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鈍い王太子と生徒になった王妃
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【 王妃の視点 】
あの後、アイリス王女とヴラシス王子とエリシアをハリス室長補佐に任せて、外務室長同席の上でアメデオからも話を聞いた。外務室長の表情からするとアメデオが下着の件について怒っていたことを知っていたのだろう。
「で、これがエリシアの描いたデザイン画?」
「はい」
「ここで描いたの?」
「はい」
「才能があるのね。かなり刺激的な下着だこと」
「こういった下着をアイリスが持っていたと聞いたら疑うのが普通ですよね」
「そうとも限らないわ。王太子との閨事のために用意したと受け取ることもできるもの。王女は嘘をついていないと思うわよ」
「誤解だったことは分かりました」
「そうよね。いろいろと状況が変わってしまったわ」
「何のですか?」
「エリシアが欲しかったのにヴラシス王子が手を付けてしまったじゃないの。しかも守りに入っているわ」
「決闘を申し込まれるところでした」
「なっ、殿下、ヴラシス王子殿下とですか!?」
「ちょっとキュアノス嬢と口論っぽくなってな」
「絶対に駄目です!一度鍛錬をした時にうちの兵士と手合わせをしたら隊長クラスじゃないとまったく相手にならなかったと聞いています。絶対に決闘は駄目です!」
「……」
「あなた、アイリス王女が好きなのね」
「え?私がですか?」
「だって、もし他の男と寝ていたとしたら結婚式前夜の検査を証拠に破棄を突き付けて賠償金をもらってオヴェルに優位に立てる機会だと考えたはずよ。そんなことは考えずに浮気をしていたと腹を立てた。室長が忠告したのに怒りがおさまらずにこんな問題を起こしてしまった。そんなに怒るのは好きだからじゃないの?例の下着を着ている姿を他の男に見られたくないのでしょう?他の男を知って欲しくないのでしょう?」
まったく。令嬢達と程よく遊んでいたはずなのに、アイリス王女をいつの間にか好きになっていて、冷静になれなくなっていただなんて。
「申し訳ありません」
「あなたの婚約者は他国の王女。その王女の下着を勝手に持ち出すのも、ヴラシス王子が異母弟だとしても王女の下着を出すのも他国の王族に対する侮辱行為なのよ。例え夫婦になった後でもアイリス王女はオヴェルの後ろ盾を持った王族なのだから敬意を忘れてはいけないわ」
「申し訳ありません」
「オヴェルでエリシアを襲いかけた令息はヴラシス王子がその場で処刑したらしいわ。命じた令嬢はヴラシス王子に鼻の骨を折られたそうよ。折れてひん曲がったままにして治った頃に、令嬢を的に貼り付けてエリシアが弓を射ったそうよ。遠くから、目隠しをして、最後に乗ったこともない馬に乗って射ろうとして令嬢が自白したらしいわ。相当な腕前ね。もし弓の賭け事を提案されたら断りなさい。必ず負けるわよ」
「その話は誰から聞いたのですか」
「うちの騎士がオヴェルの兵士に聞いたの。馬車の中にあった弓が大きくて、しかも矢尻が特殊だったから気になったうちの騎士が質問をしたら、エリシアの特注品だと教えてくれたのよ。そこからいろいろ聞き出して報告が上がったの」
「……」
「アイリス王女には頭を下げてしっかり謝罪をして、ヴラシス王子とエリシアとも仲直りするのよ」
「わかりました」
外務室長に後のことを頼んだ。そして私はエリシアに下着の作成の依頼をしに彼女の客室を訪れた。陛下とのマンネリを解消できるかもしれないと淡い期待を抱いていた。エリシアは少し悩んだ後、いくつか質問をして最後に体位の質問をした。
「体位はいろいろ試していますか?」
「なっ!そんなことっ」
「体位がずっと同じだったらマンネリになりますよ。下着と一緒でいつも同じだったら見飽きますよね。マンネリと感じて一番簡単に変えられるのは体位です。体位は疲れるだけのものもあります。恥ずかしいだけのものも。ですがそれでいいのです」
「……」
「視覚でも興奮を得ているのです。恥ずかしかったら恥ずかしいという態度をとりながら、気持ちいいのなら気持ちいいと素直に言いながら受け入れたらいいのです。ときには自分からそう仕向けたっていいのです。気持ちいいフリは必要ですが、痛いのに大丈夫なフリをすることだけはいけません。あと粗相をしそうなときも正直に伝えないと大惨事になります。では、具体的な体位を描いてみますね。頭は○で体は棒で棒人間です。最初に描く方が女性です。初歩から描いていきます」
1時間後。
「王妃様」
侍女が心配そうにお茶を淹れ直してくれた。
「あの講義は本当だと思う?」
「嘘を吐いているようにはとても見えませんでした」
「そうよね。でもあの子は未婚の貴族令嬢で、男を知ったばかりなはずなのに…」
「確かにキュアノス嬢は純潔だったとメイドが申しておりました」
「なのに何で…閨教育の講師だって驚くレベルよ」
「まだまだたくさんご存知のようでございますね」
確かに、“今日はこのくらいにしておきますね”などと言っていたものね。
「しかも、時々窓ガラスや家具に使われたガラスに映るようにしろとか、ときには鏡の前でしろとか。よくも考えつくものだわ。効果があるのかしら」
「視覚で楽しむというものでしょう」
「…本当に試しても大丈夫かしら。陛下に咎められないかしら」
「では、キュアノス嬢の仰っていた初歩から選んで試してみてはいかがでしょう。この辺りとか」
メイドが紙に描かれた絵を指差した。
翌日
「おはようございます、王妃様」
「おはよう、エリシアちゃん。もう少しゆっくり滞在してくれないかしら。もっとたくさんお話ししたいのよ。見返りも用意するわ」
効果抜群だったわ。もっとたくさん教えてもらわないと。
あの後、アイリス王女とヴラシス王子とエリシアをハリス室長補佐に任せて、外務室長同席の上でアメデオからも話を聞いた。外務室長の表情からするとアメデオが下着の件について怒っていたことを知っていたのだろう。
「で、これがエリシアの描いたデザイン画?」
「はい」
「ここで描いたの?」
「はい」
「才能があるのね。かなり刺激的な下着だこと」
「こういった下着をアイリスが持っていたと聞いたら疑うのが普通ですよね」
「そうとも限らないわ。王太子との閨事のために用意したと受け取ることもできるもの。王女は嘘をついていないと思うわよ」
「誤解だったことは分かりました」
「そうよね。いろいろと状況が変わってしまったわ」
「何のですか?」
「エリシアが欲しかったのにヴラシス王子が手を付けてしまったじゃないの。しかも守りに入っているわ」
「決闘を申し込まれるところでした」
「なっ、殿下、ヴラシス王子殿下とですか!?」
「ちょっとキュアノス嬢と口論っぽくなってな」
「絶対に駄目です!一度鍛錬をした時にうちの兵士と手合わせをしたら隊長クラスじゃないとまったく相手にならなかったと聞いています。絶対に決闘は駄目です!」
「……」
「あなた、アイリス王女が好きなのね」
「え?私がですか?」
「だって、もし他の男と寝ていたとしたら結婚式前夜の検査を証拠に破棄を突き付けて賠償金をもらってオヴェルに優位に立てる機会だと考えたはずよ。そんなことは考えずに浮気をしていたと腹を立てた。室長が忠告したのに怒りがおさまらずにこんな問題を起こしてしまった。そんなに怒るのは好きだからじゃないの?例の下着を着ている姿を他の男に見られたくないのでしょう?他の男を知って欲しくないのでしょう?」
まったく。令嬢達と程よく遊んでいたはずなのに、アイリス王女をいつの間にか好きになっていて、冷静になれなくなっていただなんて。
「申し訳ありません」
「あなたの婚約者は他国の王女。その王女の下着を勝手に持ち出すのも、ヴラシス王子が異母弟だとしても王女の下着を出すのも他国の王族に対する侮辱行為なのよ。例え夫婦になった後でもアイリス王女はオヴェルの後ろ盾を持った王族なのだから敬意を忘れてはいけないわ」
「申し訳ありません」
「オヴェルでエリシアを襲いかけた令息はヴラシス王子がその場で処刑したらしいわ。命じた令嬢はヴラシス王子に鼻の骨を折られたそうよ。折れてひん曲がったままにして治った頃に、令嬢を的に貼り付けてエリシアが弓を射ったそうよ。遠くから、目隠しをして、最後に乗ったこともない馬に乗って射ろうとして令嬢が自白したらしいわ。相当な腕前ね。もし弓の賭け事を提案されたら断りなさい。必ず負けるわよ」
「その話は誰から聞いたのですか」
「うちの騎士がオヴェルの兵士に聞いたの。馬車の中にあった弓が大きくて、しかも矢尻が特殊だったから気になったうちの騎士が質問をしたら、エリシアの特注品だと教えてくれたのよ。そこからいろいろ聞き出して報告が上がったの」
「……」
「アイリス王女には頭を下げてしっかり謝罪をして、ヴラシス王子とエリシアとも仲直りするのよ」
「わかりました」
外務室長に後のことを頼んだ。そして私はエリシアに下着の作成の依頼をしに彼女の客室を訪れた。陛下とのマンネリを解消できるかもしれないと淡い期待を抱いていた。エリシアは少し悩んだ後、いくつか質問をして最後に体位の質問をした。
「体位はいろいろ試していますか?」
「なっ!そんなことっ」
「体位がずっと同じだったらマンネリになりますよ。下着と一緒でいつも同じだったら見飽きますよね。マンネリと感じて一番簡単に変えられるのは体位です。体位は疲れるだけのものもあります。恥ずかしいだけのものも。ですがそれでいいのです」
「……」
「視覚でも興奮を得ているのです。恥ずかしかったら恥ずかしいという態度をとりながら、気持ちいいのなら気持ちいいと素直に言いながら受け入れたらいいのです。ときには自分からそう仕向けたっていいのです。気持ちいいフリは必要ですが、痛いのに大丈夫なフリをすることだけはいけません。あと粗相をしそうなときも正直に伝えないと大惨事になります。では、具体的な体位を描いてみますね。頭は○で体は棒で棒人間です。最初に描く方が女性です。初歩から描いていきます」
1時間後。
「王妃様」
侍女が心配そうにお茶を淹れ直してくれた。
「あの講義は本当だと思う?」
「嘘を吐いているようにはとても見えませんでした」
「そうよね。でもあの子は未婚の貴族令嬢で、男を知ったばかりなはずなのに…」
「確かにキュアノス嬢は純潔だったとメイドが申しておりました」
「なのに何で…閨教育の講師だって驚くレベルよ」
「まだまだたくさんご存知のようでございますね」
確かに、“今日はこのくらいにしておきますね”などと言っていたものね。
「しかも、時々窓ガラスや家具に使われたガラスに映るようにしろとか、ときには鏡の前でしろとか。よくも考えつくものだわ。効果があるのかしら」
「視覚で楽しむというものでしょう」
「…本当に試しても大丈夫かしら。陛下に咎められないかしら」
「では、キュアノス嬢の仰っていた初歩から選んで試してみてはいかがでしょう。この辺りとか」
メイドが紙に描かれた絵を指差した。
翌日
「おはようございます、王妃様」
「おはよう、エリシアちゃん。もう少しゆっくり滞在してくれないかしら。もっとたくさんお話ししたいのよ。見返りも用意するわ」
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