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土産
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滞在を延ばす代わりにヴラシスが私の客室で寝ることになってしまった。私個人はこの国に用はない。滞在理由は王妃様が話を聞きたがり、アイリス王女様が懐いているから。そのため、ヴラシスが言った出発日を延ばす対価にこうやって抱き枕になっている。おかしくない?どれも私のためじゃないのに。
「まだ早い、もう少し寝よう。もっとこっちにおいで チュッ」
「(甘ぁ)」
「お誘いだったんだな?」
「っ!!」
チュン…チュンチュン
何で弟みたいと思っていたヴラシスを受け入れたのかって思うよね。
ヴラシスは体を鍛え上げ厚みも幅も増してすっかり男だ。声も変わり囁かれるとちょっと困る。いつものように接してきたけど、数日前の朝、ヴラシスの金色の瞳は強く輝いていて、まるでメデューサと目を合わせてしまったかのように抵抗できなかった。触れる手や唇や舌が気持ち良くて、柔らかい舌に追い回されているうちに貫かれてしまった。痛かったのは最初だけですぐに快楽を拾い始めた。相性が良いのかヴラシスが上手いのかはよく分からないけど私自身が自分の単純さに驚いている。
その後だって一応抵抗はしているけど、抵抗と呼べるほどのものではない。ヴラシスは私が“しない”“イヤ”“ダメ”と言っても“はいはいわかったわかった”と言いながら事を進める。多分ヴラシスにとっては嫌よ嫌よも好きのうちみたいな捉え方をしているのか、天邪鬼と捉えている気がする。仕方ないじゃない。ヴラシスは簡単に私のささやかな抵抗を無効にしてしまうほど、あっという間に私の身体を把握してしまったのだから。コツを掴んだかのように1分もかからず抵抗を無効にする。強く輝く金色の瞳と“ほらね、イヤじゃないよね?”と言いたげな笑みで支配してしまう。
ムニっ
ヴラシスの頬をつまんだ。どーせ起きてるんでしょ。
「エリシア?」
「なんか悔しい」
「何が?」
「抵抗してるのに…」
「可愛い抵抗のおかげで俺はエリシアと深く繋がれて嬉しいよ。それに閨事くらい俺が主導権を握ってエリシアを翻弄してもいいだろう?」
「……」
「今日も王妃に講義をするのか?」
「もう大丈夫よ。そろそろ帰りたいから手土産を渡そうと思って。王太子殿下も反省したみたいだし」
「同席するからな」
「ちょっと恥ずかしいから同席は…」
「王太子と恥ずかしいことをしようと言うのだな?」
「あっ!」
カチャ
「私が約束したのは10時だったが?」
「申し訳ございません」
「いいよな、君たちは。王太子との約束も忘れるほどに蜜月期を他国の王宮で存分に楽しめて」
「これでも自重しているんですけどね」
「ヴラシス殿下の自重と私の自重は同じものではなさそうですね」
「そんなことより、こちらは特注品です」
「…ヴラシス殿下、そなたのレディは“そんなこと”と申したぞ」
「王太子殿下、私が考案して作らせました。いつかお使いください。どう使うかは説明書が入っていますが、王太子殿下以外の方の目に触れさせると好奇な目で見られることになりかねませんのでお気をつけください」
「まるで無視だな」
テーブルの上に置いた箱を開けたアメデオ王太子殿下は何も考えずに中身をテーブルに並べ出した。
「拷問器具か?」
「愛の拷問器具です」
「は?」
「閨事のときに使う道具です。
この拘束ベルトは図のように使うと羞恥を引き起こせますし興奮も呼び起こします。お仕置きにも良いですし、王太子殿下が拘束されても構いません…ぷっ」
「なぜ笑う……なっ!!何だこの卑猥な絵は!!」
「説明書です。それがなければ実際に王太子殿下に装着して説明しなくてはなりませんから」
「お、おまえっ!」
「こちらのアイマスクは単独でもかまいませし、拘束具と併用でもかまいません。身動き取れず視界を奪われて…ブフッ!」
「めまいがしてきた…下着で騒いだ私が馬鹿だった」
「お気に召さないようでしたら…」
回収しようと手を伸ばすと慌てて王太子殿下が箱の中に詰めて自分の隣に置いた。
「一度人にやったものを持ち帰ってヴラシス殿下と使うつもりか」
「違います。王妃様に差し上げようかと」
「はあ!?母上がこんな卑猥なものを見たら失神してしまうだろう!!」
「そうでもないと思います。興味津々に説明書を見ながら生贄を使って装着の練習をすると思います」
「止めろ…母上のイメージが……ん?これは何だ?先の丸いシリンジ?」
「事後処理に使います。綺麗な水を入れて終わった後に洗浄道具としてお使いください。これは滞在中にこちらの職人に作ってもらいました」
「……まあ実用的ではあるな」
「ちょっと失礼しますね」
王太子殿下に別の使い方を耳打ちした。
「なっ!!この痴女が!!」
「まあ、酷い。ではこれは王妃様に」
シリンジ型のビデを回収しようとすると王太子殿下はカメレオンの舌のような早技で掴み箱の中に戻した。
ごめん、アイリス王女様。使う気満々だと思います。頑張ってください。心の中で合掌した。
だけど頑張るのは他人事ではなかった。
「浮気者」
「違っ!」
「わざわざ王太子に近寄って耳元に唇を近付けて吐息を漏らしなが卑猥なことを言うとはな」
「シスっ!」
翌朝、馬車に乗って帰路に着いた。気力も体力もなく、持たされたらしい朝食をヴラシスに与えられるがまま食べた。
「まだ早い、もう少し寝よう。もっとこっちにおいで チュッ」
「(甘ぁ)」
「お誘いだったんだな?」
「っ!!」
チュン…チュンチュン
何で弟みたいと思っていたヴラシスを受け入れたのかって思うよね。
ヴラシスは体を鍛え上げ厚みも幅も増してすっかり男だ。声も変わり囁かれるとちょっと困る。いつものように接してきたけど、数日前の朝、ヴラシスの金色の瞳は強く輝いていて、まるでメデューサと目を合わせてしまったかのように抵抗できなかった。触れる手や唇や舌が気持ち良くて、柔らかい舌に追い回されているうちに貫かれてしまった。痛かったのは最初だけですぐに快楽を拾い始めた。相性が良いのかヴラシスが上手いのかはよく分からないけど私自身が自分の単純さに驚いている。
その後だって一応抵抗はしているけど、抵抗と呼べるほどのものではない。ヴラシスは私が“しない”“イヤ”“ダメ”と言っても“はいはいわかったわかった”と言いながら事を進める。多分ヴラシスにとっては嫌よ嫌よも好きのうちみたいな捉え方をしているのか、天邪鬼と捉えている気がする。仕方ないじゃない。ヴラシスは簡単に私のささやかな抵抗を無効にしてしまうほど、あっという間に私の身体を把握してしまったのだから。コツを掴んだかのように1分もかからず抵抗を無効にする。強く輝く金色の瞳と“ほらね、イヤじゃないよね?”と言いたげな笑みで支配してしまう。
ムニっ
ヴラシスの頬をつまんだ。どーせ起きてるんでしょ。
「エリシア?」
「なんか悔しい」
「何が?」
「抵抗してるのに…」
「可愛い抵抗のおかげで俺はエリシアと深く繋がれて嬉しいよ。それに閨事くらい俺が主導権を握ってエリシアを翻弄してもいいだろう?」
「……」
「今日も王妃に講義をするのか?」
「もう大丈夫よ。そろそろ帰りたいから手土産を渡そうと思って。王太子殿下も反省したみたいだし」
「同席するからな」
「ちょっと恥ずかしいから同席は…」
「王太子と恥ずかしいことをしようと言うのだな?」
「あっ!」
カチャ
「私が約束したのは10時だったが?」
「申し訳ございません」
「いいよな、君たちは。王太子との約束も忘れるほどに蜜月期を他国の王宮で存分に楽しめて」
「これでも自重しているんですけどね」
「ヴラシス殿下の自重と私の自重は同じものではなさそうですね」
「そんなことより、こちらは特注品です」
「…ヴラシス殿下、そなたのレディは“そんなこと”と申したぞ」
「王太子殿下、私が考案して作らせました。いつかお使いください。どう使うかは説明書が入っていますが、王太子殿下以外の方の目に触れさせると好奇な目で見られることになりかねませんのでお気をつけください」
「まるで無視だな」
テーブルの上に置いた箱を開けたアメデオ王太子殿下は何も考えずに中身をテーブルに並べ出した。
「拷問器具か?」
「愛の拷問器具です」
「は?」
「閨事のときに使う道具です。
この拘束ベルトは図のように使うと羞恥を引き起こせますし興奮も呼び起こします。お仕置きにも良いですし、王太子殿下が拘束されても構いません…ぷっ」
「なぜ笑う……なっ!!何だこの卑猥な絵は!!」
「説明書です。それがなければ実際に王太子殿下に装着して説明しなくてはなりませんから」
「お、おまえっ!」
「こちらのアイマスクは単独でもかまいませし、拘束具と併用でもかまいません。身動き取れず視界を奪われて…ブフッ!」
「めまいがしてきた…下着で騒いだ私が馬鹿だった」
「お気に召さないようでしたら…」
回収しようと手を伸ばすと慌てて王太子殿下が箱の中に詰めて自分の隣に置いた。
「一度人にやったものを持ち帰ってヴラシス殿下と使うつもりか」
「違います。王妃様に差し上げようかと」
「はあ!?母上がこんな卑猥なものを見たら失神してしまうだろう!!」
「そうでもないと思います。興味津々に説明書を見ながら生贄を使って装着の練習をすると思います」
「止めろ…母上のイメージが……ん?これは何だ?先の丸いシリンジ?」
「事後処理に使います。綺麗な水を入れて終わった後に洗浄道具としてお使いください。これは滞在中にこちらの職人に作ってもらいました」
「……まあ実用的ではあるな」
「ちょっと失礼しますね」
王太子殿下に別の使い方を耳打ちした。
「なっ!!この痴女が!!」
「まあ、酷い。ではこれは王妃様に」
シリンジ型のビデを回収しようとすると王太子殿下はカメレオンの舌のような早技で掴み箱の中に戻した。
ごめん、アイリス王女様。使う気満々だと思います。頑張ってください。心の中で合掌した。
だけど頑張るのは他人事ではなかった。
「浮気者」
「違っ!」
「わざわざ王太子に近寄って耳元に唇を近付けて吐息を漏らしなが卑猥なことを言うとはな」
「シスっ!」
翌朝、馬車に乗って帰路に着いた。気力も体力もなく、持たされたらしい朝食をヴラシスに与えられるがまま食べた。
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