試していますか?」
「なっ!そんなことっ」
「体位がずっと同じだったらマンネリになりますよ。下着と一緒でいつも同じだったら見飽きますよね。マンネリと感じて一番簡単に変えられるのは体位です。体位は疲れるだけのものもあります。恥ずかしいだけのものも。ですがそれでいいのです」
「……」
「視覚でも興奮を得ているのです。恥ずかしかったら恥ずかしいという態度をとりながら、気持ちいいのなら気持ちいいと素直に言いながら受け入れたらいいのです。ときには自分からそう仕向けたっていいのです。気持ちいいフリは必要ですが、痛いのに大丈夫なフリをすることだけはいけません。あと粗相をしそうなときも正直に伝えないと大惨事になります。では、具体的な体位を描いてみますね。頭は○で体は棒で棒人間です。最初に描く方が女性です。初歩から描いていきます」
1時間後。
「王妃様」
侍女が心配そうにお茶を淹れ直してくれた。
「あの講義は本当だと思う?」
「嘘を吐いているようにはとても見えませんでした」
「そうよね。でもあの子は未婚の貴族令嬢で、男を知ったばかりなはずなのに…」
「確かにキュアノス嬢は純潔だったとメイドが申しておりました」
「なのに何で…閨教育の講師だって驚くレベルよ」
「まだまだたくさんご存知のようでございますね」
確かに、“今日はこのくらいにしておきますね”などと言っていたものね。
「しかも、時々窓ガラスや家具に使われたガラスに映るようにしろとか、ときには鏡の前でしろとか。よくも考えつくものだわ。効果があるのかしら」
「視覚で楽しむというものでしょう」
「…本当に試しても大丈夫かしら。陛下に咎められないかしら」
「では、キュアノス嬢の仰っていた初歩から選んで試してみてはいかがでしょう。この辺りとか」
メイドが紙に描かれた絵を指差した。
翌日
「おはようございます、王妃様」
「おはよう、エリシアちゃん。もう少しゆっくり滞在してくれないかしら。もっとたくさんお話ししたいのよ。見返りも用意するわ」
効果抜群だったわ。もっとたくさん教えてもらわないと。
あの後、アイリス王女とヴラシス王子とエリシアをハリス室長補佐に任せて、外務室長同席の上でアメデオからも話を聞いた。外務室長の表情からするとアメデオが下着の件について怒っていたことを知っていたのだろう。
「で、これがエリシアの描いたデザイン画?」
「はい」
「ここで描いたの?」
「はい」
「才能があるのね。かなり刺激的な下着だこと」
「こういった下着をアイリスが持っていたと聞いたら疑うのが普通ですよね」
「そうとも限らないわ。王太子との閨事のために用意したと受け取ることもできるもの。王女は嘘をついていないと思うわよ」
「誤解だったことは分かりました」
「そうよね。いろいろと状況が変わってしまったわ」
「何のですか?」
「エリシアが欲しかったのにヴラシス王子が手を付けてしまったじゃないの。しかも守りに入っているわ」
「決闘を申し込まれるところでした」
「なっ、殿下、ヴラシス王子殿下とですか!?」
「ちょっとキュアノス嬢と口論っぽくなってな」
「絶対に駄目です!一度鍛錬をした時にうちの兵士と手合わせをしたら隊長クラスじゃないとまったく相手にならなかったと聞いています。絶対に決闘は駄目です!」
「……」
「あなた、アイリス王女が好きなのね」
「え?私がですか?」
「だって、もし他の男と寝ていたとしたら結婚式前夜の検査を証拠に破棄を突き付けて賠償金をもらってオヴェルに優位に立てる機会だと考えたはずよ。そんなことは考えずに浮気をしていたと腹を立てた。室長が忠告したのに怒りがおさまらずにこんな問題を起こしてしまった。そんなに怒るのは好きだからじゃないの?例の下着を着ている姿を他の男に見られたくないのでしょう?他の男を知って欲しくないのでしょう?」
まったく。令嬢達と程よく遊んでいたはずなのに、アイリス王女をいつの間にか好きになっていて、冷静になれなくなっていただなんて。
「申し訳ありません」
「あなたの婚約者は他国の王女。その王女の下着を勝手に持ち出すのも、ヴラシス王子が異母弟だとしても王女の下着を出すのも他国の王族に対する侮辱行為なのよ。例え夫婦になった後でもアイリス王女はオヴェルの後ろ盾を持った王族なのだから敬意を忘れてはいけないわ」
「申し訳ありません」
「オヴェルでエリシアを襲いかけた令息はヴラシス王子がその場で処刑したらしいわ。命じた令嬢はヴラシス王子に鼻の骨を折られたそうよ。折れてひん曲がったままにして治った頃に、令嬢を的に貼り付けてエリシアが弓を射ったそうよ。遠くから、目隠しをして、最後に乗ったこともない馬に乗って射ろうとして令嬢が自白したらしいわ。相当な腕前ね。もし弓の賭け事を提案されたら断りなさい。必ず負けるわよ」
「その話は誰から聞いたのですか」
「うちの騎士がオヴェルの兵士に聞いたの。馬車の中にあった弓が大きくて、しかも矢尻が特殊だったから気になったうちの騎士が質問をしたら、エリシアの特注品だと教えてくれたのよ。そこからいろいろ聞き出して報告が上がったの」
「……」
「アイリス王女には頭を下げてしっかり謝罪をして、ヴラシス王子とエリシアとも仲直りするのよ」
「わかりました」
外務室長に後のことを頼んだ。そして私はエリシアに下着の作成の依頼をしに彼女の客室を訪れた。陛下とのマンネリを解消できるかもしれないと淡い期待を抱いていた。エリシアは少し悩んだ後、いくつか質問をして最後に体位の質問をした。
「体位はいろいろ試していますか?」
「なっ!そんなことっ」
「体位がずっと同じだったらマンネリになりますよ。下着と一緒でいつも同じだったら見飽きますよね。マンネリと感じて一番簡単に変えられるのは体位です。体位は疲れるだけのものもあります。恥ずかしいだけのものも。ですがそれでいいのです」
「……」
「視覚でも興奮を得ているのです。恥ずかしかったら恥ずかしいという態度をとりながら、気持ちいいのなら気持ちいいと素直に言いながら受け入れたらいいのです。ときには自分からそう仕向けたっていいのです。気持ちいいフリは必要ですが、痛いのに大丈夫なフリをすることだけはいけません。あと粗相をしそうなときも正直に伝えないと大惨事になります。では、具体的な体位を描いてみますね。頭は○で体は棒で棒人間です。最初に描く方が女性です。初歩から描いていきます」
1時間後。
「王妃様」
侍女が心配そうにお茶を淹れ直してくれた。
「あの講義は本当だと思う?」
「嘘を吐いているようにはとても見えませんでした」
「そうよね。でもあの子は未婚の貴族令嬢で、男を知ったばかりなはずなのに…」
「確かにキュアノス嬢は純潔だったとメイドが申しておりました」
「なのに何で…閨教育の講師だって驚くレベルよ」
「まだまだたくさんご存知のようでございますね」
確かに、“今日はこのくらいにしておきますね”などと言っていたものね。
「しかも、時々窓ガラスや家具に使われたガラスに映るようにしろとか、ときには鏡の前でしろとか。よくも考えつくものだわ。効果があるのかしら」
「視覚で楽しむというものでしょう」
「…本当に試しても大丈夫かしら。陛下に咎められないかしら」
「では、キュアノス嬢の仰っていた初歩から選んで試してみてはいかがでしょう。この辺りとか」
メイドが紙に描かれた絵を指差した。
翌日
「おはようございます、王妃様」
「おはよう、エリシアちゃん。もう少しゆっくり滞在してくれないかしら。もっとたくさんお話ししたいのよ。見返りも用意するわ」
効果抜群だったわ。もっとたくさん教えてもらわないと。
1,092
あなたにおすすめの小説
カリスタは王命を受け入れる
真朱マロ
恋愛
第三王子の不始末で、馬に変えられた騎士との婚姻を命じられた公爵令嬢カリスタは、それを受け入れるのだった。
やがて真実の愛へと変わっていく二人の、はじまりの物語。
別サイトにも重複登校中
「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」
侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。
「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」
そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。
グランディア様、読まないでくださいっ!〜仮死状態となった令嬢、婚約者の王子にすぐ隣で声に出して日記を読まれる〜
月
恋愛
第三王子、グランディアの婚約者であるティナ。
婚約式が終わってから、殿下との溝は深まるばかり。
そんな時、突然聖女が宮殿に住み始める。
不安になったティナは王妃様に相談するも、「私に任せなさい」とだけ言われなぜかお茶をすすめられる。
お茶を飲んだその日の夜、意識が戻ると仮死状態!?
死んだと思われたティナの日記を、横で読み始めたグランディア。
しかもわざわざ声に出して。
恥ずかしさのあまり、本当に死にそうなティナ。
けれど、グランディアの気持ちが少しずつ分かり……?
※この小説は他サイトでも公開しております。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
虐げられ令嬢の武器は、完璧すぎる記憶力でした~婚約者の嘘も家の不正も、全部覚えてます~
法華
恋愛
侯爵令嬢のサラは、家では継母と異母姉に虐げられ、唯一の希望である婚約者のハイルからも冷たくあしらわれていた。そんなある日、彼が姉と密通し、「地味で退屈なサラを追い出す」と画策しているのを知ってしまう。全てを失った彼女に残されたのは、一度見聞きした事を決して忘れない"完璧な記憶力"だけ。
――あなたの嘘、家の不正、過去の失言。さあ、私の記憶が、あなたの罪を一つ残らず暴き出します。
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。
私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね?
みこと。
恋愛
鉛色の髪と目を持つクローディアは"鉱石姫"と呼ばれ、婚約者ランバートからおざなりに扱われていた。
「俺には"宝石姫"であるタバサのほうが相応しい」そう言ってランバートは、新年祭のパートナーに、クローディアではなくタバサを伴う。
(あんなヤツ、こっちから婚約破棄してやりたいのに!)
現代日本にはなかった身分差のせいで、伯爵令嬢クローディアは、侯爵家のランバートに逆らえない。
そう、クローディアは転生者だった。現代知識で鉱石を扱い、カイロはじめ防寒具をドレス下に仕込む彼女は、冷えに苦しむ他国の王女リアナを助けるが──。
なんとリアナ王女の正体は、王子リアンで?
この出会いが、クローディアに新しい道を拓く!
※小説家になろう様でも「私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね? 〜不実な婚約者を見限って。冷え性令嬢は、熱愛を希望します」というタイトルで掲載しています。
旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。
海咲雪
恋愛
結婚式当日、私レシール・リディーアとその夫となるセルト・クルーシアは初めて顔を合わせた。
「君を愛する気はない」
そう旦那様に言い放たれても涙もこぼれなければ、悲しくもなかった。
だからハッキリと私は述べた。たった一文を。
「逃げるのですね?」
誰がどう見ても不敬だが、今は夫と二人きり。
「レシールと向き合って私に何の得がある?」
「可愛い妻がなびくかもしれませんわよ?」
「レシール・リディーア、覚悟していろ」
それは甘い溺愛生活の始まりの言葉。
[登場人物]
レシール・リディーア・・・リディーア公爵家長女。
×
セルト・クルーシア・・・クルーシア公爵家長男。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる